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梅小路のSLと市電

 関西で生まれ育った鉄道ファンのくせに、なぜか梅小路(うめこうじ)には行ったことがなかった。いずれここにはJR西日本の鉄道博物館ができるそうなので、今更行かなくていいのかもしれないが、そうなる前の姿も見ておきたい。
 加えて、隣接する公園では、京都市電の展示や運転がなされている、ということなので、ついでにそれも見ようと思う。

 昼過ぎに、七条(しちじょう)通上にある梅小路公園前のバス停に着いた。公園の中には露店がひしめき合っていて、何かフェスティバルのようなものが催されているようだ。その露店群をかき分けるようにして奥に進むと、保存市電の乗り場があった。
 が、この時間はちょうど運転休止・充電の時間にあたっていた。それで、先に蒸気機関車館に行ってみることにする。

 喧騒の梅小路公園から嵯峨野(さがの)線のガードをくぐっただけで、ずいぶん落ち着いた佇まいの門と玄関が現れる。これが梅小路蒸気機関車館の入口である。
 この建物は、高架化する前の二条(にじょう)駅の駅舎を移築したものだという。わたしもこの駅舎に降り立ったことがあるはずだが、駅舎というのはそれほど差異のあるものではないので、他の駅の印象と渾然となって、定かでない。が、現存する最古の部類に属する駅舎なのだという。

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 自動券売機で入場券を買い、これを見せて館内に進むと、建物の中には、蒸気機関車に関する展示物がある。
 機関車の運転室、これは実車のC11形からカットしたものである。自由に出入りして機関士気分を味わうことができる。
 それに投炭練習機というのに興味を惹かれた。実際に機関助士が訓練に使っていたものだ。

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 この他にもジオラマや、出札口内の実物大模型、関連器具の展示もあった。

 扇形(せんけい)車庫の裏側を辿るようにして外に出てみると、客車が2輌展示されている。
 茶色の旧型客車は、鍵が掛けられていた。特定の日や時間に公開するのかもしれない。
 赤い客車は、国鉄の末期に旧型客車の後継とするべく造られたものだが、電車・ディーゼルカーへの移行が予想外に早く進んだものだから、天寿を全うせぬまま引退を余儀なくされた。これは休憩所として開放されており、クーラーも入っている。もっとも、この形の客車と蒸気機関車が、実際に営業運転で組んだことはほとんどないだろう。
 

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 扇形車庫の内外をうろつくのは、なかなか楽しい。

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 C58形は、お召し列車用のエンブレムを付けて展示されている。この形は中型でどこの線にでも入って行ける、使い勝手のいい機関車だったと聞く。
 蒸気機関車の代表格ともいうべきD51は、煙突から給水タンクまでが滑らかにつながった独特の形状のものが保存されているが、これは扇形車庫を離れて、営業線に沿った引込線に、現役の電車や電気機関車に伍して留置されていた。新博物館に入れる準備がなされているのだろうか。

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 館内には、往復1キロほどの線路を使って、蒸気機関車の動態保存運転が行われている。ちょっとそそられるが、遊園地のような客車を見ると、乗ろうという意欲が失せた。休日のことで大行列だったからでもある。
 向かい側の芝生広場から写真だけ撮っておく。  

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 蒸気機関車館を一通り観たところで、市電の運転再開時刻になったので、同館を辞して、公園の方に戻った。

 市電の展示館には、広軌1形が展示され、やはり休憩所として車内が開放されている。
 かつて京都市内の路面電車は、狭軌の京都電気鉄道、広軌(標準軌)の市営電車、二社局の路線が絡み合うように敷設されていた。両者の路線が重なる区間では、双方のレール幅に合わせるため、三本のレールが敷かれていた。それもこの展示車庫内で再現されている。
 狭軌車輌が、動態保存運転に供されている。わたしが着いた時は、まだ庫内で充電中であった。
 

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 充電、というのは、この車輌は架線から集電する本来の方式ではなく、リチウムイオン電池を搭載するように改造が施されているのである。
 トロリーポールも残されており、折返し時にはポール回しも行われるが、これはダミーと化している。
 運転再開に際し、電車が引き出されてきた。特に呼び込みなどもしていないので、乗る人は少ない。後部運転台から、庫内の広軌1形を望める。
 車内は明治村で観た京都市電と同様である。電気方式といい、路線規模といい、明治村には及ばないが、地元京都で動態保存されているということに、価値があるのだろう。そういう施設のない神戸の人間にしたら、羨ましい。名谷(みょうだに)車庫の保存車か、復元車輌を製造してもいいから、何とかならないのか、と思う。

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 これに乗って移動してみる。乗り心地も明治村と大差はない。
 反対側の終点、京都水族館に近い所にある降り場からすぐの所に、市電ひろばがある。
 ここには市電のもっと新しい車輌が4輌も静態保存されている。入ってすぐの所に置かれている500形は、「市電カフェ」として開放されている。

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 車内は原形を留めぬまでに改造されていて、まさにカフェのつくりになっている。椅子もカウンターもおしゃれだが、吊革などは元のままだ。メニューはドリンクが中心だが、地ビールのジョッキなどもある。

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 ここでコーヒーをいただいた後、他の車輌も見回る。
 700形は、売店として使用されていて、鉄道関連のグッズが主に売られている。800形は、その多くがワンマン改造されて1800形になったのだが、ここには原形のものが保存され、休憩所として開放されている。

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 そして、1600形もほとんど手を加えずに展示・開放されている。1600形は京都市電近代化のきっかけとなった名車600形をワンマン改造したものである。600形は、ドア位置を変更したり車長を伸ばしたりして2600形に大改造された車輌もあるが、1600形は単純にワンマン化しただけである。だから、600形としての原形をよく保っているのである。
 京都市電の晩年しか知らないわたしにとっては、このようにワンマンカーを示すオレンジ帯を巻いた姿の方が記憶と合致する。

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 こうして、梅小路の鉄道関連施設を見終えたわたしは、バスで京都駅の方に戻ることにした。梅小路公園と蒸気機関車館との間にバスの発着場が設けられていて、ここから京都駅や東山(ひがしやま)方面への直通便が出る。
 わたしは、京都駅前行の「水族館シャトル」に乗った。

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 梅小路公園を出ると、途中水族館の最寄りである七条大宮(ななじょうおおみや)のみに停車して、京都駅に直行する。途中、昔は狭軌電車の車庫があった三哲(さんてつ)を通る経路を取るのも、意図したわけではないだろうが、縁を感じた。

(平成26年7月訪問)

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