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阪堺上町線改キロ

 阪堺電気軌道の上町線(天王寺駅前~住吉)は、道路拡幅に伴う天王寺駅前電停の移設により、営業キロが改定された。
 天王寺駅前電停はこころもち後退するかたちになるので、営業キロは0.1キロ減少するのだが、起点側が減少する、というのはちょっと厄介だ。営業キロはコンマなんキロ、というように、小数第1位までで表すのが通常だが、第2位以下の端数を四捨五入する関係で、途中駅の駅間キロ数が替わってしまうケースが出てくる。
 わたしの乗りつぶしルールは、営業キロに変更(増減を問わない)があった駅間には乗りなおさないといけない、というものなので、この上町線も、全線に乗りなおしたいと思う。

 それも、改キロしたのが昨年の12月であり、結局正月休みまで乗りに行くことができなかった。正月の阪堺電車というと、住吉大社初詣客の輸送で大混雑となることは、昨年の正月、住吉公園駅廃止を前に乗りに行った際に、十二分に思い知っている。
 天王寺駅前電停には地下道からの長い列ができて、電車には機械的に詰め込まれるだけになり、周囲の観察もままならないと思われるので、天王寺駅前に到着するかたちで乗りつぶしたいが、天王寺駅前行電車は、住吉大社付近からはもちろん、堺市内でも既に満員になることも、昨年の経験で分かっている。昨年は住吉公園から始発の電車に坐って天王寺駅前まで行ったけれども、今年はその住吉公園駅が既にない。

 わたしは結局、天王寺駅前行の始発駅である浜寺駅前駅から乗ることにした。他にもいろいろ魂胆があってのことだが、とにかく南海電車で浜寺公園に着いた。ここに魂胆の一つがあるのである。

 浜寺公園の駅舎は、わが国でも最も古い時代から使われている部類に入っていたことで、よく知られている。文化財的価値もあり、見る分にもなかなかの眼福である。風格ある洋風建築なのだ。わたしも結構好きな駅舎だったので、何度も嬉しく乗降りしたものだ。
 しかし、浜寺公園駅前後の線路が高架化されることが決まり、当然この駅舎もその役目を終えることとなった。高架工事が完成するのはまだ先だが、とりあえず仮駅舎での営業に移った。それが一年ほど前である。
 それで、駅がどうなっているのか、見ておきたかった。

 ホームから地下道を通り、西側の改札に出てみると、なるほどずいぶん無機質な駅舎に替わっている。

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 しかし、この仮駅舎の右奥には、件の旧駅舎が遺されているのが見える。現在は閉鎖され、立入ることはできない。

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 囲いに説明板も掲示されているが、この駅舎は解体するに忍びないので、場所を移して保存することになったそうで、いよいよ嬉しい。

 さて、そこから西へすぐの所にあるのが、阪堺線の浜寺駅前駅である。こちらは、浜寺公園ほどの貫祿と風情はないが、軌道線にしてはしっかりした駅だし、やっぱり古めかしい。

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 折返し天王寺駅前行となる電車は既にドアを開けており、着いたばかりと見えて、誰も乗っていない。運転士さんもいない。わたしは、進行左側ロングシートの一番後ろに坐った。普通なら一番前に行きたいところだが、住吉大社付近で一斉に客が入れ換わると分かっている日に、通して乗る客が降車口のそばに陣取っていては邪魔だろう。
 普段よりも増発されているので、もう次の電車が着いて、この折返し線が空くのを待っているが、駅の手前でも降車を扱えるよう、簡易な降車ホームがあるので、客が待たされることはない。

 目の前に後部運転台があり、乗換券操作のためのパネルが貼られている。住吉公園駅が廃止されて一年近く経つのに、今も「住公」の文字が見える。

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 やがて、古びた駅舎の扉が開いて、休憩時間を終えた運転士さんが乗り込んできて、駅には発車を告げる自動放送が流れた。

 電車は、停まるごとに客が乗り込み、堺市内の併用軌道区間に入った御陵前で、通路までいっぱいになった。すれ違う電車もみな込んでいる。高須神社では、積み残しも出た。
 我孫子道には車庫があり、ここ始発の天王寺駅前行や恵美須町行も出るので、係員が、次の電車なら坐れます、などと案内している。

