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新幹線内地縦断日着の旅

INDEX
0.はじめに
1.九州新幹線 鹿児島中央→博多 「みずほ」グリーン席
2.山陽新幹線 博多→新大阪 「みずほ」グリーン席
3.東海道新幹線 新大阪→東京 「のぞみ」グリーン車
4.東北新幹線 東京→新青森 「はやぶさ」グランクラス
5.新青森→青森 ~おわりに


0.はじめに

 平成22年に東北新幹線、平成23年に九州新幹線鹿児島ルートが相次いで全通、本州の北端と九州の南端が新幹線だけで結ばれることとなった。

 平成23年3月の九州新幹線博多~新八代間の開業に先立つこと一週間、そういう時期の設定も戦略的なものだったのだろうが、東北新幹線の「はやぶさ」が運転を開始した。鉄道のファーストクラスとも言われる座席を設けた最速列車だから、これも当然乗りたい。そしてせっかく鹿児島から青森まで新幹線がつながったのだし、十分その日のうちに行き着けるはずだから、新幹線で乗り通してみたい。その最後を「はやぶさ」でしめくくることとしたい。
 それで、両新幹線のダイヤが発表される前は、鹿児島中央から新青森までの新幹線乗継をもって乗りつぶしにしよう、と目論んでいたのである。

 ところが、発表されたダイヤを見て、わたしはがっかりした。 

 「はやぶさ」は当面僅か三往復の運転で、うち一往復は東京~仙台間の区間運転であった。新青森に発着するのは二往復なのだが、下りの二本はいずれも東京発が午前中で、鹿児島中央からの乗継ぎでは間に合わなかったのだ。
 わたしは、「はやぶさ」は諦めて「はやて」を締めにするか、あるいは、仙台で妥協するか、などと考えたが、いずれも中途半端だ。逆方向の乗継ぎなら可能だが、「はやぶさ」で締めくくり、にこだわりたい。
 そこで、これはいずれ「はやぶさ」が増発されてからに期することにし、その時はとりあえず九州新幹線の開業区間のみをつぶして来た。

 幸いその後、予想どおり「はやぶさ」は次第に増発され、夕方から夜間の新青森行も運転されるようになっていった。それで、いよいよ標記の電車旅を実行することにしたのである。
 北海道には入らないから、「日本縦断」と銘打つことはできない。「北海道と沖縄とを除くわが国の国土」を指す語として、まさに北海道と沖縄とで共通して聞かれるのが「内地」であるため、標記のタイトルとした。四国はどないすんねん、というのは訊かないでほしい。

 もっとも、鹿児島から青森への日着は、別段今回の両新幹線開通によって初めて実現したというわけではない。未開通区間を在来線でつなぐことによって、ずっと以前から日着は可能であった。
 初めて日着できるようになったのは、東北新幹線が上野(うえの)~大宮(おおみや)間を開業して都心乗入れを果たした昭和60年の時点であった。それまではいかにしても夜行列車を挟む必要があった。
 当時のダイヤだと、西鹿児島(現・鹿児島中央)6時54分発の在来線特急「有明(ありあけ)10号」で出発し、博多(はかた)で新幹線「ひかり6号」に乗継いで東京へ、山手(やまのて)線で上野に移動して東北新幹線「やまびこ23号」に乗り、終点の盛岡で再び在来線の特急「はつかり27号」へとつなげば、青森に0時06分に着くことができるようになった。厳密には日付を跨いでしまっているが、実質は夜の続きであろう。
 特急がそんな真夜中に終着するダイヤだったのは、青函(せいかん)連絡船の深夜便に接続する都合であった。
 青函トンネル開通に伴う昭和63年のダイヤ改正で、この最終「はつかり」は青森着23時46分に繰上げられ、名実ともに日着が実現したのである。

 だから、この電車旅も、今さら珍しげもないものではある。しかし、新幹線だけで切れめなく内地がつながった、ということこそが、新幹線といえば東海道しかなかった時代に幼少を過ごし、各地の新幹線ができあがっていく様を見てきた世代からすると、感慨深いのである。それに、速度や車内設備・サービスも向上したので、それを味わう愉しみもある。
 せっかくなので、三本乗継ぐことになる新幹線列車は、いずれも各線最速種別となる看板列車を選び、それぞれの列車のなかでも最高ランクの席を取ることにした。

