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備後一周JRの旅

INDEX

1.はじめに
2.広島→西高屋
3.西高屋→福山
4.福山→府中
5.府中→三次(臨時便)
6.三次→広島(快速「みよしライナー」)


1.はじめに

 仙台でもやったように、広島からも「青春18きっぷ」を用いてJR線をぐるっと一周して来ようと思う。これは、ほぼ備後を巡る旅ということになる。


2.広島→西高屋

 8時45分発の糸崎(いとざき)行に乗るつもりで広島駅のホームに上がると、一本前の27分発白市(しらいち)行が入ってきたところだった。休日とはいえ、朝の広島始発に乗り込む人が意外に多い。途中までしか行かないが、空席はあるので、とりあえずこれに乗ってみることにする。
 電車は、海田市(かいたいち)で呉(くれ)線と分かれると、瀬野川(せのがわ)沿いに勾配をぐんぐん登りはじめた。  

 山陽線の線路と国道2号とが寄り添って登っているが、山と山の隙間がだんだん狭まっていく。中野東(なかのひがし)や瀬野の駅でかなりの人が降りる。近辺に大学などもあるようである。
 瀬野からは有名なセノハチの峠越えになる。次の八本松(はちほんまつ)まで、鉄道としてはかなりの急勾配になるので、貨物列車は広島から後押し用の機関車を後部に連結する。役目を終えて坂を下っていく赤い機関車と擦れ違ったりする。八本松を少し過ぎた所で平坦になり、西条(さいじょう)の市街地が広がる。
 西条に近づくと、「三原(みはら)・糸崎方面はこの駅でお乗換えください」とアナウンスがある。この電車の終点はまだ二つ先の白市だが、乗換えの指示をするからには、何か意図があるのだろう。しかしわたしは天の邪鬼に乗り続けることにする。
 以前も同様に、三原方面に行くにもかかわらず白市行に乗ったことがある。その時は白市で降りて、途中下車して駅前を歩いたりしながら後続便を待った。白市では確か折返しのため下りホームに電車が到着したと思う。乗換えには階段の昇り降りを要した。それがあるから西条での乗換えを推奨するのかもしれない。
 そこで、わたしは西条の次の西高屋(にしたかや)で降りることにした。ここならホームが替わることもないだろう。ここでも下車客はけっこういたのだが、皆がすぐに改札を出るなか、わたしと同様上りホームに留まって、喫煙コーナーで煙草をふかしたりしている大学生風の二人連れがいる。同じく三原方面に乗継ぐのか、と思っていたら、吸い終わったら連れ立って改札を出てしまった。ずいぶん場馴れしているものだが、ホームから駅前を見ると、大学の名前を記した宣伝塔が建っている。駅の北方に大学のキャンパスがあるのだ。さっきの二人もそこの学生かもしれない。
 駅の近辺は、大学のある街にありがちな華やぎは感じられず、むしろ落ち着いたムードである。少し離れた所にCDレンタルショップが見えるくらいだ。そして、下りホームの向こう側、つまり南側はまったくの田園風景である。


3.西高屋→福山

 改札を入ってくる人は多いが、皆が皆、跨線橋を渡って下りホームに行ってしまう。買い物や用務も、広島を指向するようで、三原や福山(ふくやま)に向かおうという人はいない。本数も下りの方が多く、さっきの電車が白市で折返して来て岩国(いわくに)行として発車して行っても、まだ上りは来ない。ホームが替わらない、という意味では、この西高屋での乗換えを促してもいいはずだが、ホームやその周辺にあまりにも何もないので、西条を勧める、ということだろう。
 やがて9時28分発の糸崎行が来た。先頭車輌に空いた二人掛けがあったので、そこに坐る。
 白市を過ぎると、線路が大きく曲がりくねるので、一駅進むのにも十分前後かかったりする。河内(こうち)は昔の準急列車が停まった駅だが、現在は静まり返っている。
 むしろ、その次の本郷(ほんごう)の方が明るく開けている。線路が高架になって市街を見下ろすようになり、三原に到着する。この電車は次の糸崎まで行くが、その先へ行く岡山行はこの三原が始発なので、向かい側の電車に乗換える。以前は広島から岡山まで直通する電車も多かったが、現在は三原か糸崎で乗換えとなるケースがほとんどだ。どちらで乗換えるのが得策かは時間帯や便によって異なるので、アナウンスをよく聴いていないといけない。

 10時39分着の福山で下車した。ここで福塩(ふくえん)線に乗換えるのだが、少し待ち時間があるので、駅構内にある蕎麦屋で、「しまなみ街道そば」なるメニューを取る。えび天と山菜となめこが載った冷し蕎麦であった。


