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一部不通の日高線と周辺のバス

 北海道の日高線方面に出かける用事があった。
 JR日高線は、昨年(平成27年)に相次いで発生した土砂崩れにより、鵡川(むかわ)~様似(さまに)間が不通、バス代行となっている。列車が運行されているのは、苫小牧(とまこまい)~様似間全線146.5㎞のうち、苫小牧~鵡川間30.5㎞に過ぎない。
 バス代行が一年半以上も続いているので、列車が走らないことが常態化しつつあると思われ、この代行バスの乗場も、各駅前に寄るのが基本であったのが、トータルの到達時間を短縮するため幹線道路上に移行する傾向にあり、また便数やダイヤも利用実態に合わせて手直しがくり返されている。
 これは、かつて正面衝突事故によって運行停止命令が出てバス代行となった、旧京福(けいふく)電鉄福井支社の各線と状況がよく似ている。地域を挙げて、ローカル鉄道のバス移行の是非を社会実験しているようなものであることも。
 そのあたり、興味を惹かれるので、様子を見てくることにした。行くのは休日なので、普段の状態までは見られないが。

 実は、日高線のほぼ全線に並行して、道南(どうなん)バスによる路線バスも走っている。この点は京福とは異なるが、その存在も気になるところである。併せてその路線バスにも乗ってみたい。

 まず、苫小牧駅前発9時07分の静内(しずない)行道南バスに乗る。高速バスや貸切バスにも使えるような、リクライニングシートの一扉車が来た。北海道の中長距離路線ではよくある。最前列の席は荷物置き場となっている。長距離利用が多いのだろう。
 苫小牧駅前で乗ったのは、わたしを含めて三人、その後市街の停留所で乗った客もあって、十人ほどになった。が、職訓センター通りという停留所で大量に下車があり、結局残ったのは駅前で乗った三人だけである。そんなに職業訓練に行く人が多いのか、と思ったが、実はこの停留所はイオンの前に位置するのである。その割に地味な名前だが。
 三十分近く走って、まだ「沼(ぬま)ノ端(はた)」という地名を冠した停留所が続いている。沼ノ端は、JR室蘭線だと苫小牧の次の駅である。駅間距離の長い北海道とはいえ、これは意外である。
 JR日高線は沼ノ端の手前で南に分岐してしまうため、郊外の住宅・商業地である沼ノ端地区には駅がない。とはいえ、地区の南側を掠めてはいるのだから、駅を設ければ利用がありそうである。内地なら、こんな立地にはすぐ、新駅を、という声が上がりそうだ。

 路線バスは、「浦河(うらかわ)国道」と通称される国道235号を基本的に走り、時々脇道に逸れて集落に立ち寄ったりする。鵡川駅前に着いたのは、10時04分であった。
 苫小牧~鵡川間の所要時間は、JR列車のちょうど倍くらいになるが、その分苫小牧市内できめ細かい停留所があるので、利便性は一長一短であろう。本数は、路線バスが一日四往復、鉄道が八・五往復となっている。

 このまま静内まで乗ってもいいのだが、鵡川で一旦降りた。朝が早かったこともあり、何か食べようと思ったのである。鵡川はシシャモで知られる街である。が、市内の店では、旬を外れているということで、生シシャモの寿司などは食べられなかった。スーパーで適当なものを買って駅に戻り、「むかわ交通ステーション」の看板がかかった駅の待合室で食べる。
 その後、膝の上でノートパソコンなど触っていると、客のおばさんに「駅の方ですか?」と声をかけられた。鵡川は現在のところ終点、かつては急行も停まった駅だが、無人駅になってしまった。

 ここからも、路線バスで進む。静内行は夕方までないが、途中の富川(とみかわ)を通る平取(びらとり)行のバスが12時25分に鵡川駅前を出る。まずそれに乗る。

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(写真は、鵡川駅前に着く平取行道南バス。後方には待機中の酒井運輸のJR代行バスが見える)

