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下関のロンドンバス

 下関(しものせき)でロンドンバスが走っているのは知っていたし乗りたいと思っていたが、いつでも行けると思って乗っていなかった。
 すると、平成25年3月限りで運行を終了する、というニュースが入ってきた。こうならないと足を運ばない癖は、一生治らないのだろう。

 ロンドンバスが運行されているのは、下関と城下町長府(ちょうふ)の間である。JR長府駅からバスで城下町長府に向かう。長府駅前広場にバス停のポールは立っているが、そこに掲げられている時刻が、どうも予めサンデン交通の彩図で見たのと違う。かなり少ないのである。わたしが乗ろうとしていた便もない。
 おかしいなと思いながら駅正面を見通すと、大きな交叉点があり、広い国道が左右に通っている。もしかしてと思って、その交叉点に出てみると、国道上に別の乗り場があり、そこの時刻表では頻繁にバスが来ることが分かる。どうやら、駅前広場の乗り場には、長府駅折返し便のみが発着するらしい。
 こういうことがあるので、路線バスの利用はスリルがあって面白くもあるのだが、これはちょっと分かりにくい。乗ってしまえば十分ほどで城下町長府に着く。そういう名の停留所なのだ。

 長府はその名のとおり長州の中心だった地である。現在は下関市の一角になっているが、武家屋敷が建ち並ぶ古都である。
 歩いていて面白いと思うのは、街並みが自然な感じで残っていることである。練塀に囲まれた立派な構えの旧家が多いのだが、現代的なアレンジが加えられて、必ずしも原型を保存しようとはしていない。そんな旧家に挟まれてマンションも建っている。
 石畳風に舗装された道路もあるが、別段観光客用の道というわけでなく、クルマががんがん通るし、それらのクルマが横断しようとする観光客に配慮してくれるわけでもない。

 わたしは、こういう保存のあり方が好きだ。欧州にあるような、町中の家の屋根が同じ色に統一されている、という光景は、確かに見応えはあるのだが、どうも不自然に感じるのだ。
 わたしも日本人だということだろう。節操なくいろんな文化を摂取し加工して自分のものにしていく方が、日本らしくて好きなのである。

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 そんな長府と下関駅とを結ぶ足として運行されているのが、本場ロンドンから直輸入された二階建てのロンドンバスである。長州と英国の縁は薄くはないけれど、馬関戦争で砲弾を交えた間柄でもある。そのあたりのテキトーさもまたよい。

 
 まず、下関駅からやって来たロンドンバスを待ち受ける。満席に近い盛況である。
 

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 折返し乗車する人も、一度降りて向かい側乗り場に並んでください、と車掌さんに指示されている。
 わたしも並ぶことにするが、広い国道を渡る横断歩道は、なかなか歩行者用信号が青にならず、苛々する。

 運行終了が発表されたせいか、かなりの混雑ぶりだ。一人で並んでいた中年の女性は、「地元なのに乗ったことがなかったので」と話す。
 そうかと思うと、ロンドンバスのことなど何も知らずに、長い列にとまどっている人もいる。通常のバスによる下関駅行が先に着き、ロンドンバスに興味のない人や事態が把握できていない人が、いいのかしら、と列をちらちら見ながら乗り込む。

 そこへ、方向転換したロンドンバスが到着した。

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 現在、このルートマスターと呼ばれる昔ながらのスタイルをとるロンドンバスは、既にロンドンでも引退してしまった。世界中で親しまれている型のバスだから、あちこちの国・地方に引き取られて保存されているが、営業運転しているのは珍しいことであった。
 わたしもロンドンを訪れた時にぎりぎり現役だったルートマスターに乗り、二階席も含めた乗車人員を正確に把握している車掌さんに感服したものである。

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 あの時と同じく、ドアもない後扉から乗る。もちろん、多くの人が二階に上がる。かなり狭く急な階段である。

 走り出すと、二階とはいってもエンジンの響きがじんじんと伝わってくる。
 日本にも二階建てバスはあるが、それよりも車高が高いと思われる。一階も二階もきちんと立って歩けるのだ。
 通常の路線バスが追い越して行ったり、歩道橋をくぐったりすると、その高さが実感される。
 

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 どこでも視線とファインダーの的になりながら走る。関門国道トンネルの入口である御裳川(みもすそがわ)も通る。

 下関駅に着くと、多くの客がバスの外観を撮るため、我先に降りていく。その間に二階席の前の方を撮っておいた。ロンドンでは、最前列にカップルが坐り、洋画さながらのラブシーンを演じていた。それを見ながらユーストン駅からパディントン駅へ移動したのを思い出す。
 

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 ロンドンバスのイラストがあしらわれた停留所ポールも、見納めになってしまった。

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 下関駅は改修工事中で、ろくに店も営業しておらず、落ち着かなかった。きれいに生まれ変わるのであろう。

(平成25年3月乗車)

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