4.福山→府中

 十一時過ぎに、お城に面した福塩線ホームに上がる。2輌編成の電車が入ってきて、八割方の席が埋まった。11時18分に、終点府中(ふちゅう)に向けて発車する。福塩線は福山から塩町(しおまち)までの路線なので、その名がついているが、府中は途中の駅である。
 福塩線のこの区間は、元々軽便鉄道として大正時代に開業したのを、戦前に電化、さらに国有化したものである。小私鉄が造った線らしく、駅間距離も短く、カーブもきつい。府中に近づくにつれ、駅から駅まで一キロほどしかないような所も多くなる。市街も連続しているので、乗降も府中駅に集中せず、手前の高木(たかぎ)や鵜飼(うかい)で降りる人がそれなりにいる。府中市も、福山郊外の通勤圏に含まれ、駅から各方面の住宅地に向かうバス路線がある。

 府中から先は、国鉄が建設した非電化路線である。だから、打って変わって山間に入り、駅間距離も長くなる。いわゆる「汽車」の路線に換わるのである。非電化だから、当然電車は入れず、ここでディーゼルカーに乗換えることになる。
 沿線の人口密度もぐっと稀薄になるので、本数も減る。府中までは毎時一~二本の電車があるが、この先は僅か一日六往復しかない。通学生が主な客らしく、特に昼間の運転がない。何にしろ、府中発8時11分発の次は15時05分までないのだ。反対方向の塩町発も同様で、それではあまりに不便だからか、上下両方向とも、正午過ぎに臨時便が設定されている。
 この臨時便の運転日は、曜日などが一定せず、あまり法則性が見いだせない。沿線の学校の行事予定などを勘案しているようなのだが、学校の休み期間が運休というわけでもない。とにかく、今日を含んだ3月後半は毎日運転されるので、わたしもこの臨時便に乗ることになる。


5.府中→三次(臨時便)

 1輌だけの小型ディーゼルカーが、改札口から線路を隔てた2番線ホームに停まっている。これが塩町方面の三次(みよし)行臨時便になるらしいが、待合室の時刻表では、改札口に面した1番線発車となっている。1番線にはわたしが福山から乗ってきた電車が停まっている。その電車が折返し福山行となって発車した後、ディーゼルカーが一旦福山方に引き上げられ、改めて1番線に入ってきた。客を歩かせないために手間をかけている。このごろのJRではよくみられるようになった手法だ。
 「青春18きっぷ」のシーズン中だからか、わたしと同じく鈍行そぞろ乗り旅行の人が十人ほど、ディーゼルカーに乗り込んだ。また、府中市街で買物などしたらしい主婦も数人乗る。臨時便の運転日をチェックして利用しているのだろう。オールロングシートの味気ない車輌だが、便があるだけいいと思わねばならない。

 12時30分に発車、線路は芦田川(あしだがわ)が生成した谷筋に忠実に沿って、蛇行する。ささやかな集落が現れると駅があり、地元客を降ろしていく。河佐でそれが一変する。この先の芦田川は八田原(はったばら)ダムが造られていて、元の川筋と線路は湖底に沈んでいる。線路は付替えとなっていて、長大なトンネルで一気にダムの横をすりぬける。だから、ダム湖である芦田湖を車窓から望むことはできない。そのトンネルを出ると、左側から線路跡らしい道が合流してきて、備後三川(びんごみかわ)に着く。

 備後三川は世羅町(せらちよう)に属するが、かなり北東のはずれである。世羅町は、備後北部の比較的大きな町で、各種農産物が豊富に生産される所だが、中心部に鉄道は通っておらず、ここが町内唯一の鉄道駅となる。端っこに位置して一日数往復しか停まらないのだから、玄関口とは言いがたい。
 芦田川は、その世羅町の中心部の方から流れてきて芦田湖に注ぐのだが、線路は芦田川の支流を遡っていき、再び府中市域に戻る。
 ほんの少し平地が開けた所に、備後矢野(やの)という小駅がある。小屋といってもいい駅舎の中で、不似合いにも、蕎麦屋が営業している。列車の利用客だけで商売が成り立つとは思えないので、地元の客も立ち寄るのだろうか。餅の入った「田舎そば」が名物メニューであることが、車窓からも読み取れる。こけしなどの民芸品も展示されている。
 備後矢野を出ると、僅かずつだが土地が開けていき、右手に高校のグラウンドが見えたあたりで、ブレーキがかかる。寄り添ってきた芦田川の支流が左手に去る。

 上下(じょうげ)に停車し、客の半分ほどが入れ替わる。つまり、乗ってくる人もそこそこいるのである。府中市北部の市街であり、この福塩線はダムのあたりを通るややこしい経路だが、道路なら山中を突っ切って府中と上下とを直結するルートがある。ここで、三次からの上り臨時便と交換する。あちらはセミクロスシートで、前向きに坐れる席が少しだがある。
 上下で乗ってきた若い男性が、にこにこしながら運転席に近寄る。運転士と顔見知りらしく、運転士は、
「いよいよ新生活の始まりじゃのう」
 などと言っている。男性は大荷物を背負っている。この線で高校に通っていたのが、進学か就職で地元を離れるのであろうか。
 上下を発車すると、右手の市街から流れてきた上下川が線路に沿う。先ほどの支流と一キロも離れていないが、あちらは瀬戸内海、こちらは日本海に注ぐ全く別の水系である。分水嶺であることが「上下」の地名の由来だという。左側の中学校は、地図では「上下中」と表示されることになり、漢文の勉強のようだ。

