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広島行「ドリームスリーパー」~ ゼログラヴィティシート

 中国バスは、広島県福山(ふくやま)市を拠点にするバス会社だが、平成24年から、横浜方面の夜行バスに、非常に豪華な車輌を投入し、注目を集めている。
 我が国の路線バスとしては最高レベルと言ってもいい、という評判を聞き、是非とも乗ってみたいと思っていたのだが、北陸に住んでいるとなかなかこの区間の夜行バスに乗る機会がなく、無理やり作るしかなかった。ようやく先日、関東・中国・九州に連続した日程で所用があって、この路線を旅程に組み込むことができた。

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 横浜~広島間の「ドリームスリーパー」というのがこのバスの愛称だが、定員はなんと14名だ。この人数でバス1台を占有するのだから、贅沢になるわけである。問題の最高のシートは、バスには珍しくほぼ個室といってもいい「ゼログラヴィティシート」と銘打たれたものである。
 わたしは当初勘違いしていて、「ドリームスリーパー」車輌の全ての席が「ゼログラヴィティシート」だと思っていた。それで、普通に予約サイトで席を取ったのだが、後でいろいろと中国バスのサイトなどを読んでいると、「ゼログラヴィティシート」は前方の4席だけで、他は「エグゼクティブシート」という席であった。
 「エグゼクティブシート」も、凡百の高速バスに比べれば、格段に快適なのだが、どうせなら最高の座席に乗りたい。「ゼログラヴィティシート」はサイトでの予約はできないことも分かったのだが、わたしの予約した「エグゼクティブシート」も、残席は2席程度しかなかったはずだ。
 これはもう、「ゼログラヴィティシート」は埋まってしまっているに違いない、と悄然としたが、訊いてみないと始まらない。わたしは中国バスに電話して、案内嬢に空席状況を尋ねた。ら、なんと最前列の席が空いている、と言うではないか。
 豪華寝台列車などだと、グレードの高い個室から埋まっていく傾向があるので、バスもそうなのかと思っていたが、事情が異なるらしい。わたしは、早速席を取ってもらうと、予約サイトで「エグゼクティブシート」をキャンセルした。

 横浜~広島間というのは、高速バスとしては長距離の部類に入るので、横浜駅東口を始発する時刻も20時20分と早い。夜行バスに乗ろうとすると、発車までの時間潰しに苦心したりするが、これなら通常の生活時間帯である。
 
 横浜駅東口のバスターミナルは、乗り場への行き方が分かりにくく、駅から続く地下街から乗り場に上がるのに、階段しか見あたらない。そごうの営業時間中なら中のエスカレーターなどが使える。別の場所にエレベーターもあるが、それがバスターミナルに通じているのかどうか、はっきりした表示がない。各種サイトに、横浜駅から東口ターミナルへの行き方が写真付きで解説されているが、この肝腎のところになると案内が切れてしまう。
 ホームも割合武骨な感じで、待合室も売店もない。夜行便を待つ雰囲気ではないが、一応ベンチなどはあるので、そこで待つ。
 すると、そこに19時50分発の「メープルハーバー」が入ってきた。同じ中国バスの同じ広島行である。これは一般的な3列シート車で運行される。

 ほぼ同じ運行区間のバスが続行しているわけだが、「ドリームスリーパー」は三十分後に出て、広島駅には十八分早く着く。つまり、「ドリームスリーパー」は「メープルハーバー」の急行便かつグリーン車、とでもいうことになる。
 「メープルハーバー」もそれなりの乗車率で発車して行き、いよいよ「ドリームスリーパー」が入って来た。

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 やはり、一度乗ってみたかった、という人が多いのか、バスの写真を撮ったりしげしげ眺めたりして、なかなか乗り込まない人が多い。
 荷物をトランクに預け、運転手さんに切符を示すと、レジ袋を渡される。これに靴を入れて乗るのである。車内の通路にも座席にも絨毯が敷いてあり、その上は土足禁止となる。
 ステップを上がると、唖然とする。この感じは、バスではない。どう見ても寝台列車である。

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 通路の両側に仕切りの壁が立ち、もちろん両側に一席ずつしかない。密閉はしないが、カーテンを閉じてしまえば、一人だけの空間が確保できるのである。
 仕切りの中に、ゆったりしたリクライニングシートが設置されている。写真では分かりにくいが、背もたれはかなり深い角度まで倒れる。フルフラットまではいかないが、それに近い感覚でのけぞることができる。 
 ただし、高さとリクライニング角度の両方をうまく調節して自分の体に合わせないと、変な所が痛くなったりする。わたしも何度か体を起こしては試行錯誤することになる。

