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臨時特急「あそぼーい!92号」門司港行

 長崎に出かけた帰り、ちょうど運転日に当たっているので、博多(はかた)~門司港(もじこう)間で臨時特急「あそぼーい!」に乗ってみることにした。
 「あそぼーい!」は、通常なら熊本から阿蘇山(あそさん)方面に向かう豊肥線で運行されている観光特急である。が、平成28年4月に発生した熊本地震で豊肥線の一部区間が不通になっているため、本来の場所で運転できない。
 路盤ごと流失した区間もあり、復旧には時間がかかりそうだ。やはり乗り鉄としては災害による不通は心痛むので、「あそぼーい!」も豊肥線で運転される日が早く来てほしいと願う。
 その思いはJR九州も同じだろうが、転んでもただでは起きないのがJR九州である。「あそぼーい!」を門司港~博多で臨時運行することをいち早く決定した。利用しやすい花形区間で運転し、観光客にも地元客にもこの車輌に親しんでもらおう、という意図であろう。
 わたしも、この運転区間のおかげで、帰途に無理なくこの列車の試乗を組み込むことができた。

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 前座扱いするのは申し訳ないが、長崎から博多までは、「白いかもめ」車輌で運転される「かもめ8号」のグリーン席で移動した。下左の写真で左側に停まっているのが「白いかもめ」である。
 グリーン車は最後尾だが、一番前の席が指定されていたので、壁に向かって坐る。テーブルも広く、絵なども飾られていて、圧迫感が全然ないのは、さすがのデザインである。ちょっとしたコンパートメント感覚ですらある。

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 さて、博多に着いてちょっと用を足した後、小倉(こくら)方面の特急が主に発車するホームに上がると、既に「あそぼーい!」の発車案内が出ている。

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 いよいよ、特徴あるデザインの先頭車から、「あそぼーい!92号」門司港行が入って来た。
 車体には、この車輌を中心にJR九州を象徴するキャラクターとして使われている「くろちゃん」という犬が描かれている。
 わたしが乗るのは、先頭4号車の最前部パノラマシートである。

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 扉でアテンダントさんに迎えられて、車内に入ると、まず一般席がある。くろちゃんがあしらわれた暖簾をくぐって進むと、ラウンジである。ソファやベンチが設けられていて、憩うことのできるスペースだ。JR九州の観光列車、そして一部の特急にも、うまくこういう空間を設けている車輌が多いので、ほっとする。
 さらにその先にあるパノラマシートに向かう。

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 パノラマシートは、椅子自体にはそんなに高級感はなく、むしろ素朴なデザインである。しかし、横三列独立シートなので、ゆったりはしている。何よりも全面展望が身上の席で、普通車扱いながら、割高の料金が設定されている。

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 わたしは進行方向右側の最前列一人掛けという最高の席である。この指定券を駅で買うのは、ちょっと苦労した。パノラマシートは指定券の券売機には入っておらず、有人窓口に行かないといけないが、一般席とは別列車扱いで「あそぼーい!パノラマ」という列車名を入力(選択)する必要がある。個室寝台やカーペットカーなどと同様の扱いだ。
 そんなことを、JR九州のサイトにある「あそぼーい!」の席番表など参照しながら窓口の駅員さんに説明し、どうにかこの席の指定に成功した。二週間ほど前でも空いていたから、わりあい間際に指定券を買う人が多いのかもしれない。

 キャリーバッグはパノラマシート入口にある荷物棚にすっぽり収納し、わたしは車内探訪に出かけた。
 3号車には「くろカフェ」と呼ばれるビュッフェがあり、営業の準備をしている。また子供が遊べるスペースや図書室もある。ここでは、走行中にアテンダントさんが遊び相手や読み聞かせをしてくれるそうだ。

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 この3号車の座席は、「くろちゃんシート」という1.5人掛けシートが九つ並んでいる。親子連れが利用できるようにしているのである。

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 いろいろ楽しい設備はあるのだが、わたしは自席が最高の席なので、結局発車してからは動く気にならなかった。
 車内放送は、「自由席特急券ではご乗車になれません」とくり返している。この区間は特急の本数も多く、気軽に特急の自由席に乗る人が多いので、注意を促しているのだろう。それに、途中で定期特急に抜かれるので、急ぎの客に誤乗されても困る。

 博多を発車してすぐ、早速にも大分からの特急「ソニック」と離合する。香椎(かしい)付近では、香椎線のディーゼルカーと行き違う。複線区間でコンテナ貨物の機関車が来るのは、なかなかの迫力である。 