 すぐに府中市域を出はずれ、三次市に入る。最初の大きな集落が甲奴(こうぬ)で、駅がある。市境は越えても距離が近いから、上下との行き来は盛んなようで、上下で乗った買物客や高校生が何人か降りる。駅舎には水原弘(みずはらひろし)と由美(ゆみ)かおるの有名な琺瑯看板が吊り下げられている。表面は綺麗に磨かれており、放置ではなく意図的な展示らしい。
 備後安田(やすだ)で上下川と別れ、狭い谷を西へ辿る。途中の対岸に、「まむし養殖センター」の看板が見える。そんなものに養殖するほどの需要があったのか。
 吉舎(きさ)、三良坂(みらさか)と駅を経るごとにだんだん町の規模が大きくなるが、その次の塩町、つまり福塩線の終点は、周囲にまとまった家並みもなく、単に芸備(げいび)線に合流するための駅、という感じである。それも、芸備線が福塩線を迎えに来るかのように大きく南に迂回してこの塩町に停まっているので、福塩線の線路の方が直線的で、こっちが本線のようだ。
 福塩線の旅を志したらしい老夫婦が下車しようとするのを、運転士は、
「ここで降りても何もないですよ。この列車が三次で折返し府中行きになりますから、三次まで行かれてはどうですか」
 と止めている。が、老夫婦は、何もなくてもその辺を散歩するから、と降りて行った。
 あの上下川は、あれから大いに蛇行するとともに多数の支流を我が物として、大きな川になっている。名も馬洗川(ばせんがわ)と変わって線路の北を並行している。三次の鵜飼で知られる川である。市街が開けてきて、八次(やつぎ)に停まると、あの大荷物の男性が運転士と懇ろに挨拶を交わし、降りていく。三次市内に移住するのだろうか。
 発車してほどなく、14時21分、終点三次駅に到着した。


6.三次→広島(「みよしライナー」)

 小雨が降りそうな雲行きではあるが、三次の町を散策する。馬洗川の堤に登って鵜飼に思いを馳せたり、路地を歩いたりする。最長片道切符の旅では二泊もした三次だが、二十年ほどの間に様変わりしている。というより、あの時は泊まっただけで、ろくに歩いていなかったことに気づく。
 さっきからお茶を飲みたい気がしているのだが、観光シーズンでもない日曜のこの時間に営業している店は少なく、なかなか入れる所がない。不本意ながら、駅に近いファミリーレストランでケーキセットなどをとる。ドリンクバーなどという慣れないシステムにとまどい、店員も少ないので訊くこともできずにいると、他のお客さんが親切にいろいろ教えてくれる。自分のどんくささが情けないが、後から来た人も同様にまごまごしているのを見、少し安心した。

 駅に戻り、16時02分発の芸備線下り快速「みよしライナー」広島行に乗る。中国地方最大の駅にして大幹線の山陽線との接続点たる広島駅へ向かう方向が「下り」なのは不自然にみえるが、芸備線の上り下りはそうなっている。あくまで東京に近づく方が「上り」なのである。今度は国鉄製の大きなディーゼルカーの二輌編成である。古い車輌ながら、その貫祿に安心感がある。昔ながらの四人掛けボックスを占領する。
 向原(むかいはら)のあたりで再び分水嶺を越え、瀬戸内側の川筋に沿い、広島に向かっていく。 
 各駅停車の列車ばかり乗継いできたので、通過運転が新鮮で爽快な気分である。以前は広島~三次間には急行列車が走っていたのだが、快速に格下げされた。おかげでわたしもこうして「青春18きっぷ」で乗れるのだが、料金収入を逃してはいないか、と心配になる。しかし、志和口(しわぐち)で三次行の上り「みよしライナー」と行き違うと、向こうは立ち客もある混雑ぶりである。急行ではああはならないだろう。
 志和口から下深川(しもふかわ)までノンストップで進むと、周囲は住宅団地が多くなる。マンションなどの建物が多くなっていくが、地形は複雑で、道路との交叉も、跨いだり潜ったり踏切だったりさまざまである。ここからは広島まで各駅に停まっていき、多くの客が乗ってくる。
 郊外電車の雰囲気になり、ダイヤも下深川からはきっちり二十分間隔に揃えられている。乗り降りする人たちも、この列車がどこからやってきたのか、快速なのか普通なのか、そんなことに関心はないようであった。 

(平成26年3月執筆)

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