 席の予約はスムーズにいき、通しの乗車券も購入した。
 「経由」欄に「新幹線」の文字が三つも入っている乗車券は初めてだし、壮観である。経由の表示は「新幹線・新青森」だけで十分ではないか、という気もするが、こういうときは分かりやすくてよい。行先駅が新青森でなく青森なのは、着いてから泊まるのが青森市中心街の宿であるためであり、また新青森で途中下車してこの乗車券を手許に残すためでもある。
 早期に予約を入れれば、この乗車券分だけの値段で鹿児島から青森まで飛行機で移動できるかもしれないが、そんな比較に意味はない。


 
1.九州新幹線 鹿児島中央→博多 「みずほ」グリーン席

 前夜飛行機で鹿児島に入り、鹿児島中央駅前のホテルに宿泊した。
 ホテルは駅前広場を挟んだすぐ向かい側で、ホテルの窓から新幹線のホームや列車もよく見えた。ごく近い、と多寡をくくり、ぎりぎりまでホテルにいたもので、駅までの歩行距離が地下道を介して意外に長いこともあって、ホームに上がった時は発車間際だった。
 もう少し余裕をもつべきであった。十分な朝食をとる時間もなかった。冬の九州だから、七時前でもまだ真っ暗であるが、寒さはあまり感じない。

 乗り込んだのは7時00分発の「みずほ600号」新大阪行、列車番号も発車時刻もキリがよくて気持ちいいが、新大阪への直通としてはこれが初発列車である。新大阪まで行く列車は「みずほ」の他「さくら」もあるが、「みずほ」の方がランクが上だから、そのグリーン車を取ってある。

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 横四列シートで、シートピッチもゆったりしている。茶系と木目調で統一された内装が、高級感をおぼえさせる。 

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 いつの間にか走り出していた。 鹿児島中央を出ると、すぐにトンネルに入る。内陸を短絡することで、在来線と比べてかなりの時間短縮が実現した。たまに谷あいにかかるとトンネルが途切れるが、まず車窓は愉しめない。やっと山地を抜けると、すぐ川内(せんだい)を通過する。
 このあたりで、アテンダントさんが紙おしぼりを配りがてら、検札と挨拶をする。この後も何かというとおしぼりを貰え、貯まっていった。なお、九州区間のおしぼりでは、袋にはJR九州のインターネット予約が宣伝されていたが、後の山陽区間では、男性向けエステになった。ビジネス客が多い区間、ということだろうか。
 

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 さらにトンネルを抜けて出水(いずみ)あたりまで来ると、ようやく明るくなってきた。九州とはいえ、今朝は冷え込みがきついのか、畑には真っ白に霜が降りている。
 次にトンネルが途切れると、肥薩(ひさつ)線を跨いで左手に八代(やつしろ)市街を見て、新八代を通過する。ここからは浜側に出て八代海に沿って走るが、わたしは右側に坐っているのでよく見えない。最初の停車駅熊本には7時43分に着いた。
 三割くらいしか埋まっていなかったグリーン席は、八割方塞がった。幸い、わたしの隣は空いたままである。一輌の半分しかないグリーン席だから、人数としてはさほど多くが利用しているわけではない。
 ここからもトンネルが多く、ちょっと地上に顔を出すと駅を通過する、という繰返しだ。新鳥栖(しんとす)で先行する「つばめ」を追い抜くと、博多南駅に気づかないまま、博多の到着放送が流れだした。


2.山陽新幹線 博多→新大阪 「みずほ」グリーン席

 博多で2分停車して、かなり客が入れ替わる。グリーン席でも継続して乗るのは数人だけである。直通は便利だが、特急料金などは合算となるので割高だからだろうか。それ以前に博多がそれだけ一大拠点ということでもあるが。
 乗務員も総入替えとなり、もう一度挨拶される。8時36分に小倉(こくら)を出ると、新関門(しんかんもん)トンネルに入る。一時間半で九州を走り抜けてしまうとは、新幹線の効果は絶大で、昔からは想像もつかないことだ。