 いよいよ、住吉鳥居前電停の臨時ホームに停まる。ここは臨時に降車専用として地上集札を行っていて、前後両方の扉が開いて、乗っていた人が降りていく。が、降りずに乗り通す客などわたしくらいかと思っていたら、意外に多く、十数人が坐ったままだったり、空いた席に腰を下ろしたりしている。
 そこへ、後扉から破魔矢を持って乗り込んできた二人連れがいる。老母とその息子、とおぼしいが、降車ホームから乗り込むとは、横着な掟破り、と思いかけたが、かなりお歳を召したお母さんは足が不自由なようである。横着どころか、この混乱のなか並ぶのはつらく、同情するべき人なのかもしれない。ホームはロープで仕切られているし、係員が多数張りついているから、その目を盗んで乗り込むのは難しそうだ。
 立客がいなくなった電車は、数百メートル進んで住吉電停に停車する。ここが乗車専用である。去年までは、この阪堺線上のホームと、住吉公園から来る側のホーム、二カ所に天王寺駅前行の乗車ホームが分かれていて、列も二つに分かれて伸びていたが、今年は一つになった。そして、住吉公園駅からは始発電車が出るので、必ず坐れる穴場になっていて、身体の不自由な人などには、係員が住吉公園乗車を勧めているのも見た。
 してみると、そういう客を今年からは住吉鳥居前から特例で乗せることにし、そういう案内をしているのだろう。さきほどの二人連れもそのくちとみえる。

 阪堺電車も、三が日は車輌をフル稼働している点は昨年までと変わらず、昨年まで住吉公園発着だった臨時便が、我孫子道発着に改まったのみである。我孫子道以北はかなりの頻度になるので、すぐ次の電車が追いついてくるし、旧いタイプの電車ともすれ違う。
 広くはない電車道に人が溢れているのも去年と同じである。再び満員となって住吉を発車したところで後部から交叉点付近を見ると、電車待ちの長い列は、撤去された住吉公園方面の軌道跡に伸びている。三~四便待たないと乗れないだろう。係員は、この先の電停から乗る人のことも考え、極限までは詰め込まない。
 住吉大社から天王寺へ行くなら、南海とJRか地下鉄を新今宮で乗継ぐ方が快適で早そうなのだが、上町線もかなりの人気である。乗換えと階段の昇り降りがないことが、かなりアドバンテージになっているのだろう。

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 帝塚山あたりの狭い熊野街道を抜けて、阿倍野に出てきた。いよいよここからが、今回の主目的である軌道付替え区間となる。
 阿倍野の交叉点の所で、旧線から分岐して、少し西側に寄る。道路が拡幅されるので、中心がずれるのである。

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 このあべの筋の新軌道では、軌道緑化も行われている。軌道敷に芝生を植えることで、景観の向上や騒音の軽減を図るとともに、クルマの進入も防いでいるのである。
 相変わらず、右側には旧軌道が未だ撤去されずに並行しているのが見える。

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 移転した天王寺駅前まで来ると、折返し線に入る。旧電停は、上りと下りの線路が両方から歩み寄るY字形だったが、新電停は、上り(到着)線が下り(出発)線に合流する形になっている。ここは、普段から降車後の集札口で運賃を収受している関係で、合流前に降車ホームは設けられていない。次の電車が来ないうちに、迅速に折返す必要がある。

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 もう午後ではあるが、これから参拝に向かう人もまだまだ多い。
 発車案内が見やすいものになり、ホームも新しく清潔になったようである。

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 電停には、歩道橋と地下道、普段はどちらからも到達することができるが、今日は歩道橋から通じる階段は閉鎖され、ここでも地下道に長い行列がある。地下に降りる階段は狭いので、電車が着くと、乗車待ちの列を切って降客を通している。

 都市近郊の路線で、けっこう車輌数も多いので、車輌の新陳代謝はなかなか一気には進まないようで、古めかしい電車が近代的に改装された駅に出入りする様は、なかなか愉しい。少しずつ、少しずつ、改まる時代を辿っていくのだろう。

(平成29年1月乗車)

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