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隣同士の駅名で人名をつくる

 標題のようなことは、古くから鉄道趣味界では話題にされてきたことである。
 駅名の多くは、当然ながら地名から付けられる。また、日本人の名字の多くは地名に由来する。だから、名字になる駅名には事欠かない。しかし、下の名前にありそうな駅名は少ないし、それが名字的駅名と隣り合っている確率は低くなる。それで、そういうのを見つけると、ちょっと嬉しかったりするわけだろう。

 しかし、昭和の末期頃以来、話題性を狙って故意に奇矯な駅名を付けたり、複合的な名称が採られたりすることが多くなって、こういう話題がかすんでいる感がある。
 それでも、細々とではあるが、趣味人の口にはのぼっている。

 この条件に合う組み合わせとしては、双璧と呼ばれる例がある。

 一つは、重岡(しげおか)宗太郎(そうたろう)(大分県 日豊線) である。宗太郎 などという、どこから見ても立派な人名である地名が、よく駅名に採られていたものだ。重岡宗太郎 とは、歴史上の人物として、明治維新頃に活躍した武家の末裔、という感じのする堂々たる名だ。
 そして、この区間は日豊線のなかでも最も鄙びた、大分・宮崎県境の山越え区間にあり、これらの駅に停車する普通列車は、一日僅か三往復しか運転されていない。いわゆる「秘境駅」であり、実際に訪問するのはなかなか大変である。そんなこともこの名前から類推されるその架空の人物の近寄りがたさとよく合致している。

 そして、これとは対照的に、現代に十分実在していそうなリアルな名前として、わたしの地元に、森田(もりた)春江(はるえ)(福井県 北陸線) がある。春江 とは、流石に平成生まれの女の子には少ないだろうが、中年以上の女性には、全国を探せば何人もいることだろう。
 記事にこの話題をとり上げようと思ったのは、たまたまこの区間の切符、それも金額式ではなく駅名が印字された切符を買ったからである。 

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 狙って買ったのではなく、実際に乗る必要があって買ったのである。森田 は委託駅で、券売機もあるのだが、窓口におばさんがいる間は、近距離でもこういう切符を売ってくれる。買ってから、あの組み合わせだ、と気づいたのだ。

 この他にも、国分(こくぶ)隼人(はやと)(鹿児島県 日豊線)というアイドルか戦隊ものの主人公(変身前)のような名前、朝霧(あさぎり)舞子(まいこ)(兵庫県 山陽線)と宝塚歌劇団の女優のような名前(実際に「朝霧舞」という名の宝塚女優がいたようである。この駅名を意識した命名かどうかは不明である)もある。

 わたしが職場で、ある書類の記入例サンプルをいくつも作ってみなさんにお配りした時、氏名の例に使ったのが、近隣の駅名を組み合わせたりした擬人名であった。
 森田春江 も使ったが、他にも無理やり作った。
 光明寺(こうみょうじ)(とどろき)(えちぜん鉄道勝山永平寺(かつやまえいへいじ)線)というかなり苦しいが、アニメのイケメンキャラ風のもの。
 隣同士ではないが同じ線から採った新田塚(にったづか)太郎丸(たろうまる)(えちぜん鉄道三国芦原(みくにあわら)線)という忍者漫画の主人公風。
 藤井(ふじい)三松(みつまつ)(JR小浜(おばま)線)、これもやはり幕末の武士か。
 だんだん苦しさが増すが、一駅だけでフルネームになる西武生(にしたけふ)(福井鉄道福武(ふくぶ)線 現在は 北府(きたご)に改称)、これは人名だと たけお と訓みたい気がするが、しかたない。
 それに、県内同様に職場では縁が深い滋賀県から、河瀬(かわせ)稲枝(いなえ)(JR東海道線)、というしとやかな婦人風の名を使った。多分 森田春江 とは女学校時代の友人であろう。

 最初に述べたように、単純な地名でない駅名が増えて、さきほどのように単独でフルネームになる駅名、たとえば 井川(いかわ)さくら(秋田県 奥羽線)などができたし、そもそも人名からつけられた 宮本武蔵(みやもとむさし)(岡山県 智頭(ちず)急行智頭線)などもあって、相対的に発見の面白みが低下した感がある。
 が、これからも新しい駅ができたり改称したり、あるいは人名観そのものが変化して、従来は人名になり得なかった駅名が人名に好適になったりするかもしれず、今後も目が離せない話題だ。

(平成25年7月執筆)

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