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桜通線延伸

 名古屋市営地下鉄桜通(さくらどおり)線の野並(のなみ)~徳重(とくしげ)間延伸は3月下旬であった。
 これの後は、大きな延伸や開業がしばらく予定されていないので、これに乗っておけば、完乗タイトルも安泰である。だから、というわけでもないが、わたしにしては珍しくも意気込みに満ちていて、開業当日に乗りに行くことにした。日曜日なので好都合である。

 名古屋には、ひまわり隊の愛知支部もあり(ある、と言っても観念的な存在としてだが)、土曜の夜に、鉄道趣味も共通するお二人の隊員と待ち合わせて、前夜祭の景気づけをすることにした。

 栄(さかえ)でまずは居酒屋に入ったが、お二人はいきなりご飯ものでお腹を膨らませてしまったため、後はあまり飲み食いされず、ほどなくカフェに転進した。三人とも出身は関西なので、いろいろと共通の話題には事欠かず、大いに愉しい時間であった。
 わたしと同い年の隊員は、明日は始発電車で乗りつぶす、と張り切っている。延伸区間の近所に住んでおられるので、そのへんは自在である。
 

 一夜明けると、開業日である。わたしはホテルでゆっくりと身支度をして、名古屋駅に向かった。件の隊員はもう乗ってしまっていることだろうから、顔を合わせることはなかろう。
 せっかく前夜に会ったのなら、一緒に乗りにいけばいいではないか、と思う人もあろうが、これがマニアのやることである。単に乗りつぶすと言っても、マニアの数だけ流儀がある。車輌にこだわる人、駅にこだわる人、線路設備に、アナウンスに、記念グッズにこだわる人、他にもいろいろある。こだわりの度合いもさまざまである。そして、それらの要素が多様に組み合わされるので、一人一人の行動様式や撮影対象が異なる。だから、特に開業日とか最終日とかイベント的要素が強いようなときには、単独行動を好むのである。連れがいると、気を遣わねばならないから、動きが鈍る。
 だから、昨夜も、というか、端から、一緒に乗りに行く、という発想はどちらからも全く提示されることはなかった。

 と言っても、わたしはそれほどのこだわりはない。何でもいいから乗ればそれでいい、と思っている。新線の場合、既成の線に接続する根元の側から乗ってみたい、とか、終端駅ではちゃんと改札を出て周囲がどういう土地かを見定めたい、くらいの漠然とした願望があるくらいだ。
 それでとりあえず、名古屋から徳重行の電車に乗った。発車間際だったので、先頭車に空席はなかったが、三輌めくらいまで歩くと、進行左側のシートに隙間が見つかった。駅や対向電車を観察するには、左側でないといけない。立つ人はほとんどない。
 都心に近く名城(めいじょう)線と交叉する久屋大通(ひさやおおどおり)で七割方の人が降りてしまう。多少は乗ってくるが、大した数ではない。この線は混雑が激しい東山(ひがしやま)線の名古屋~栄間を緩和することが建設のひとつの目的だったはずで、それゆえに東山線よりも大型の車輌が投入されているが、思うように転移が進んでいないようである。せっかく軌間も集電方式も名鉄やJRと共通しているのだから、適宜の路線と直通運転して郊外からの客を誘導してはどうか、と思う。
 今池(いまいけ)ではその東山線と交叉するので、栄方面から来た多くの客が乗り、またシートが埋まる。御器所(ごきそ)では鶴舞(つるまい)線と交叉する。線名も駅名も「つるまい」が公式な訓みのようだが、後で市バスで通った時、「鶴舞公園」は「つるまこうえん」とアナウンスしていた。よそいきと地元と、訓みがダブルスタンダードのようである。
 次の桜山(さくらやま)は、朝夕は折返す電車もあり、このあたりから郊外に出る。瑞穂区の文化ゾーンを行き、新瑞橋(あらたまばし)でまた名城線と出会う。このように、名古屋の地下鉄路線はややこしい。名城線は環状運転だから二回会うのは分かるとしても、東京のような束状でも大阪のような碁盤目でもないので、わたしは未だに名古屋の方向感覚が摑めない。そもそも市街の縁取りとなるべきJRや名鉄の路線からして市内で大きく湾曲しているのだから、なおさらだ。ここらあたりも、デフォルメされた路線図だと分かりにくいが、けっこう名鉄線に近接している。

 野並からいよいよ今回の開通区間である。ここからもそこそこ客が乗ってくる。徳重まで試乗しようという客だろうか。と思ったら、次の鳴子北(なるこきた)でたくさん降りる。鳴子というと、宮城県の温泉を思い出すのだが、名古屋にもこういう地名があるとは知らなかった。天白(てんぱく)区に入っていて、周辺の住宅地に向かうバスが多く連絡する。
 相生山(あいおいやま)も、鳴子北と同じような駅である。島式のホームで、ホームドアが完備している。ワンマン運転を行っているので、規格を統一しているのだろう。神沢(かみざわ)も同じような駅だ。神戸市営地下鉄山手線に上沢(かみさわ)駅があるのを思い出す。
 名古屋市営地下鉄の駅名は、NHK名古屋制作のドラマ『中学生日記』に使われている。登場する教師の名字がみな地下鉄駅に因んでいるのである。今春から早速、神沢先生が登場している。演じるのは風間俊介さんで、この人は『3年B組金八先生』で問題生徒を演じて脚光を浴びた。それが教師役を演る歳になったのか、と感慨深いが、『中学生日記』で担任しているのも3年B組だそうである。なかなか学校ドラマに縁の深い人である。

 終点の徳重では、ホーム折返しではなく、客を降ろしてドアを閉めた後、一旦奥へ引き上げるようである。ホーム向かい側に、名古屋方面への客が列を作っている。
 コンコースは割合広く、そこにいろいろな列ができている。各種記念品を売ったり配ったりしているのである。人の列に組み込まれたようなかたちで自然に地上に出ると、かなり立派なバスターミナルであった。駅に直結するショッピングセンターもあり、既に周囲は開けている。この区間が予定を前倒しして開業したのも分かる。待望されていたのであろう。周辺道路もクルマが多い。

 後で聞くと、件の隊員は前日の疲れが出たのか、起きたのは昼頃であって、乗ったのはわたしより遅かったようである。家が近い学生ほど遅刻が多いのが学校の常であり、油断は禁物だ。  

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