 平取は、富川から沙流川(さるがわ)沿いに内陸に入った所にある町だが、昔から町の中心に鉄道が通ったことはなく、道南バスが主要な足だが、本数は少ない。主にクルマの生活なのだろう。
 これに乗って、富川中学校前で降りる。こんな所で降りたのは、スマホのナビアプリに従ったからで、平取から来る静内行に三十分ほどの待ち時間で乗継げるのである。クルマがあまり通らない国道沿いに、途切れ途切れに並ぶ店、電話局の残骸などがあるだけの所だ。再び訪れることはありそうにない。

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(写真は、富川中学校前停留所付近の風景)

 あまりに何もないので、富川の町の中心の方へ歩いて戻る。次の停留所、富川北には、待合小屋があったので、ここで待つことにする。地元の自治会あたりが整備した待合小屋かと思ったが、この後も道南バスの各地停留所で同じ規格の待合小屋を見たから、雪国ならではの設備としてバス会社が用意したものらしい。
 この近辺にもシシャモ料理の看板を出した店が多い。
 13時20分発の静内行が来た。苫小牧からのバスに比べればちょっと見劣りするが、それなりに大きなバスだ。

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(写真は、富川北停留所の待合小屋と、そこに着く平取からの静内行バス)

 乗っていたのは二人、この富川北でわたしともう一人が乗った。門別(もんべつ)の町内で二人降り、二人になって、後は静内まで誰も乗ってこない。
 今日の用務先は新冠(にいかつぷ)だが、宿は静内にとったので、終点まで乗る。静内の中心街、というか、賑わっている地区は、国道沿いの末広町(すえひろちよう)付近で、イオンを初めとする大規模なロードサイドショップが建ち並んで、優駿の町のイメージとは全く異なる、内地でもよくある地方都市郊外の光景である。唯一の相客であった女性客も、末広町で降りてしまい、終点の静内駅前まで行ったのはわたし一人だった。

 駅舎の正面に、路線バスとJR代行バスの停留所ポールが仲よく並んでいる。
 暫く見ていると、ここからさらに東に向かう、様似行代行バスが発車して行った。静内以東の代行バスは、JR北海道バスが担当している。様似に営業所があり、浦河・えりも方面に路線があるからだろう。

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(静内駅前の停留所と、JR北海道バスの様似行代行バス)

 静内は、わたしが様似を起点とする最長片道切符の旅をした時、最初に途中下車した駅で、駅前で唯一空いていた何でも屋さんで、ひじきご飯を主食とする弁当を買って夕食にしたのを覚えているが、それらしい店は見あたらない。

 静内駅近くのホテルにチェックインして、改めて新冠に向かう。新冠は、日高線でいうと、苫小牧方面に一駅戻った街である。
 16時05分に鵡川行の代行バスが発車する。酒井(さかい)運輸という、静内にある会社のバスである。この酒井運輸は、馬を運ぶ背の高いバス、馬匹車(ばひつしや)も所有していて、滞在中何度か走っているのを見かけた。あの車自体が巨大な馬のようにも見え、ユーモラスだ。
 その直後、16時11分に道南バスの苫小牧駅前行が出る。わたしが朝苫小牧から乗ったあの車である。

 代行バスと路線バスが数分の間隔で雁行するのは面白い。どちらも日に数えるほどの便しかないのだが、客の流れに合わせてダイヤを組むと、こうなるのだろう。
 これなら、どちらか一方に統合してもいい気もしてくる。バスになると運賃が高くなるのでは、という懸念があるが、新冠まではどちらに乗っても210円で同じである。富川までも鵡川までも、ほぼ同じ額になっている。道南バスがJRを意識した運賃設定をしているのだろうが、ますます統合する方が効率的では、と思えてくる。
 もっとも、高校生の通学定期は、おそらく割引率が異なってくるだろうが。

 わたしはどっちに乗っても新冠に行けるからいいのだが、用務先へは道南バスの停留所が僅かに近いので、道南パスに乗る。代行バスは乗客ゼロで発車し、道南バスはわたし一人だけが客となった。末広町で五人ほど乗る。
 道南バスは途中、国道から山の方に折れて、中腹にあるリゾート施設である「レ・コードの湯」に立ち寄るので、新冠までは代行バスよりも時間がかかる。
 それぞれの性格と事情で路線やダイヤが設定されているから、やはり統合は難しいだろうか。