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 そこまでの角度で寝られても、クルマのシートである以上、シートベルトを締める義務はある。このシートでベルトをすると、手術台で抑制された患者のような気分でもある。

 各席にイオン発生機が取り付けられ、細菌や花粉をブロックしているという。原理はよく分からないが、作動させると、なるほど楽な気分になったような気がする。車内にはウェルカム・アロマとして、微かな芳香が漂っている。
 そして、やはり各席に、コンセントとUSBジャックがあり、ケータイ等の充電、パソコンなどの使用も自在である。 

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 これら設備の説明書きを読むだけでも退屈しない。 

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 後方の「エグゼクティブシート」に空席があったので、覗いてみる。
 「ゼログラヴィティシート」との違いは、後ろの席との幅が若干狭く、境が壁ではなく布であることくらいである。こちらもそれなりに快適そうだ。

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 このようにいろいろ珍しい思いをしているうち、発車時刻が近づく。このブースは近郊路線の乗り場も兼ねているので、それを待っているらしいおばさんが、「ドリームスリーパー」に驚いて、運転手さんに断って車内を見学したりしている。

「本日は、快眠バス「ドリームスリーパー」をご利用くださいまして、ありがとうございます」と挨拶があって、おもむろに発車する。
 最前列といっても、運転席との間にも仕切りがあるので、前面展望はきかないが、自席内の照明を切れば、夜中でも気兼ねなく窓の景色を見られる。

 わたしは、買っておいた缶ビールと軽い惣菜で、夕食にする。
 バス車内で、周囲に構わず飲み食いできるのは、嬉しいことだ。もっとも、列車とは揺れ方が異なり、激しいため、飲み物はいちいちしっかりホルダーに戻し、料理もパックの蓋をきちんと閉めておかないと、大変なことになるので、注意が必要だ。

 一時間足らず走って、町田(まちだ)バスターミナルに着く。早く着きすぎたようで、手前で時間調整した後、着車した。

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 ここでも数人乗って、今夜の乗車は終わりである。ほぼ満席となったようだ。

 東名高速に入り、足柄(あしがら)サービスエリアで唯一の下車休憩をとる。足柄は他の高速路線でも休憩が実施されるので、勝手知った所である。車道を渡らなくていいように、バスの停車場所が確保されている。

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 軽食や飲み物を買って来る人が多い。朝食を買う人もいるのだろう。

 足柄を出てすぐ、車内の通路などが消灯となる。時刻は二十二時四十分くらいである。いつもの就寝時間よりは早いが、わたしはすぐ寝入った。その分朝は早く目が醒めたのだが。

 朝起きると、バスは山陽自動車道の龍野西(たつのにし)サービスエリアに停まっている。運転手の交代のためだろう。まだ五時台で、あたりは暗い。
 とりあえずトイレに行く。トイレもなかなか清潔感があった。

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 その後も二回ほどサービスエリアに停車したが、降りられないのが惜しい。

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 「ドリームスリーパー」は、広島側の下車地として、福山市内の広尾(ひろお)と福山駅前、東広島市の西条昭和町(さいじょうしょうわまち)、広島市内に入って中筋(なかすじ)駅、広島バスセンターが途中にあるが、この日はそれらで降りる人はなく、全員が広島駅下車だったので、広島駅に直行する、とアナウンスがあった。途中で降りる人は、わざわざグレードの高い席を取らず、「メープルハーバー」に乗るのだろうか。
 停留所を通過するからといって、勝手に道を替えるわけにはいかないようで、ちゃんと福山市内や東広島市内では高速を降りて一般道を経由する。それでも、停車したりバスターミナルに入ったりする時間は省略できたので、終点の広島駅新幹線口には、定刻より三十分ほど早い、七時三十分頃には到着した。

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 いかに豪華なバスでも、終点に着いてしまえば、あっさり追い出される。
 夜行列車にも言えたことだが、夜行バスが朝到着するターミナルに、銭湯のような施設が併設されていると、言うことないと思う。駅前なので、朝食をとる場所には事欠かないのが救いだ。

(平成28年8月乗車)
 

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