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新装稚内駅と臨時特急上り「まんぷくサロベツ」

 「キュンと北海道フリーきっぷ」で北海道のそぞろ乗りを続けているが、この日は稚内へ出かけた。か細い宗谷本線が通うのみの稚内は、先日の釧路とは異なり、列車での日帰りは難しい。そこで、往路は飛行機を使うことにし、新千歳(しんちとせ)から稚内空港へ飛んで連絡バスで市内に入った。
 途中副港市場を覗いてみようか、とも思ったが、天候が怪しいので見合わせた。副港市場から駅までは、ちょっと歩く距離があるのである。

 直行でやってきた稚内駅に、わたしは目を見張った。新しい駅舎ができ、全面改装されたとは聞いていたが、これほど変幻しているとは、思いもよらなかった。

 くすんだ昔ながらの駅舎が佇んでいた旧稚内駅とは似ても似つかぬ、今風の軽快な駅ビルがわたしを迎えてくれた。

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 終着駅リニューアルの常として、それまでの駅よりも少し後退させて駅前広場を整備する、というやり方がとられている。駅前広場にはバスターミナルが新設され、従前の宗谷バスターミナルは取り壊された。
 とにかく駅付近は全く様相を新たにしているのだ。記憶にあった以前の駅周辺と、照合しようにも、何がどこにあったのかも分からない。雪の季節に来ることが多かったせいもあるかもしれない。

 駅のすぐ北側には従来から全日空ホテルがある。待ち時間に覗いてみる。
 ここには泊まったこともあるが、街の中心が南稚内付近であり、ビジネスホテルなどもそちらに集中するなか、ひとり稚内駅前に気を吐いているホテルである。利尻・礼文航路の波止場にも隣接している。
 が、それだけに観光の宿という面が大きく、短い夏を終えた今、ホテルのロビーはうら寂れた陰鬱な雰囲気であった。あまり長居する気にならず、さっさと駅に戻った。途中の通路には、舗装のコンクリートのなかに二本の細く黒い帯が一定の間隔を保ちながら続いている。まるで鉄道のレールのようだ、と思うまでもなく、駅前広場に出ると、本物のレールにつながるのだ。

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 これは、駅舎が後退して線路が短くなる前、実際に敷かれていた線路の跡らしい。その一部は道床もそのまま残され、「最北端の線路」という表示も添えられて、一種のオブジェになっている。

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 線路を模した二本線は、そのまま駅舎に吸い込まれている。

 駅舎に入ると、改札付近のコンコースの隣に、土産物屋や飲食店の入った店舗群がある。その一角に食堂があるが、食堂の一部が立ち食いそばのカウンターとなっている。これが最北端の駅そばということになる。

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 駅部分はホーム一面一線だけの最小限のつくりだ。南稚内駅には留置線があり、列車の整備ができるようになっている。稚内発着の列車はそこで折返し整備を行い、乗降を扱うためにこの稚内駅に回送されてくる寸法である。
 線路の行き止まり部分は、コンコースからガラス張りの壁を通じて見通せるようになっている。この壁に向かって列車が入ってくるのだから、迫力はなかなかのものだ。
 液晶表示の発車案内には、これからわたしが乗ろうとしている特急「まんぷくサロベツ」札幌行が表示されているが、文字化けしているのは残念だ。
 やがて、「まんぷくサロベツ」の車輌がコンコースに向けて突入して来、多くの人がカメラを構える。

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 この車輌は、やはりJR北海道のジョイフルトレインの一つで、「ノースレインボーエクスプレス」と呼ばれているものである。
 その名のとおり、車輌ごとに異なるパステルカラーが塗装されており、華やかな外観である。七輌つないでいれば「レインボー」の名にぴったりくるのだが、それは輸送力が過剰なのか、実際は五輌である。

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 「まんぷくサロベツ」は、観光シーズンに合わせて、定期特急の「サロベツ」を、車輌を変更し、独自の趣向を凝らした企画列車として運転するものである。「まんぷく」の名で知れるごとく、車内の供食に特に力を注いだ列車である。土曜日の下りと日曜日の上りが「まんぷくサロベツ」となるのが基本である。
 中間に位置するダブルデッカー車輌は、二階が客席、一階がラウンジと売店になっている。売店では、この列車限定のさまざまな「食」に関する商品が売られる。ラウンジの壁にメニューが貼ってある。 

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 わたしは、最初このダブルデッカーに席を占めたのだが、天井の低さに窮屈を感じ、隣の車輌に移った。この車輌もハイデッカーであるから、見晴らしはよい。そのうえ、この車内には、ダブルデッカーにはなかったモニターが設置され、前面展望が映写されているから、それを見ていると飽きない。

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 発車して暫くすると、ラウンジの売店から営業開始の放送がある。行ってみると、これまた行列ができている。
 わたしの番がくる直前に、豊富(とよとみ)が近づいた。てきぱきとした女性店員が、
「豊富でプリンを積み込みますので、暫くお待ちください」
 と行ってデッキに出て行った。
 店員が戻り、やっと順番が来て、いろいろ買い込む。さっきの稚内全日空ホテルで調製された「宗谷黒牛サンドイッチ」も売られている。分厚く香り高い食パンにほどよい歯応えのビーフカツが挟んであり、冷めても美味しい工夫がなされている。
 豊富温泉の「湯上がり温泉プリン」は、川島旅館で温泉から上がった客にサービスされているプリンで、地元産の牛乳とそれを使った生クリームだけでできていて、あっさりしたスィーツである。通常は同旅館に泊まった客しか食べられないものを、この列車で特別に供している。デザートとしていただいたが、とてもスムーズに喉を通り、美味しかった。

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 この他、途中経過地である名寄の名物、「もち米の里ふうれん館のソフト大福」も求めた。これもべたつかない甘さで、上品な菓子であった。

 売店では、この列車の乗車記念証も配布されていた。裏面は、かつて宗谷本線を走っていた急行「礼文」のイラストに、自分でラウンジにあるスタンプを捺してヘッドマークを入れる、という趣向であった。

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 観光列車然としていたのは名寄までで、ここからは用務客も多く乗ってきて、自由席も半分ほどが埋まった。定期列車のダイヤで運転されているので、普段使いの客も多いのである。
 旭川からは都市圏に入るので、かなり日常的なムードになるが、すぐ前を特急「オホーツク」も走っているので、さほど込まない。それでも女性係員は精力的に放送や車内販売に勤しみ、常連客も観光客も分け隔てなく、「まんぷく」を提供しようとしている。
 札幌には定刻に到着する。五時間を超える行程だが、食の楽しみがいささかでもその時間を短く感じさせてくれた。

(平成24年9月訪問・乗車)

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