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母恋から地球岬

 地球岬、とその名を聞いただけで、一度行きたい、との思いが募っていたのだが、なかなか行く機会がなかった。この初秋、やっと訪ねることができた。

 地球岬の最寄り駅は、室蘭(むろらん)(枝)線の母恋(ぼこい)駅である。ここで降りるとなると、どうしても見て、というか食べておきたいものがある。

 それは、「母恋めし」である。特急が停まる主要駅でも、駅弁を売る駅が少なくなったなかで、こんな小駅に駅弁があること自体が珍しいのだが、この「母恋めし」がすこぶる評判がよく、通好みになっている。手作りなので、百貨店の駅弁大会などに出ることはないが、それだけに、現地でないと食べられない稀少価値が付加されて、いよいよ食べてみたくなる。

 特急「スーパー北斗」で東室蘭に降り立った。ここから母恋に向かう普通列車に乗り換える。ホームの時刻表には、何カ所もテープが貼られていて、もの悲しい。特急車輌の出火トラブルなどを受け、ディーゼル特急が間引き運転になっているのだ。

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 室蘭行の普通列車はディーゼルカー2輌で、ワンマンカーである。わたしは後ろの車輌に乗ったが、母恋では最前部のドアしか開かないので、かなり車内の通路を移動する。

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 待合室に出てみると、売店の前にのケースに母恋めしが積まれていたので、ほっとする。限定販売なので、早く行かないと無くなるのである。

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 化粧紙で風呂敷のように包まれた素朴な母恋めしを手にすることができた。
 売店を守るおばさんは、遠来の客にも応対しなれているようで、どちらから、などと会話を暫し交わし、ぜひまた来てください、とポイントカードのような物を添えてくれたりする。
 駅前に出ると、母恋めしをアピールする看板が出ている。駅前は幹線道路なので、これを見てクルマを停める人もいるのかもしれない。

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 さて、駅前からはタクシーに乗って地球岬に向かう。地球岬に乗り入れる路線バスはなく、手前の住宅地までしか行かない。そして、岬までは上り坂が続くのである。海に向かう道が上り、というのは、なかなか理解しがたいのだが、そういう込み入った地形らしい。
 初めて室蘭にきた時は、駅の前に見上げるばかりの山が聳えていることに驚いたものだ。その山の中腹に見えたバスが、数分後に駅前に現れたりしたのだ。

 初老のタクシーの運転手さんも、いかつい顔をしてはいるが、気さくな人であった。母恋駅からは地球岬への観光客が一つのパターンらしく、今朝も九州からの客を地球岬に案内した、と嬉しそうに話す。
 坂は続くが、距離としてはそんなに遠くないので、十分ほどで地球岬の駐車場に着く。ここからさらに徒歩で数十メートルの坂を上がると、なるほど大きい視界が開けた。

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 想像していたより、遊歩道や展望台などの施設が整備され、悪く言えば俗化している。それでも、そんなことを超越するような海原が眼前に広がる。地球岬の名は、もともとチキウという、「断崖」を意味するアイヌ語による地名であった。それに「地球」の字を当てたわけだが、まさに地球の丸さを感じさせる情景には相応しすぎる名となった。
 周囲の海岸線は切り立った崖ばかりである。これだと、津波のときにも崖が自然の堤防となったことだろう。

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 海岸線だけではない。展望台から市街地の方を見下ろしても、山と崖の狭間に住宅や工場が巣くっている感じで、実に珍しく複雑な地形である。
 
 

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 坂道を降り、駐車場に戻る。地球を象った球形の施設があるが、これは公衆電話だ。また、駐車場に面して三軒ほどの店が出ているが、何かおちょくったような商品を売っている店もある。
 ひっきりなしにクルマや貸切バスが出入りしている。外国からの観光客も多い。今日は平日なのに、人が途切れることがない。休日にはもっと賑わうのだろう。これなら、母恋駅から岬までバスを運行してもよさそうに思うが。

