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1日フリー乗車券で行く福鉄バスそぞろ乗り

 この春、福井鉄道が路線バス用の1日フリー乗車券の発売を始めた。
 従来から鉄道線用の1日フリー乗車券はあり、550円で鉄道全線に乗り放題、というもので、全線の片道が370円ということを考えると、まずは妥当な金額のように思う。
 それが路線バスとなると、運賃は割高になるし、ちょっと長距離の路線になると、優に片道1000円を超えてしまう。それなのに、1日フリー乗車券は1000円である。これで全線乗れる、となると、かなり使いでがある。土曜・休日のみの発売であり、平日のみ運転の便や路線も多いなか、乗れる所は限られるのだが、それでも福井県の嶺北(れいほく)・嶺南(れいなん)に拡がる福鉄バス路線は、その地域性や使命も多岐にわたる。

 5月のある日、この1日フリー乗車券でそぞろ乗りを試みることにした。
 朝の神明(しんめい)駅窓口で、この乗車券を購入する。バス車内でも買えるのだそうだが、窓口のほうが、日付を入れてもらいやすいのではないか、と思ったのだ。
 しかし、窓口の係員は、「日付は最初のバスを降りる時に運転手に入れてもらってください」と言う。

 神明駅から、朝一番の鯖浦(せいほ)線織田(おた)行に乗ろうと思い、ぎりぎりに駅に着いたわたしは、以上のやりとりを大急ぎで交わしたのだが、7時55分発のバスがなかなか来ない。一緒に待っている人たちも、時計をちらちら見ている。
 以前なら、鯖浦線はここ神明が始発だったので、早くからバスが駅の軒下に据え付けられていたものだが、4月からJR北鯖江(きたさばえ)駅始発に延長されたので、ぎりぎりまで来ないことになる。それにしても、定刻を過ぎても姿が見えないので、やきもきする。わたしは、終点の織田で際どい乗継ぎを控えているのだ。

 ようやく、四分ほど遅れて、織田行が駅前ロータリーに入ってきた(下の写真は、神明駅に入ってきた鯖浦線織田行)

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 バスは空でやって来た。この便は北鯖江駅で福井方面からの電車の接続は受けていないから、無理もない。
 しかしこの神明からわたしを含めて四人も乗ったのは意外だった。休日朝の下りに乗る人がいるとは、悪くない。僅かでも需要があるから、この便が休日運休にならないのだろうが。

 鯖浦線は、国道417号を直線的に西に向かう。鯖江市域を抜け、広大な越前町(えちぜんちょう)に入る。朝日(あさひ)地区(旧・朝日町)の中心、西田中(にしたなか)では、鉄道線の駅跡である西田中バスターミナルに寄り道する。ここで、京福(けいふく)バスや越前町コミュニティバスとも乗換えできるようになったが、この便に乗降はない。国道に戻ってすぐの所が越前町役場前である。ここはこの後もあと二回通るはずである。
 その先の朝日から南に折れて大きく迂回しながら織田に向かう。迂回はしているが、元の鉄道線もそういうルートをとっていた。南側には宮崎(みやざき)地区(旧・宮崎村)の中心があるからである。よく整備された歩道が続く道をバスは行く。
 結局織田(旧・織田町)に入るまで、神明から乗った客は誰も降りず、途中から乗る人もいなかった。剱(つるぎ)神社の前にある明神前で一人が降り、わたしを含めた残り三人が、終点の織田バスターミナルまで行く。
 ここで乗車券に日付を入れてもらう。わたしが頼むと、運転手さんはジッパー付きの袋を取り出した。日付印を持っているのか、と思ったが、出てきたのは赤のサインペンで、手書きである。これなら自分で書き込んでもよかった。よくある日付を削り取る方式にするといいのではないか。

 ところで、乗継ぎがあるので、わたしは時計を気にしながら乗っていたのだが、宮崎地区の樫津(かしづ)あたりまではずっと三~四分遅れで来ていたのに、そこから先、織田までの間にぐんぐん追い上げ、結局定刻8時31分に終着した。おそらく、運転手さんは経験上こうなることが分かっていて、早発にならないよう、JR北鯖江駅を遅めに出たのであろう。
 しかし、途中の停留所で待たされる側はあのように不安になる。やはり、定刻に出て途中で時間調整してくれる方が助かる。

 ここからさらに、越前海岸方面に乗継ぎたいと思っていたのだが、二時間以上バスの便がない。間もなく福浦(ふくほ)線の8時35分発田原町(たわらまち)行がターミナルに入ってきた。さっき通った西田中を経て福井市方面に向かう便なので、来た道を戻る便だが、西田中までの経由地は異なるので、一応接続便と言えよう。もっとも、乗り継いだのはわたしだけだった。
 越前海岸のかれい崎(ざき)から来た福浦線は、さすがに福井に向かう便だけあり、十人ほどの客が乗っている。上戸(うわど)経由で西田中方面に向かう。ほぼ国道417号を直行するが、集落付近では旧道に入ったりしながら走り、あまり乗降はないまま、8時53分、先ほどの越前町役場前で下車する(下の写真は、西田中~西田中本通りを行く福浦線田原町行)

