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負のダイヤ改正

 JR恒例春のダイヤ改正の概要が発表されたが、予想されていたとはいうものの、これがなかなか衝撃的な内容である。JR西日本についてであるが。

 各線の列車の所要時間や運転本数を改正前と改正後とで比較する表を示すのはよくあることだが、その数字に異変があるわけである。
 所要時間が軒並み増えているのだ。朝ラッシュ時で言えば、例えば新快速の三ノ宮から大阪までの所要時間が20~22分だったものが、23~24分に増している。他の区間やデータイムでも、1~2分程度の所要時間増になっている。これらはもちろん昨年の福知山線脱線事故を受けてのものだ。
 これまで国鉄~JRのダイヤ改正は、いうまでもなくスピードアップを重ねてきた。それがサービス向上なのだから、当然だ。例外的にスピードダウンする場合もある。それは、線区に特殊な事情のあるときだろう。
 例えば、昭和53年の改正では東北本線の特急がスピードダウンしたが、これは特急増発のためだった。同じ線路にできるだけ多くの列車を走らせたい場合、列車の速度を揃えるのが最も詰め込むことができる方法だ。東京のJR山手線や大阪の地下鉄御堂筋線がラッシュ時に2分以下の間隔で頻繁運転できるのも、全ての列車が各駅停車で速度が揃っているからである。そこで東北本線でも、特急のスピードを下げて普通列車に近い速度とし、列車増発の余地を生み出したのだ。一見サービスダウンに思われるが、特急を増発することによって、待ち時間を含めた実質的な所要時間は短くなるし、輸送力を増強することで着席率も向上する(当時の国鉄特急は、指定をとるのが難しい列車が多く、自由席は立ち客がいるのが当たり前だった)ので、トータルでサービスアップとなる、という判断である。
 あるいは、同じJR西日本であれば、平成13年に閑散ローカル線で速度をそれまでより落とした。これは、高速で運転するほど線路が早く傷み、保守の費用がかかるからである。なんともせこい話で非難も浴びたのだが、なかなか涙ぐましい。

 今回はそういう局地的な事情ではなく、アーバンネットワークの各線で、スピードダウンが定位となっているからただごとでない。運転時分に余裕を持たせ、乗務員の精神的負担を軽減することで、安全性を高めるのが目的であろうが、こういう目的でのスピードダウンは初めてかもしれない。
 これがダイヤ改「正」である、ということは、今までのダイヤでは無理にスピードを出していた、と認めているようなものであり、JRとしても忸怩たる思いなのであろう。あれだけの大事故がなければこのような改正はあり得なかった。ものごとが極端に走ったとき、それを揺りもどすための何かが起こるのは、世の摂理というものだろう。そこには人の生命さえあっけらかんと操作してしまう構造の力が感じられ、そら恐ろしい。

 スピードダウンの余波は、運転本数の減少というかたちでも現れている。列車の速度を低くすれば、終着駅への到達時間が延び、その分同じ運転本数を維持するには多くの車輛が必要となる。
 急に車輛を増やすこともできないので、止むなく本数を減らしているのだろう。JR神戸線の須磨~西明石間の各駅停車が、昼間のダイヤで毎時8本から4本に半減する。現行の8本のうち4本については快速がすぐ前か後ろを走っているから、快速停車駅では実質的な乗車チャンスは減らない。が、快速の停まらない塩屋・朝霧の両駅は明白なサービスダウンになる。
 福知山線での事故の影響がこんなところに出るのはJRの路線規模のなせる悪戯だが、どうも割り切れない。

(平成18年2月執筆)

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