 厚狭(あさ)では、レールスター型の700系を使用した「こだま734号」を追い越す。レールスターは、九州新幹線への直通が始まる前は、山陽新幹線の花形だった。この列車はほぼ各駅で上位列車に抜かれ、広島までの通過待ち停車時間の総計は三十分以上にもなる。哀れだが、ダイヤ編成の難しさを感じさせられる。
 山陽新幹線もまたトンネルの多い路線だが、九州区間ほどではない。時々のぞく山間の集落、それに徳山(とくやま)の工場群など、それなりに見どころがある。
 9時22分発の広島ではそこそこの乗車があり、半分以上の席が人を受け止めている。僅か十分ほど前を、東京行「のぞみ」が先行しているはずだが、「みずほ」の居住性を選ぶ人もいるのだろう。
 三原(みはら)では、今度は涙滴型の500系を使った「こだま732号」を追い越す。現在主流となっている、尖った先端形状を有する新幹線車輌デザインの、先駆となった車輌である。かつて看板列車だった車輌たちが、今は「こだま」に身をやつしてストイックに走っている。
 福山(ふくやま)を通過する時には、お城がすぐ左に見える。

 9時58分発の岡山でも一人グリーン席に坐ったのは、少々驚いた。もう終着も近いのだが。しかもその人は次の新神戸で降りていったのである。
 朝食が早く貧弱だったわたしは、二度めの食事をとることにして、鹿児島中央で買った駅弁を広げる。鶏のつくねが主菜の丼だが、雑穀がとりあわされており、デザート替わりの薩摩芋もほどよく煮られている。これを兵庫県あたりで口にするのも、「みずほ」ならではである。
 

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 ワゴンが来たので、食後のコーヒーを求める。
 カップには新幹線の案内が賑々しく印刷されている。粉砂糖とミルクは、ちゃんと紙ナプキンに載せてくれている。その上、次回使える割引券まで付けてくれた。次回山陽新幹線に乗るのはいつになるか分からないが。
 山陽新幹線のワゴンはかなり嵩高い。商品も豊富なのだろう。そういえば、開業時は夕方の「さくら」などで生ビールを供していたが、今もやっているのだろうか。JR西日本や車内販売の業者の彩図を見ても、生ビールには全く触れていないので、やめたのかもしれない。
 

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 長らく修繕中の姫路(ひめじ)城を左手に見ながらコーヒーを飲み、西明石(にしあかし)を通過すると、右手に明石海峡大橋の橋脚が遠望できる。内陸を走っている新幹線から見えるのだから、橋の巨大さが分かる。

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 神戸市内のトンネル区間に入り、新神戸に停まって六甲(ろっこう)トンネル、それを抜ければ新大阪が近い。
 10時44分、定刻に終着した。20番線に到着して、わたしたちが下車すると、待ちかねたように清掃作業員が車内に入っていく。僅か十五分後には、鹿児島中央行「さくら」として折返すのである。

 新大阪駅の20番線は、後から付け足して建設したホームで、そのためにコンコースに降りるまでに小刻みに階段を昇ったり下りたりしないといけなかったが、かなり段差は解決していて、エスカレーターなども完備した。
 わたしは、新幹線改札内の待合スペースに腰を下ろした。ここからは「のぞみ」で東京に向かうので、いくらでも便はあるのだが、ダイヤの乱れなどに備え、十分な余裕時間をとってある。予約しているのは、一時間あまり後になる12時17分発「のぞみ126号」なのである。
 余裕時間にはもう一つ魂胆がある。十一時から十二時まで、わたしが録音で出演しているラジオ番組が放送されるので、それをチェックする必要があるのだ。東海道山陽新幹線は、広島以東でトンネル内でもネットにつながるようになったので、車内で聴くこともできるが、やはり駅で静止した方が電波は安定するだろう。
 しかるに、静止状態でも、パソコンは無線LANになかなかうまくつながってくれず、スマホのテザリングでようやく接続した。が、それも途中で切れてしまったので、結局スマホそのもので受信しなければならなかった。