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 こういう前面展望を愉しんでいると、検札が来た。車掌さんは男性だが、子供に対してはおどけた口調で話しかけたりして、列車の性格を十分に心得た立ち居振る舞いである。
 わたしは、乗車券が小倉から新幹線で本州に向かう経路になっているので、小倉から門司港までの飛び出し乗車区間の乗車券を作ってくれるよう、車掌さんに頼む。至って愛想よく発行してくれる。

 平日ということもあって、列車全体では三割程度の乗車率である。やはり家族連れが多いようで、アジア諸国からの観光客も多い。一般席から入れ代わり立ち代わりパノラマシートにやってきては、暫く乗り心地を試す、といった人が多い。
 車掌さんはちゃんと目配りしていて、パノラマシートを指定されていないのに居すわる人や、最前部にかじりつく子供には、頃合いをみてやんわり声をかけて、自席に戻るよう促している。このへんも、ノウハウが確立しているように見うけた。
 香椎で、わたしの横の二人掛けの方に、初老の紳士がアテンダントさんに、こちらのお席です、と案内されて入って来た。パノラマシートに試乗したくて、窓口で頼んだ、と話している。結局、きちんと指定を受けてパノラマシートに坐ったのは、この人とわたしの二人だけのようである。家族連れや外国の人は、パノラマシートの買い方に不案内、というか、どういう座席があるかもよく分からずに乗っているのかもしれない。

 アテンダントさんが、よろしければカフェから何かお持ちしますが、と声をかけてくれたので、有機栽培コーヒーと大人プリンを頼む。プリンには大人プリンとこどもプリンの二種類があり、これもまた親子連れで愉しめるようになっているようだ。
 揺れる車内でも扱いやすい形にして持ってきてくれた。折り畳み式テーブルも付いているのだが、最前列の役得で、ダッシュボードをテーブル代わりに広く使う。大人プリンは、ラム酒の香りがかなりきつい独特の味であった。

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 これらに添えて、アテンダントさんが乗車証明書をくれた。くろちゃんのスタンプのほか、手書きのメッセージも添えられているのがよい。

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 こういったデリバリーは、パノラマシートの特権らしい。これを持ってきたついでに、アテンダントさんと暫し雑談する。
 門司港で降りた後、門司港レトロを歩いて焼きカレーを食べる、という予定を告げると、お勧めの店を教えてくれたりする。この「あそぼーい!」についても、10月からはハウステンボス方面に運転するので、それも是非乗りに来てください、と勧められた。

 海老津(えびつ)で運転停車して、定期特急と快速を先に行かせ、ゆっくり動きだす。
 折尾(おりお)に停車する。折尾には駅弁「かしわめし」が伝統の立売り方式で売られているはず、とホームに注目すると、果たして立売りのおじさんがスタンバイし、列車に向かって手を振っているのが見える。焼きカレーのためにお腹を空けておかないといけないので、わたしは買わないが、6分停車なのは、駅弁を買う人に配慮しているのだろう。買わないまでも、客もアテンダントさんも、思い思いにホームに降りて散策したりしている。

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 折尾からの北九州市内区間も、意外に地形は複雑である。橋梁やトンネルは、前面展望のアクセントである。
 小倉では、通常の列車と異なり、主に博多方面の下り列車が発着するホームに入る。ホームにラーメンやかしわうどんのスタンドが見えるのが、いかにも九州である。

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 長崎もそうだったが、門司港も行き止まりの終点である。これ以上どこへも行きようのない終着駅というのは、なかなか情趣がある。それをかぶりつきで見ていると、なおさらだ。
 門司港レトロのとり組みに合わせ、門司港駅も何かと古めかしい演出がなされている。ホームの駅名標も、国鉄時代を思わせる仕様で、わたしには懐かしい感じがする。

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 駅はなおも改修工事中で、その工事を見学するためのデッキも設けられている。建築関係の人にはこたえられないだろう。
 また、洗面所・便所に至るまで、レトロが貫かれているのがよい。

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 焼きカレーを食べて駅に戻ってくる。普通電車で小倉に向かうためである。
 ホームは、付け根、つまり改札口に近い方3輌分くらいは、電車に合わせて嵩上げがなされているが、その先は昔の客車時代のまま、低いホームとなっている。もちろん、意図的に残しているのだろう。
 そして、「あそぼーい!」の車輌は留置線に引き上げられているのが見える。黒っぽい車輌なので、こうなってしまうと、影が薄くなる。

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(平成28年9月乗車)
 

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