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 さて、わたしはベンチに坐り、母恋めしを早昼としようと思う。この歳になると、アウトドアで弁当を食べる機会も少なくなるが、たまには愉しいことだ。
 風呂敷包みを開けると、素朴な挿絵の入った掛け紙がかかった市販の紙容器の中に、無造作に中身が詰め合わされている。 

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 主食はホッキ貝を炊き込んだおむすびだが、ホッキ貝の貝殻のなかにも、同じ物が入っている。茄子の漬物、燻製玉子、燻製チーズがおかずである。

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 おむすびが二つある分、カロリーは嵩むが、それでも600キロカロリーくらいのものだろう。ちょっとした軽食にもちょうどいい。味もよかった。駅弁駅弁していないのがまたよい。

 さて、地球岬からの帰りはバスに乗ろうと思う。岬までは来ていないが、少し下の地球岬団地と呼ばれる住宅地までは路線バスの便がある。その乗場まで徒歩で十分ほど坂を下ってきた。あいにくバスは出た後で、次のバスまで二十分ほど待つことになる。ベンチに坐って行き交う人やクルマを眺める。
 五叉路に面した回転地が乗場である。ここからあちこちの方向に狭い坂道が分岐しており、それぞれに面して一戸建て住宅が並んでいる。もちろん、北海道らしく、家同士の間隔は広い。郵便配達のバイクが、道を下って来ては別の道に登って行く、という動きを繰り返している。タクシーもこの回転地に次々入ってきては転回して駅の方に向かって行く。観光客だけでなく、近隣の住民もお得意様なのだろう。これだけ坂があれば、分かる気がする。待っている間に延べ十台ほどが転回したが、そのうち二回が、往路に乗ったあの運転手さんであった。

 やっとバスが回転地に入ってきた。五分ほどの乗車で母恋駅前を通る。

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 わたしはそのまま乗り続け、市役所前で一旦下車した。室蘭市街は、狭い湾に沿って広がっている。湾口に架かる白鳥(はくちょう)大橋によって、U字型の市街地の端と端が短絡されている。この白鳥大橋もまた、観光スポットである。
 白鳥大橋を渡る系統のバスは本数が限られるが、これを利用して室蘭市街を一周するバス乗りあるきをしてみよう、と当初は思っていた。

 しかし、その系統のバスに乗ってみると、これが常に案内放送と料金表表示がずれていて、放送は合っているが、料金の方が一停留所先行してしまっている。
 白鳥大橋の手前の停留所で、お爺さんが料金を投入して降りようとする。運転手が呼び止めて、料金が足りない、と言う。お爺さんはいつも乗っているがこの値段だ、と言い返す。もちろん料金表が誤っているのだが、初老の運転手は高圧的な態度で請求する。しかしお爺さんも強硬に支払いを拒否する。埒があかなかったが、根負けした運転手が、「他のお客さんが待ってますから、もう結構です。こちらでも調べておきます」と捨て台詞を吐く。自分で呼び止めておいてそれはないだろう。

 車内の雰囲気が沈んだままバスは橋にかかる。わたしも、すっかり白けた気分になる。それでも、橋の上からの景色はしっかり見ておく。

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 呆れたことに、運転手は案内放送を止めてしまった。放送と料金表がずれていることに気づいていたのである。白鳥台団地で折返す時に、機器を操作して料金表を一つ戻した。
 わたしはこの運転手の態度と行為に嫌気がさし、この会社のバスに乗りあるく意欲が一気に失せた。

 東町ターミナルで降りて、これからどうしようか、と思っていると、新千歳(しんちとせ)空港行のリムジンバスが来た。空席もあったので、わたしは、これに乗って早々に室蘭を出ることにした。もっとも、このリムジンバスも同じ会社の運行ではあるが。
 待合室からホームに出ようとしたわたしに、バスを待って屯していた男子高校生たちが非常に礼儀正しい態度で道を譲ってくれた。おかげで、室蘭のイメージが良くなったところで去ることができたのが、幸いであった。

(平成25年9月訪問・乗車)

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