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新東名経由の昼行高速バス

 名古屋から東京に移動するのに、前後の予定からしてけっこう時間の余裕があった。それなら当たり前の新幹線よりも、JRの高速乗合バスでゆっくり行くことにしよう、と予約を入れた。その時に初めて気づいたのだが、たまたまその日は新東名経由の「新東名スーパーライナー」運行開始の日だったのである。
 わたしは、運行開始日とか最終日とかはあまり好まないのだが、なりゆきならまあしかたがない。初日ならではの面白いことなどあるかもしれない。

 名古屋駅新幹線口のバスターミナルにも、「新東名スーパーライナー」のポスターがでかでかと貼ってあり、力を入れていることが分かる。他の東名路線と同じく、JR東海バスとJRバス関東の共同運行のようだ。

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 名古屋発の初便は7時30分発の「新東名スーパーライナー2号」だが、これは時間が早すぎるからか、わたしが乗ろうとする10時30分発の4号の発車に合わせて、記念式典が行われるようである。横断幕が掲げられ、並べられた椅子に要人が坐り、女性アナウンサーが司会している。暫くそれを眺めることにする。式典のために、発車二十分前にはもうバスが据えつけられている。夜行便と共通運用のダブルデッカーだ。
 式典までやるとは、随分思い入れがあるものだが、新東名という道路自体の話題性もあり、高速乗合バスに対する世間の関心を高める狙いを込めて大々的にやっているのかもしれない。

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 式典会場やバスの周りには、大勢のマニアや報道陣が群がって写真など撮っている。それをかき分けるようにして、バスに乗り込む。
 わたしの席は、一階の一番前である。予約の時、二階は窓際が全て埋まっていて、昼間の便がなんでこんなに込むんだ、と不審に思った後、初日だと気づいたものだが、一階最前列は一人席が左右にあるだけなので、ゆったりできる。最前列といっても運転席との間の仕切りが目の前にあって、前方の眺望はきかないのだが、幸い列車と違って一階席と言っても通常のバスの座席の高さであって、天井は低いけれども側窓からの景色は普通に見られる。

 そして、記念便ゆえの品が配られた。

 缶のお茶とボールペンである。ペットボトルでないのは、エコの風潮によるのだろうか。このほか、「新東名スーパーライナー」のリーフレットとポケット時刻表も受け取った。

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 定刻ぴったりにドアが閉まり、アナウンサーの声がいちだんと甲高くなった。式典の人々の拍手を受けながらロータリーを回る。左窓に坐っていたら恥ずかしいところだが、幸い私の席は右側だ。

 この「新東名スーパーライナー」は、従来最速だった東名経由の超特急「スーパーライナー」をはるかに凌ぐ駿足で、途中首都高速を降りた後の霞(かすみ)が関(せき)で下車を扱う以外、途中の停留所には一切停まらない。東名高速線というより、いわゆる「昼特急」に近い設定である。このため、「超特急」より上位の「直行」という種別が付されている。この4号も、三十分前の10時00分に発車した超特急「スーパーライナー」を途中で追い抜き、東京駅には十八分も先着するダイヤである。
 超特急以下の各便は、名古屋市内でも栄(さかえ)・千種(ちくさ)駅前など数カ所で乗車を扱うのだが、「新東名スーパーライナー」はそれもしない。だから、東名に入るまでの経路も従来と全く異なる。一般道路を走る距離は僅かで、名古屋高速に入ってしまう。大高(おおだか)線で南下し、名古屋南ジャンクションから伊勢湾岸道路に移る。ここから東進し、豊田(とよだ)東ジャンクションで東名に入るのである。

