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広島県の懐かしい電車たち

 平成23年秋、広島に出かけた。
 広島の市内電車は日本最大規模であり、最新の低床車から、他都市の中古車まで、車種も多様である。
 この現役市電と対照的に、モータリゼーションの勢いたけなわの頃、ひっそり廃止されたのが呉(くれ)の市電である。

 呉市電の車輌が、呉ポートピアという遊園地に保存されているので、それを見に行った。

 「呉ポートピア」は、恐らく開園当時は人気を博したのだと思う。園内に存続する諸施設がなんとなくそれを伝えているし、近傍を走るJR呉線に新駅が設けられたことでも分かる。
 今はそれほど賑わいはなく、広さが目立っている。それでも、屋台風の店がいくつか並び、郊外のオアシスという感じにはなっている。
 その片隅に、呉市電が比較的いい状態で保存されていた(写真下)

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 このように、柵などはなくて、電車の側まで行けるばかりか、中扉が開いていて、車内にも入れる。
 入ってみると、営業に就いていた頃の掲示物がそのまま残されている。が、よく見ると、署名は呉市交通局ではなく、伊予鉄道となっている(写真下の左)。この車輌は、呉市電廃止後伊予鉄道に譲渡され、松山の市内電車として走っていたのである。二度めの引退をして呉に帰還したわけだ。外側の塗装は、呉時代のものに戻されている。
 運転席にも入れ、各種ハンドルを回したりすることも可能である(写真下の右)。 

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 電車をひととおり見た後に、改めて外の案内板を見ると、呉市電の説明の他、かつての運転系統図が掲げられている(写真下)。市バスと一括した図であり、中央あたりに象を呑んだウワバミのような形で描かれている黒い線が市電路線である。

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 わたしと入れ違いに、数人の若い男女のグループががやがや電車に入っていき、いろいろ遊んでいる。女性が運転席に下がっているロープを引っ張ると、驚いたことに、屋根の上のZパンタグラフが畳んだり開いたりする。女性はそれに気づいていない。
 そんな所まで可動状態のまま展示されているとは、おおらかであるが、管理をきちんとしないと、傷んでしまいそうである。

 その後、呉の市街地に行き、市電のメインルートの跡を市バスで辿ってみた。系統図の黒線からもうかがえるが、呉の地形は山が海に突き出すようになっているもので、呉と広地区を結ぶ街路は、海岸線に沿って進むことはできず、内陸へ大きく迂回して山を越えている。バスもそこを通って行ったが、電車が走っていたとは思えないほどの急勾配で上下した。
 この呉市バスも、この平成23年度末で営業を終え、路線は広島電鉄に移譲される。市電をも擁しつつ続いてきた市営交通も、終焉を迎えるのである。市営バスとしては珍しく、広島までの高速バスなども運行していて、なかなか意欲的だと思ったのだが(写真下の左は、広島バスセンターに着車した高速バス「クレアライン」。右は広(ひろ)交叉点のノンステップ車) 。

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 さて、今度は広島市に行く。ここは現役の電車が見られる。
 紙屋町(かみやちょう)と原爆ドーム前の間で眺めていると、飽きることなく電車が通り過ぎるのを愉しめる。下の写真は、修学旅行の生徒を満載した貸切電車である。新幹線で着いて、原爆ドーム・平和公園見学に向かうのであろう。

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 続いて広電(ひろでん)西広島に行ってみる。以前は狭苦しい駅だったが、拡張整備されて、現在は7番線まである堂々たるターミナル駅である。路面電車の発着するターミナルとしては、本邦最大規模かもしれない。
 3号線の電車が入って来た。これは元京都市電の車輌である(写真下)。京都市電は、わたしも現役時代数回乗ったので、今だに走っているのは嬉しい。

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 この他にも各地の電車が広島に集結している。元大阪市電も元神戸市電もあるので、京阪神の電車が同じ軌道を走るという面白みもある。
 神戸出身のわたしとしては、やはり神戸市電の姿が見たいわけだが、四十年ほど前に二十九輌も譲渡されてきた元神戸市電も、新型車輌に圧され、現在は僅か二輌しか残っていない。京都や大阪の電車が今も多数走っているのに比べて、待遇が悪いのではないか、と僻んでしまうが、中扉の幅が狭く、カードリーダーなど取り付けると、ラッシュ時の乗降に難が出てしまうことが災いしたようだ。

 運用がどうなっているかよく分からないので、朝ラッシュなら古い電車も動くだろう、とあたりをつけて、八丁堀(はっちょうぼり)で電車を待っていると、元神戸市電の570形が1号線としてやって来た(写真下)。前日は3号線で見かけたから、運用は特に固定はしていないようだ。
 この570形は、神戸時代のままの塗色で走っている。神戸市電のシンボルカラーである緑の濃淡である。鉄道車輌に黒や茶以外の色彩を採用したのは、神戸市電がわが国で最初であるが、その時の緑を残している現役車輌は、この一輌だけとなってしまった。

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 早速乗ってみる。走りはしっかりしているし、カードリーダーなど近代的な機器も取り付けられている。が、座席のデザインなどに、古き時代を感じる(写真下)。この車輌は車体更新はなされているが、走り装置は大正時代に造られたもののはずで、よく頑張って走っているものである(写真下の右は宇品(うじな)一丁目付近の570形1号線)

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 なお、今回の広島行では出会えなかったのだが、もう一輌、元神戸市電の車輌が在籍している。1150形と呼ばれるものであるが、これは今後に期することにする。

 さて、ついでであるが、7・8号線が発着する横川(よこがわ)駅の前には、古めかしいバスが展示してある。この横川と可部(かべ)との間が、日本の路線バス最初の運行区間なので、それを記念したものである。呉市電とは対照的に、ガラス張りの檻に入れられている(写真下)。イベント時などには公開されるのだろうか。

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(平成23年11月訪問)

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