3.東海道新幹線 新大阪→東京 「のぞみ」グリーン車

 「のぞみ126号」は、8号車のグリーン席を取った。東海道新幹線は16輌編成のうち3輌、およそ二百席分がグリーン車である。「みずほ」の8輌編成中グリーン席が半車分二十四席しかなかったことを思うと、やはり客層の違いがあるものと思われる。
 しかし、この号車は定員の半分も乗らないまま発車した。発車時刻からいっても、駅弁を広げる人が多い。あちこちからいろんな匂いが漂ってくる。アテンダントさんがくれた紙おしぼりは、またあのエステチェーンの宣伝がなされている。
 わたしはつくね丼を食べたばかりなので、弁当は要らないが、座席ポケットには車内販売のメニューが入っている。東海道でもこれをやるようになったのだな、と思う。北海道や九州の特急では以前から、車内販売で何を売っているか、各座席に案内していたし、それによって売上げも伸びていたに違いない。ワゴンが来てから商品を探すのでは、億劫である。今更どうしようもないが、かつての食堂車でも、メニューを座席で見ることができれば、足を運ぶ人も多かったろうに、とかねがね思っていた。
 

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 名古屋を過ぎてから、ワゴンが来たので、わたしはバニラアイスクリームを買った。
 お姐さんは、「大変固くなっておりますので、暫く時間をおいてからお召し上がりください」と言って渡してくれた。
 こんなことを言われるのは初めてだが、たしかに車内販売アイスかちかち問題、というのは電車旅をする者にとって長年の懸案である。慣れない客のなかには、プラスチックの匙が折れてしまって苦情を言う客もいたのかもしれない。
 わたしも、十分ほど放置して、その間に写真を撮ったりした。

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 そうするうち、列車は富士山の麓に差しかかった。反対側の窓に見えているが、静かな車内でわざわざ席を移すのも憚られる。
 そう思っていると、車掌さんの車内放送が入った。
「ただ今、新富士(しんふじ)を定刻で通過いたします。進行左側に、富士山の姿が見えております」
 おかげで、カメラを構える人が続出し、わたしも左側の空席に移って、何枚か写真を撮ることができた。
 

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 新丹那(しんたんな)トンネルを抜けて熱海(あたみ)を通過すると、右側には相模湾が広がる。天気がいいから、初島(はつしま)もくっきりしている。在来線とつかず離れずの東海道区間だから、スピードはあまり出せないかわり、景色はよいのである。

 新横浜、品川(しながわ)と少しずつ人が減っていき、14時53分に東京に着いた。
 東京でも、クッションを一時間程度とってある。次に乗るのは、16時07分発の「はやぶさ17号」のグランクラスとなる。午後に出る下り「はやぶさ」はこれが最初なのである。14時56分発の「はやて39号」もグランクラスを連結しているが、あくまで最上位列車の「はやぶさ」にこだわる。でないと、今日まで待った意味がない。
 東京駅の改札内は、百貨店のように店舗が犇いている。一日いても飽きそうにないほどなので、一時間やそこら、どうということはない。恐らく、昔は手小荷物や郵便を扱っていたホーム下のスペースを活用したのだろう。ここで「はやぶさ」の中で食べるおつまみの類を仕入れることにした。目移りする中、候補を数点に絞っていく。
 何の店でもあることは分かっていたが、チーズの専門店まであったのには、正直なところ意表を衝かれる。冷蔵ケースの前で愛想よく接客するチーズソムリエさんに、赤ワインに合うまろやかな味のチーズを教えてもらい、山羊乳のチーズを買い込んだ。


4.東北新幹線 東京→新青森 「はやぶさ」グランクラス

 まだ時間があるので、東北新幹線の改札に入り、中の待合室に坐る。新大阪も含め、新幹線の中間改札は出たが、駅自体の改札は朝から晩まで一度も出ないことになる。それで困らないほど改札内に店や設備が整ってきた、ということでもある。
 「はやぶさ17号」が21番線に入ってくるのは、十五時五十二分頃と推測される。そんな案内や掲示はなされていないが、わたしのような者が時刻表をじっくり見ると、分かるしかけになっている。煩雑になるので解説は割愛するが。
 その時刻になったので、徐ろに立ち上がり、ホームに上がってみる。はたして、ちょうど列車が入線したところであった。