 しかし東名を走る時間は一時間もなく、三ヶ日(みっかび)ジャンクションで分岐し、いよいよ新東名に入る。北東へ暫く行った所が浜松(はままつ)いなさジャンクションである。ここでは道路がループ状になっていて、北西へ大きく楕円状に迂回して戻って来、さっき通った道を見下ろして南東へ向かう。ループにしないといけないほどの高低差ではないが、こういうつくりになっているのは、新東名がここからまだ西へ延長される予定だからである。新東名はまだ全通はしておらず、真ん中あたりがとりあえず開通したに過ぎない。三ヶ日から浜松いなさまでの区間は、いずれは東名と新東名を途中で梯子段のように連絡する道路となるはずである。
 新東名は、曲線半径や勾配が従来の高速道路よりも大きく緩和されていると聞く。舗装したてであることも相まって、揺れが少なく乗り心地がいい。気持ちよく運転できすぎて、居眠りを招くのではないか、と心配になるほどだ。バスはほぼ走行車線を動かず、高速としてはかなりゆっくり走っているようだ。
 東名経由であれば、三ヶ日の少し先の浜名湖(はまなこ)サービスエリアで休憩となるはずで、設備もかなり整っているのだが、そこへは行けないこの便は、新東名をかなり進んだ遠州森町(えんしゅうもりまち)パーキングエリアに入った。その手前、東名の浜名湖に相当する位置に新東名の浜松サービスエリアもあり、店も多そうなのだが、なぜかそこには入らない。
 クルマの流れがスムーズなので、予定よりも早く遠州森町パーキングエリアに到着し、予定は十五分のところ、二十分あまりの休憩に延長となった。ノンストップ便だから早発を心配する必要もないのだし、どんどん早く進めばいいように思うが、初日だから定時でのシミュレーション的な運転をしているのかもしれない。

 遠州森町パーキングエリアで感心したのは、駐車場ではなく、店舗施設の正面に路線バスの停車エリアが設けられていたことである。高速バスの休憩では、一般車輌と混じって駐車場の真ん中に斜めに停まることが多く、クルマに脅かされながら店舗やトイレに向かわねばならないのが常だが、これはすばらしい。最初からここを路線バスの休憩所と定めて設計したのかもしれない。他の路線にも波及してほしいものだ。

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 バスの少し前には、大型二輪でツーリング中のにいさんが二人、バイクを停めて休憩していたが、大きなバスが入ってきたうえ、バスから降りた客がバスを取り巻いて写真など撮りまくっているので、何事かと不思議そうに見ている。やがて気味悪くなったのか、早々にエンジンを吹かした。
 うどん中心のカフェテリアと、普通のコンビニのような規模の売店があるだけだが、一応何でも買おうと思えば買える。コンパクトにうまくまとまった休憩場所と言えるだろう。

 遠州森町パーキングエリアを定刻に出発する。新東名は市街を避けて山の中を通っているものという印象があったが、このあたりは天竜(てんりゅう)浜名湖鉄道の路線よりも海側に出ている。
 走りのスムーズさは、インターチェンジの少なさにもよるのかもしれない。三ヶ日から御殿場(ごてんば)までの間、東名は十五カ所のインターがあるが、新東名は九カ所である。
 大井川鉄道を越えた所に島田金谷(しまだかなや)インターがある。このあたりの東名は、大きく海側を回っているため、島田や金谷にインターはなかった。静岡や清水(しみず)の市街は遠く、あくまで山中を行く。日本のどこにでもある山がちの土地だから、景観に面白みはない。新清水ジャンクションには東名との連絡道路が接続する。
 富士(ふじ)と富士宮(ふじのみや)の中間くらいに新富士インターがある。新幹線の新富士駅は逆に浜側に市街を避けているので、同じ名なのはとまどう。富士山の間近を走っているのだが、曇っているのでその姿は見えない。愛鷹山(あしたかやま)の南を回ると、東名がすぐそこまで近づいてくる。暫く並行した後、御殿場ジャンクションで東名に合流した。
 まもなく足柄サービスエリアである。

 ここは高速バス休憩の定番なので、勝手を知っている。遠州森町のように横付けとはいかないが、やはり路線バス専用の停車場が設けられている。

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 みたらし団子などをおやつに買い込んで、バスに戻る。ここからは目新しいルートはない。用賀(ようが)で首都高速に移る所と霞が関の下り口とが多少渋滞したが、それ以外は流れが滞ることもなく、霞が関には十分ほどの早着であった。
 市街地では右折が多い関係もあり、意外に時間がかかり、手狭な日本橋口(にほんばしぐち)バスターミナルでも、降車の順番待ちをしたので、終着はわずか三分の早着で、荷物をトランクから出したりしている人は、ちょうど定時になったのではないかと思う。初日としては上出来の運行であろう。

(平成24年6月乗車)

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