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線路に入るということ

 このほど、元アイドルである女性タレントがブログに載せた写真をめぐって、Webが軽く炎上した。わたしも、その記事は読んだ。
 彼女とその友人(この人も著名なタレント)が、二人で線路に入って撮影した写真だったからである。元アイドルは、踏切の警報機が鳴りだしたので慌てて線路から出た、とし、その写真の下に「線路に入ってはいけませんな」という文章を添えていたから、線路に入るのがよくないこと、という自覚はあったようで、分かっているならそんな写真を載せなければいいのに、と思っていたら、案の定炎上である。
 批判の声が大きくなったのを受け、元アイドルは当該記事を削除したうえ、友人ともどもブログに改めて謝罪の記事を投稿している。

 この件に関して、わたしは評価を定められずにいる。
 一般的なメディア・リテラシーという意味からしても、法規上問題のありそうな行為を、誰にでも見られる場所に掲揚する(それも、何かとつっこみの対象になりそうな芸能人という立場で)のはちょっと無防備だと思うし、逆にそんなことを寄ってたかってタタく人たちにも辟易する。

 そして、この「線路に入る」という行為そのものに関しても、どう考えるべきか、迷うところがある。法規上、線路に人が立ち入るのがよろしくないことは分かっているが。

 線路に入ったり、そこを歩いたりする人は、何が動機なのか。
 映画『スタンド・バイ・ミー』みたいでカッコいい、とか、ドラマ『俺たちの朝』で江(え)ノ電(でん)の線路を生活道路代わりにしていたから、とか。ちょっと例が古いか。他にも、線路の中で何かしているような虚構はいろいろありそうだ。そういうのに憧れて、真似してみたい、と思う人はいるだろう。
 さすがに、数分おきに列車が来るような都会の路線で、そんなことをする人はいないだろう。しかし、ちょっと田舎を訪れたときに、非日常の昂揚感からそんな真似ごとをする気になる人はいそうだ。
 そして、元アイドルの写真は、番組のロケで京都に行った時に撮ったものだ、という。京都だって都会じゃないか、と思うだろうが、厄介なことに、わたしが写真を見たかぎり、その線路は京福(けいふく)電鉄(通称・嵐電(らんでん))北野(きたの)線のものらしいのだ。
 
 いつも利用している福井鉄道の駅付近では、線路を平気で横切っていく人を頻繁に見かける。構内踏切の正規の通路を通るよりも近道(といっても僅か数メートルショートカットできるだけだが)になるからだろう。
 特に、福鉄が低床車主体となってホームが切り下げられてから、そういう輩をよく見るようになった。駅のホームに、線路を横切って上がってくる人もいる。それが、高校生だったり、おばちゃんだったりだが、おばちゃんは幼い子供を連れていたりする。
 単線の福鉄だから、一旦電車が行ってしまえば当分来ない、ということは分かっているのだろうし、低床車はなんとなく遅くて軽くて、当たっても大したことはなさそうに見える。もちろん、実際に当たったら命はないし、そんなことをしていて「線路を歩く」ことを当たり前と思う感覚のまま子供が都会に出たときのことを考えると、ぞっとするが。

 こういう光景は「鉄道の安全を脅かし自らの命を危険に曝す愚かな行為」と糾弾するべきなのか、「田舎の素朴な電車が地域にとけ込んで親しまれているほのぼのした情景」と愛でるべきなのか。
 ここが、わたしのなかでも、もひとつ結論が出ていないところだ。

 そして、元アイドルが立ち入った嵐電も、条件としては福鉄と似たようなものである。1~2輌で小振りの電車が行き来する単線。そしておそらく、彼女らの近くにも、気軽に線路に立ち入る観光客がいたのではないか。

 さて、わたし個人はというと、生理的に受け付けない。「線路を歩く」ことは、「トイレでご飯を食べる」のと同じくらい場違いで下品なことにしか思えないのだ。線路は、いわば不可侵の神聖なエリアだ、と思うのは鉄だからか。
 とにかくそれゆえ、たとえ福鉄や嵐電ではあっても、いくら電車が来ないと分かっていても、わたし自身が線路に立ち入ろうとは思わない。

 と書いてきて、福鉄の路面停留場である市役所前で乗換えるとき、わたしも他の多数の客と同様、斜め向かいのホームに路面軌道上を歩き、交叉点を斜め横断していることに思いいたり、やや汗顔した。
 ただ、言い訳すると、路面軌道は一応道路だから、専用軌道のバラストの上を歩くのとは話が違う(とはいっても、道路交通法上は問題ありそうだ)し、正規のルートである横断歩道や地下道を通っていては乗換え電車に間に合わなくなる恐れもあるし、地下道からホームへの階段はかなり急なので、昇る気にならない。
 だからだろうか、市役所前ホームにいる福鉄の係員も斜め横断を黙認している。というか、係員自身もそうやってホームを移っている。 
 わたしも聖人君子というわけではなくて、こういうローカルルールも、これはこれで尊重してほしい、という思いもあったりする。

※ 女性タレントが進入したのが嵐電の線路だと思って書いていましたが、その後の報道で、JR嵯峨野(山陰)線と嵯峨野観光鉄道の並行区間であることが分かりました。お詫びして訂正いたします。(平成29年2月追記)

(平成29年1月執筆)

 

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