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 わたしが乗るグランクラスは10号車である。これは「はやぶさ」の先頭車で、車輌には隼を象った大きなエンブレムが描かれている。乗車口は運転室直後の扉だが、流線型の角度が鋭いため、扉部分は既に屋根が傾斜してきている。その扉形状までが、特別な車輌であることを主張しているようだ。 

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 その扉をくぐるように入っていくと、車内でアテンダントさんが丁重に挨拶して迎えてくれる。ともかくも自分の席に荷物や上着を置いて、改めてホームに出、写真などを撮る。グランクラスだから飲物類を買い込む必要はない。
 「はやぶさ」としては10号車が先頭だが、前に秋田行「こまち」の車輌が併結されている。「こまち」は在来線に直通するいわゆるミニ新幹線なので、「はやぶさ」とは規格が違うのだが、連結面に違和感がないよう、ボンネットの形状や高さが合わせてあるようだ。隣のホームには二階建てのMAXが停まっている。各方面への色とりどりの列車が発着し、ダイヤはかなり込み合っている。賑々しいが、東海道新幹線の統一美とどちらが好みかは、人によって分かれるだろう。
 この連結面はたいへん人気があり、子供連れや鉄道マニアが大いに群がっているので、撮影には苦労する。こんなに大きな新幹線車輌のつなぎ目がこんなに細い連結器で大丈夫なのか、と思うが、機関車のように一方的に引っ張るわけでもないし、しっかり繋げば支障ないのだろう。
 人波をかき分けるようにグランクラスの扉に飛び込んだ時は、もう発車一分前である。出入りするたびにアテンダントさんがお辞儀してくれるので、恐縮する。

 

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 改めて座席周りを観察する。
 新幹線初の横三列シートだから、大柄なわたしでもすっぽり包み込まれる。座面も背もたれも、自分に合うように位置や角度を調整できる。シートピッチも十分で、前の人が背もたれを倒しても圧迫感がないよう、デザインにも工夫がある。物を載せるテーブルも、肘掛けから斜めに引き出して広げるものの他、肘掛けの先端も、開いて小テーブルになるしくみである。
 

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 車内用のスリッパも用意されていて、履き心地も上々なので、早速それに替える。
 この他、電源コンセントは当然装備されているので、スマホを充電しながら使う。

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 各座席には、メニューが置いてある。無料で供される飲食物や貸し出してくれるアメニティの案内である。特に、ドリンクは飲み放題なので、助かる。
 アテンダントさんがおしぼりを配って、毛布や新聞の要望を訊いてくれる。やはりグランクラスとなると、おしぼりもちゃんとしたタオルであった。
 

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 すぐに軽食の希望を訊かれる。わたしはもう少し後にいただこうかと思っていたが、訊かれると欲しくなる。十時台に食べたつくね丼以来固形物は食べていないから、いい具合に空腹でもある。
 それで、和食を所望した。ほどなく運ばれたのは、包装紙こそシンプルなデザインだが、開けてみると、とりどりに鮮やかな料理が詰まった、それでいて腹にもたれ過ぎない内容の弁当である。 わざわざ軽食用の紙おしぼりも、改めて付いている。
 緑茶は、缶ではなく、温かいのをガラスの湯呑みに注いで持ってきてくれた。このあたりのひと手間で、差をつけている。

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 機内食のような感じで、量は少ない。実際飛行機の特別座席におけるサービスを参考にして整えた特典内容だろう。
 こんなサービスを嬉しく受けているうち、いつか大宮を出発していた。飲み食いに忙しく、注意しようと思っていた鉄道博物館も見逃した。

