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南越線開業100周年特別展

 南越(なんえつ)線とは、かつて福井鉄道が運行していた、社武生(しゃたけふ)~戸(と)ノ口(くち)間の路線である。社武生は、国鉄武生駅に隣接していた。昭和56年に全線が廃止となったが、北陸の私鉄ローカル線としては、比較的遅くまで残った部類である。
 わたしは乗ったことはないが、写真でみると、メイン路線である福武(ふくぶ)線に比べて、小ぶりで素朴な車輌が行き来していたようだ。

 その南越線が、今年で開業100周年にあたる、ということで特別展が開催されたので、観に行ってきた。

 会場になったのは、JR武生駅の近くにある、越前市武生公会堂記念館である。公会堂として使われていた建物を、展示館に模様替えしたらしい。この建物自体が、文化財的価値がありそうな、風格を湛えたものである。
 その玄関に、160形電車を再現した実物大模型が展示され、来館者を迎えている。この「運転席」に坐って記念撮影もできるようになっていた。

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 主な展示は2階にある。階段を上がって廊下を進むが、この廊下の内装や照明にも、戦前の洋風建築によくある落ち着きが宿っている。
 展示室に入る手前の廊下にも、いろいろな資料が貼り出されている。

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 展示室内は撮影禁止だったので、その詳細をお見せすることはできないが、思ったより充実した内容であった。

 わたしが時間をかけて観たのは、戦前の武生駅時刻表である。南越鉄道(当時)の時刻はもとより、国鉄北陸本線の時刻もある。
 ある程度接続が考慮されているが、待ち時間は長い。そして、北陸本線の列車に接続しない南越鉄道列車も多い。つまり、南越鉄道の方が本数が多かったのである。幹線鉄道とローカル鉄道との関係からすると、近年の感覚とは逆である。
 国鉄の武生駅に停車する列車は、上下とも十本に満たない。深夜帯に停まるものもあるから、ほとんど日常生活に用いる交通機関としては機能していなかったのだろう。そして、上り列車の行先が、神戸・明石(あかし)・姫路(ひめじ)などとなっているのも、現代からは考えられないようなことである。敦賀始発の新快速がその方面に直通するようになっているのは、歴史の再現と言えなくもないが。

 切符や制服、駅名標、その他のグッズなど、こういう展示には欠かせないものが揃っているが、驚かされるのは、そのほとんどが個人蔵のものであることだ。それらを、廃止から三十年以上経つ現在まで、大切に保管している人がいたこと、それらの所在が把握されていること、そしてそれをこの展示のために快く貸し出してくれていること、いずれをとっても、地域の鉄道に対する愛着を感じずにはいられない。
 福井鉄道の車輌で廃車になったものも、個人宅に引き取られて静態保存されているケースが多い。家に土地があるからでもあろうが、やはり鉄道への温かい情が伝わってくる。

 また、模型のジオラマが二つも展示されている。
 一つは、武生駅付近を模したもので、国鉄・JRの長い編成の車輌も走っている。一応、南越線が現役だった頃を想定したレイアウトだが、そこを、南越線の貨物列車、ディーゼル特急「白鳥」、そして特急「サンダーバード」が、時空を超えて一緒に走っている。
 もう一つ別室にあるジオラマは、見学者が操作できるようになっていて、富山のLRT車輌が動いている。こういう仕掛けには金もかかっているはずだ。この展示室には、福井鉄道の現役車輌全てのタイプがNゲージ模型となって展示されていて、主に子供のご機嫌をとる部屋になっている。この特別展が、決して懐旧趣味で開かれたのではないことを窺わせる。

 南越線の線路敷が、どの程度残っているのかは知らないが、やはり北陸新幹線のことを考えると、何とか新幹線の南越駅(仮称)まで復活できないのか、と思う。
 南越駅は現在の北陸線と離れた場所に設置されることになっているが、旧南越線に近い場所になるはずだ。だからこそ連絡線としての復活を望むのだが、これを福武線とも直通運転すれば、鯖江からも便利になる。
 しかし、実際の南越駅への連絡は、従来の例から考えれば、武生・鯖江両駅から申し訳程度に路線バスが運行されるのみになると予想される。一応新幹線と接続させるのだろうが、早朝深夜の新幹線便に接続するバスは設けられないだろう。このバスを、越前・鯖江両市のコミュニティバスと連携させ、直通運転すれば便利なのだが、そんなこともしないだろう。
 それどころか、連絡バスすら設けない可能性もある。何にしろ、高速バスの停留所がある武生・鯖江両インターへも、路線バスもコミュニティバスも運行しておらず、自家用車やタクシーで行くのが当たり前とされているのだ。結局、第三セクター化される在来線列車で福井か敦賀に出るのが早道、ということになりかねない。

 将来を憂慮しつつ、1階の常設展示も覗いてみる。武生は越前国府が置かれていた地であり、史跡が多い。それに関する展示がいろいろとあって、特別展に比べれば地味だが、それなりに見応えがある。
 これまで、武生にこういう施設があることを迂闊にも知らなかった。

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(平成26年8月観覧)

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