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(写真左は酒井運輸のJR代行鵡川行バス。右は道南バスの苫小牧駅前行で、わたしが苫小牧から鵡川まで乗ったバスの折返し)

 新冠の用務先は、レ・コード館である。新冠町は、アナログレコードの収集・保存に町の事業として力を入れており、その展示館がレ・コード館なのである。道の駅も併設されていて、新冠観光の拠点となっている。

 用を済ませた後、新冠駅に行ってみた。
 地方のローカル駅に多い瀟洒な駅舎である。「新冠」と駅名が掲げられているのはホーム側で、駅前広場に面する方には「出会いと憩いのセンター」と記されている。こういう名目をつけて地元自治体などが無人化された駅舎を維持するのは、鵡川とも共通する事情であろうか。

 それにしても、列車の来ない線路やホームというのは、廃線跡とも異なる侘びしさが漂う。

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(写真は、JR新冠駅の駅舎とホーム)

 この日の新冠は、「にいかっぷふるさとまつり」という夏祭りが開催中である。駅前広場と、隣接する農協駐車場には、露店が多数出ていて、賑わっている。
 普段なら駅前広場に代行バスが発着するのだが、祭りの間はバスが入れないので、踏切を隔てた路上に臨時乗場が設けられている。特別ポールが立てられているなどではなく、道南バスの新冠本町停留所に一枚時刻表が貼られているだけで、見過ごしてしまいそうになる。

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(写真は、新冠駅舎に貼られた代行バス乗場案内と、代行バス臨時乗場となった道南バス新冠本町停留所)

 わたしは、夏祭りが終わる頃まで新冠に滞在し、新冠21時23分発の静内行最終代行バスで静内に戻ることにしていた。
 ところが、遺憾ながら上の写真にある時刻表が、二十一時過ぎにバス停に行った時には、既に剥がされていた。確かに祭りの後片付けが始まり、交通規制も解除されようとしているところだが、祭り帰りの人が数人バス停に集まってきている。そしてわたしたちは、「ここでいいんですよね?」と不安げに言葉を交わした。わたしはスマホに収めた上の写真を見せて、「いいはずですけどね」と話したりした。
 誰が剥がしたのかは知らないが、終バスがまだ出ていない、しかも最もその時刻表が必要となるタイミングを前に、なぜ剥がすのかと思う。それだけ代行バス、ひいてはJR日高線の存在感がないということなのだろうか。

 幸い、二十一時十八分頃に、酒井運輸のバスがやって来て、この臨時停留所に停まった。乗場が分からなかったのか、発車間際に駆け込んできた若い女性もいる。既に乗ってきた客も含め、七名の乗車で発車する。
 代行バスは、最も便利そうな末広町にはもちろん停まらず、静内駅に直行した。バスに料金箱はなく、新冠からのJR運賃210円は、静内駅構内にある箱に入れるよう、運転手さんに言われる。

 翌日、静内からの帰りも、代行バスを利用した。
 静内駅で帰りのJR切符を買った。駅に列車は発着しないのに、窓口が営業していてこういう切符が買えるのは、不思議な感じがする。
 列車が来ないホームに出る改札口も開いている、というか閉める扉がない。入場券も発売していて、ホームに踏み出してしまうと入場料金が必要になるから、内側からホームを眺める。やはり手持ち無沙汰なホームはどこか存在感が霞んで見える。

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(写真左は、この時使った切符。右は改札口から見たホーム) 

 静内駅構内には道南バスの案内所を兼ねた売店があり、九時からの営業である。開店を待って昼食にするパンとお土産を急いで買い、駅前のバス停に向かう。
 静内発9時07分発の鵡川行は、樽前(たるまえ)観光のハイデッカー車である。ずいぶんいい車輌を充ててくれている。ドアの前に立っていた運転手さんが、わたしの大きなキャリーバッグを見て、
「苫小牧まで行きますか」
 と嬉しそうに言った。が、トランクにバッグを収納しようとは言わなかった。その必要がないことが分かっていたのだろう。わたしは最前列の席に座り、隣席にバッグを寝かせた。