 東北新幹線も、仙台あたりまでは在来線にほぼ寄り添っている。が、やはり山の麓あたりをトンネルで抜けることで、用地買収と騒音問題を避けているところが多い。
 日も暮れたので、眺望はきかなくなってきた。仙台市街のネオンが窓に流れだすと、ムードとしても、アルコールを迎えてよさそうな感じになってきた。
 仙台を17時42分に出たところで、アテンダントさんにビールとおつまみを持ってきてくれるよう、頼む。座席にコールボタンも付いているが、一輌の中を二人のアテンダントさんが常に行き来し目配りしているので、それはあまり必要ない。
 ビールはさすがに市販の缶だが、グラスを添えてくれる。おつまみはおかきが主体であった。また新しい紙おしぼりを貰えた。

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 このおつまみだけではちょっと淋しいので、東京駅で買った物も拡げる。「国技館やきとり」というもので、軽食をいただいた後だから、そんなにボリュームは必要なく、ちょうど腹に収まる感じだ。味も悪くない。

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 呑んでいると、すぐ盛岡に着いた。18時24分着で四分停車である。その間に前の「こまち」が切り離され、秋田へ向けて先に出発する。それが遠ざかりポイントが切換わるのを待って、この「はやぶさ」も発車となる。ここまでを四分で済ませるのは、なかなか迅速な作業ぶりである。
 切り離しの様子を見に行こうかとも思っていたが、気分と坐り心地がいいので、面倒くさくなった。

 発車してから、アテンダントさんが、お飲物のおかわりはいかがですか、と声をかけてくれたので、赤ワインを頼むと、ハーフボトルとグラスが来た。ボトルの蓋はネジ式なので簡便でよい。ラベルはグランクラスのオリジナルで、出自はよくわからない。が、呑んでみると、口当たりはよい。
 東京駅で買ったチーズをつまみながらちびちびやる。
 

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 「はやぶさ17号」は、盛岡から先、いわて沼宮内(ぬまくない)だけを通過し、その次の二戸(にのへ)からは各駅に停まる。東京付近はダイヤが輻輳していた東北新幹線も、ここまで来るとさすがに列車本数も減るから、各駅の乗車チャンス確保のため停まらざるを得ない。実際、単線でも捌けそうなほどの頻度になるのである。
 盛岡から新青森までノンストップ、あるいは八戸(はちのへ)のみ停車の「はやぶさ」らしい「はやぶさ」もあるのだが、あいにくそれは午前発の便になるので、選択できなかった。

 八戸が近づき、ワインを半分ほど呑んだところで、もうアルコールは十分な気がしたので、アテンダントさんを呼び止め、アップルジュースを貰う。一気に飲み干したが、終点が近いからか、おかわりのお勧めはない。
 ワインボトルは栓をしてバッグに入れる。メニューには、飲食物の持帰りはご遠慮を、と書いてあるが、さすがにこれはいいだろう。

 19時28分、列車は終点新青森に到着した。ほろ酔いで荷物を片づけ、靴を履いてホームに降りる。アテンダントさんに挨拶してから列車の写真など撮る。 

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 快適なグランクラスの時間も終わったが、後日同じ「はやぶさ」の普通車に乗ったところでは、普通車もまた、新幹線の座席としてはずいぶんゆったりして坐り心地がよかった。

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5.新青森→青森 ~おわりに

 インターバルはあったものの、十二時間あまりの内地縦断の旅は無事終了した。新幹線の速さと快適さはもちろんだが、景色と気候の激変に、逆説的な意味で日本の広さを感じた。

 「はやぶさ」からは大勢の客が降りたのだが、青森駅までの連絡列車となる19時38分発特急「スーパー白鳥38号」函館(はこだて)行は、さっぱりとがら空きであった。乗継利用も少なく、青森の人も皆迎えのクルマなどで帰宅するらしい。
 この「スーパー白鳥」が函館行最終、つまり乗っていけば今日中に北海道に入れるが、函館まで乗りとおすのは、北海道新幹線開業まで待つことにする。
 僅かな客とともに淋しい思いで青森駅に降り立ち、駅前に出てみると、舗道は真っ白に染まり、風と雪が吹きつけている。滑らないようにそろそろと横断歩道を渡り、ホテルに向かわねばならなかった。

(平成26年1月乗車)

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