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未来バスの課題~ 両備バス「ソラビ」に乗る

 岡山の両備バスが、未来バスなるものを運行している。
 路線バスにとっての未来の理想像を提案するものらしい。例によって、と言っては失礼だが、水戸岡鋭治氏のデザインである。
 ともかく乗ってみよう。 

 

 岡山駅前のバスターミナルで未来バスを待ち受けたが、時間になってもなかなか姿を現さない。
 同社の彩図などによると、未来バスは「ソラビ」という愛称がついており、岡山~西大寺間を一日に三往復しているようだ。西大寺からのバスがもう着く時刻になっているのだが、途中の道が込んでいるのだろうか。

 しかたなく、ひっきりなしに出入りするバスを眺める。岡山電気軌道、下電バス、中鉄バスなど、多数の会社が入っている。台数としては両備バスが最も多いようだ。各社の社名から分かるように、鉄道を運行している、あるいはかつて運行していた会社のバスが少なくない。この両備バスにしても、元は西大寺鉄道という社名だったが、バスが営業の主体になったためか、現在の社名になった。
 客を降ろして入庫するバス、出庫してきたバス、いずれも回送だが、「すみません 回送中です」という腰の低い電光方向表示を出している。

 やっと「ソラビ」らしいバスがターミナルに入って来た。低床で、屋根に何やら装備しているから、ずいぶんずんぐりとして重心低く地を這うがごとく、バランスが悪そうに見える。10x101370_2
 折返し発車まで五分ほどしかないので、乗り場に着いて乗降を同時に扱うのかと思ったら、乗り場を行き過ぎて先のブースで降車を扱い、待機場に移動してしまった。僅かであっても息を抜く時間が欲しいのだろうか。

 ようやく「ソラビ」が乗り場にやって来た。ボディは全体に白なのだが、前から見ると黒っぽい。白を基調としながら、白で軽薄になりすぎないよう、グレーや黒でアクセントをつける手法は、水戸岡デザインらしい特徴だ。10x101363_2JR九州の特急電車、岡山電気軌道の路面電車にある水戸岡車輌とも通じるものがある。

 車内に入ってみると、内装は白というよりベージュが基調であろうか。斬新なデザインではあるが、まず見わたしての印象は、座席数が少ない、ということである。ラッシュには対応できそうになく、「ソラビ」の運行が昼間が中心になっているのが分かる気がする。
 タイヤハウスの上は、通常のバスなら、ちょっと坐りにくい座席を無理やり設置しているが、この「ソラビ」はそんな半端な席は拒否し、赤ちゃん用のサークルのような物を取り付けて、中にぬいぐるみを坐らせている。これは子供連れには喜ばれそうだが、それよりも坐りたい、という人もいそうである。
 わたしは、中扉のすぐ後ろ、くまちゃんの前の席に腰掛けたが、この座席の幅は、一人で坐るにはかなり広いが、二人には狭すぎる。以前神戸市バスにあった親子シートに似ているが、あれは不評で廃止になったはずだ。妙な幅のシートは、下手をするとトラブルの種にもなりかねない。ただ、クッションは固すぎず柔らかすぎず、坐り心地がよい。10x101364_2 10x101361_2 10x101460_2
 前のタイヤハウスと中扉との間は、右側がロングシート、左側が一人掛けの前向きシートとなっている。ロングシートは波打ったような形になっていたりして、いずれも従来の路線バスになかった形状の座席である。

 車内の照明は、LEDであり、これは屋根にある太陽電池が電源である。また、空気清浄機が車内に取り付けられている。
 窓には紫外線防止フィルムが貼られていて、ゆえにブラインドの類はない。ただこれも、JR西日本の新快速車輌で試行したところ、不評のため、結局ブラインドを取り付けた、という経緯があり、心配ではある。
 運転手の確認用に、車載カメラを四台も装備しており、いろいろな角度からの立体的な映像がモニターに映るようになっている。
 災害時などには緊急車輌にバッテリーの電気を供給するなど、連携して救難にあたれるように工夫した設計にもなっている。10x101362
 こうした技術的な特長が分かるのは、車内にモニターがあって、繰返しこのバスの解説をしてくれるからである。

 さて、実際西大寺行として発車してみると、都心のターミナルである天満屋で、満席になってしまった。通常のバスなら坐れる人も、立たねばならない。本来座席でない所に腰掛けている人もいたりして、どうも課題がありそうである。

 この路線は、かつての西大寺鉄道の運行区間を代替する路線だが、十~二十分毎に運行しているにもかかわらず、乗降は盛んである。両備バスとしては幹線の部類に入るようだ。
 調べてみると、西大寺鉄道が廃止されたのは、単に新たに開通した国鉄赤穂線との競合を避けるためであり、経営は苦しくなかったらしい。元来需要の旺盛な区間なのであろう。

 常時席が埋まる程度の客を乗せたまま、西大寺バスターミナルに到着した。やはり十分程度遅れている。岡山と西大寺の市街で、流れの悪い所がいくらかあったのである。10x101480 10x101490
 ターミナルは、元の西大寺駅を整備したものである。発着ブースや待合室は新しい建物だが、乗務員の詰所は旧駅の建物をそのまま使っているようで、鉄道駅のムードがよく残っている。
 わたしが最後にイコカをタッチさせて下車すると、「ソラビ」は直ちに「すみません 回送中です」の表示に換わり、車庫に引き上げて行った。10x10146210x101461

 ターミナルビルの側には、西大寺鉄道の車輌と転轍機が保存展示されている。状態はいいようであった。  

(平成22年10月乗車/平成23年2月執筆)

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