« 東京の交通点描 | トップページ | 土電点描 »

そよかぜトレイン117と佐久間レールパーク跡

 偉大なるローカル線とも言われるJR東海の飯田線に、今年度から走り始めた臨時列車が「そよ風トレイン117」である。
 風を感じながら旅を愉しんでもらうため、改造してドアや窓を開放した車輌が連結されている、ユニークな列車である。117というのは電車の形式番号で、国鉄の末期に京阪神や名古屋地区の新快速に投入された二扉転換クロスシート車、いわば国鉄最後の栄光とでもいうものを象徴しており、現在は第一線を退いているが、地方線区やこういう臨時列車で活躍している。

 この車輌をじっくり観察する機会に恵まれた。

 JR東海の車輌の例に洩れず、コーポレートカラーであるオレンジ色のラインが施されている。10x240861

 しかし、四輌編成のうち一輌、2号車だけはちょっと変わった外観である。

10x240863

 この車輌は、「ウィンディスペース」と呼ばれるフリースペースである。
 このように、ドアは開いたまま固定されていて、そこに柵のような物が嵌められている。転落事故が起きないように、ガラスが張られたりはしているが、柵状の部分からは直接外の風が吹き込むようになっている。10x240885

 窓の上段はガラスが外されていて、やはり自然の風が車内に吹き込む。木製の椅子が窓に向けて設置されていて、心おきなく景色を眺めることができる。
 雨が降ってきたらどうするのか、と思うが、一応ブラインドの代わりにビニールシートを下ろすようになっている。ただ、この列車は全車指定席なので、天候が悪化すれば自分の席に逃げ帰ればいいのであるが。10x240871

 その指定席車も、なかなか凝ったつくりである。

10x240865 10x240875

 元々の117系の座席は、二人掛け転換クロスシートが並んでいたのだが、それの三列分を一ボックスとして、四人掛けにしている。グループや家族で乗るのに最適である。
 六人坐っていたスペースを四人で使うわけだから、非常にゆったりしている。三列のうち両端のシートは向かい合わせに固定され、中央のシートは土台だけを残して撤去されている。その上に大きな正方形のテーブルが設置されていて、弁当やおつまみなど広げて愉しむのによいし、トランプなどもしやすい。
 それにしても、テーブルのこの大きさと形、その道が好きな人は、牌を並べたくて指がうずくのではなかろうか。わたしは卓上遊戯を好まないのでどうでもいいのだが、このままでは無理にしても、このテーブルが斜めに配置されていたら、四人でそういうことをするのも可能だろう。どうせなら、テーブルが回転するようにしておけばよかったか。もっとも、列車の中の麻雀というのは、何かと不都合かもしれない。特に飯田線は、駅のポイントで激しく横揺れしたりする。

 この列車は、休日を中心に運転され、豊橋と中部天竜との間を一往復する。ダイヤは以前の「佐久間レールパーク号」と同じで、下りが午前、上りが午後である。いずれも食事どきを外した運行なのは、あまり車内を汚してほしくないからだろうか。
10x241090
 なお、荒天時は運休したり通常の車輌に差し替えて運転したりするものと思われる。もし通常の車輌に替わった場合、指定料金は払い戻しとなる旨、駅の掲示に註記してあった。けっこう良心的である。

 終点中部天竜駅構内にあった佐久間レールパークの跡地は、かつての賑わいを偲ばせはするものの、やはりうらぶれた感じは否めない。「そよ風トレイン117 歓迎」の立て看板はまだしも、フェンスで隔てられた建物や車輌のほとんどが運び出されてがらんとした旧園内、客がひきもきらなかったのに閉店してしまった食堂など、無常を感じさせる。10x241172 10x241070 10x241071 

 いずれにせよ、面白い列車を考え、手の込んだ改造をするものである。新幹線を擁するJR東海の余裕でもあり、佐久間レールパークで集まった飯田線人気をなんとか温存したい、という苦肉の策でもありそうである。
 飯田線はカーブや交換待ちも多く、それほど飛ばすわけではない。スピードが上がらないことを逆手にとったアイデアは、なかなか秀逸だ。
10x240862b

(平成22年10月観察)

|

« 東京の交通点描 | トップページ | 土電点描 »