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(写真は、静内で発車待ちの樽前観光のJR代行バス鵡川行)

 鵡川行は、わたし一人を乗せて発車した。
 路線バスと同様、主に国道を行くが、もちろんJR駅に対応する箇所にしか停まらない。駅前に入るのが基本だが、道路事情などで入れない駅は、道路上に停留所がある。当然、踏切を何度も渡るのだが、列車が来ないと分かっていても、バスはきちんと一時停止する。バスだけでなく、どのクルマもそうしている。
 問題の土砂崩れが発生したのは、主に厚賀(あつが)~大狩部(おおかりべ)間だが、ここは急峻な地形ゆえか、国道は築堤上に新道が設けられ、線路と離れる。代行バスは旧道に入り、大狩部の停留所は、新道の下をくぐるトンネル歩道の入口に設けられていた。トンネルの向こうに駅があるのだろう。
 厚賀のように、停留所によっては、仮設の待合小屋が設置されていたりする。
 厚賀を出て暫く行ったところで、静内行代行バスと擦れ違う。向こうには十人程度の客が乗っているのが見える。

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(写真左はトンネル入口に設けられた大狩部停留所。右は簡易待合室のある厚賀停留所) 

 富川の街にさしかかると、交叉点を隔てて前方のバス停に、大きなキャリーバッグを携えた人が数人待っているので、やっとこのバスに他の客が乗るのか、と思ったが、バスは交叉点をあっさり左折してしまった。富川の駅は、国道の通る中心街からは少し離れた旧市街に位置するので、脇に逸れるのである。
 さっきの客は、札幌行の高速バス「ペガサス」を待つ客だったようだ。昨日の夕方といい、どうも路線バスと代行バスは同じような時間帯にならざるを得ない。
 富川では高校生の女の子が一人乗った。運転手さんとは顔見知りのようで、ずっと二人で雑談している。

 富川から鵡川までは、二駅で三十分もかかるダイヤので、なぜなのかと思っていたが、途中にある汐見(しおみ)駅が、国道から大きく離れた海岸部に位置しており、富川や鵡川から直接通じる広い道がないため、国道を折れ、原野の中の地方道を延々往復して立ち寄るのである。
 汐見駅のそばには、数十戸の家が肩を寄せ合っている。バスも通じていない集落にとっては、駅が生命線であった時代もあったろうが、このバスに乗降はない。
 舗装もされていない狭い道で切返しをくり返して、元来た道を戻る。ここまで直行ルートを外れている場合、その駅のための代行手段を別途設けたりすることもあるのだが、そこまでの需要もないのか、そうなっていない。おかげで、のどかな寄り道を愉しむことができた。

 定刻よりやや早く、鵡川に到着した。
 ここからはやっと列車に乗れることとなる。ポイントの関係で、駅舎から離れた方の下りホームに折返し列車が発着するので、踏切を渡らないといけない。上下線のホームがずれた位置にあるため、けっこうな距離を歩く。これだけ長期の折返しなら、駅舎側に列車を着けるようにできないものだろうか。
 代行バスから乗り継いだのは二人だけだが、鵡川から乗る客が多く、一輌の苫小牧行ディーゼルカーは全てのボックスが埋まった。

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(写真は、鵡川駅に停車する折返し苫小牧行)

 その状態のまま進んだが、苫小牧の一つ手前となる勇払(ゆうふつ)では多数の客が乗り込んできて立つ人もでた。周囲には工場や住宅が多い。沼ノ端の住宅街も空しく望んで通り、すぐに室蘭線に合流するが、それからも長らく直線の線路を走る。
 気持ちよくはあるが、先のイオンのすぐ裏手も通る。ここから苫小牧まで三キロ以上もあるのだから、室蘭線ともども駅を設ければ便利になるだろう。イオンだけでなく、公共施設や学校もこの付近に多いのである。
 しかし、やっぱりクルマ社会なのであろう。そんな話はないようである。 

(平成28年7月乗車)

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