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 特に行く所もすることもなく、西田中の街をぶらつく。まだ店も開いていないが、9時にスーパーが開店したので、入ってみる。変哲もないが、エントランスに素朴な飲食・休憩スペースがあるので、店内で飲物を買い、そこで時間を潰す。

 福鉄バスの便はなおしばらくないので、越前町コミュニティバス「フレンドリー号」で織田に戻ることにする。コミュニティバスは土曜・休日は運休・減便する場合が多く、越前町のも例外ではないのだが、なぜか祝日は平日扱いとなっている。環状ルートと呼ばれる線の右回りと左回りが相次いで発車し、どちらも織田に向かうが、右回りはさっき乗った鯖浦線とほぼ同じ経路を行くので、左回りに乗ってみることにする。
 先に出る右回りは京福バスが受託している大型のバスで、待合スペースにいながら乗ろうとしないわたしを怪訝に思った運転手さんが、わざわざ降りてきてわたしに行先を質した。親切なことである。次いでやって来た左回りは一転して小型のバスで、越前観光の受託である。越前観光は鯖江市の会社で、鯖江市の「つつじバス」も受託している(下の写真は越前町役場前で発車待ちの越前観光車によるフレンドリー号環状ルート左回り)

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 環状ルート左回りは、福鉄バスのどちらの経路とも離れ、温泉施設の「泰澄(たいちょう)の杜(もり)」などを経由して、10時16分に織田バスターミナルに着いた。このバスはフリー乗車券では乗れないので、200円払って下車する。
 半時間足らずの待ち時間があるので、剱神社に挨拶がてら参拝して、次の福鉄バスには明神前から乗ることにする。

 越前武生(えちぜんたけふ)からの武生越前海岸線のかれい崎行が、狭い路地同士の交叉点を身をよじるように曲がって来た。客は誰も乗っていない(下の写真は、織田から明神前に右折する武生越前海岸線のかれい崎行)

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 明神前を定刻の10時45分より二分ほど遅れて発車、織田病院に廻り道すると、さっきのコミュニティバスもいる。そこから梅浦(うめうら)までは、鉄道の鯖浦線が果たすことのできなかった夢の区間である。山中(やまなか)からは、その名のとおりの屈曲した区間となり、やっと海岸に出た所が梅浦である。海岸を北へ向かう道を辿れば、越前岬方面へ行くことになるが、バスは左折して南に向かう。
 漁港が現われては民宿が集まり、のくり返しを何度かして、11時17分のアクティブランド前で下車する。

 アクティブランドは、そういう名前のスポーツ施設、道の駅などが集まっている所で、越前海岸南部の観光拠点ともなっている。休日なので多くの人で賑わっているが、もちろんクルマで来た客ばかりである。
 わたしは、かれい崎で折返してくる武生越前海岸線に乗らないといけないので、半時間ほどしか滞在できない。ゆっくり食事などするわけにもいかないが、朝揚がった鯵を調理した熱々のフライを売っていたので、それを1パック求めて早昼代わりとする。

 停留所に戻って、さきほどと同じ車輌、同じ運転手さんの11時45分発越前武生行に乗る(下の写真は、アクティブランド前に着こうとする武生越前海岸線の越前武生行)

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 乗った時はわたし一人だったが、海岸沿いの停留所で一人、二人と乗る。皆が武生市内まで行ったので、最後は十人ほどになる。
 樫津までは来た道を戻り、そこからは狭い地方道を通って八田(はった)経由で武生に向かう。上太田(かみおおた)あたりまでは閑散とした田園風景なのに、次の小松口(こまつぐち)で旧国道に合流する所はショッピングセンターやファーストフード店が密集し、急激に市街地に入る。

 越前武生からは、今度は東方に向かう池田(いけだ)線に乗る。池田町方面には、北廻りの清水谷(しみずだに)経由と南廻りの魚見(うおみ)経由、二つの経路があり、池田へ行く便は、その両方を廻って一周してくる循環運転である。
 わたしは13時40分発、魚見先行の池田町方面行に乗った。五人ほどを乗せて出発した(下の写真は、越前武生で発車待ちの池田線魚見先行池田町方面行)

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 わたし以外の客は、残念ながら越前市内の入谷(いりたに)までに全員降りてしまった。入谷折返しの便も設けられている。
 池田町に入ると、池田分校に立ち寄る。武生高校の分校ながら、中高一貫、不登校生徒の指導など、ユニークな教育にとり組んできた。が、生徒減などの影響で、廃校が決定している。分校というには惜しいほどのしっかりした校舎で、もったいない。バスは前庭に入って転回し、玄関の前に停留所がある。
 そして、バスは池田町の中心、稲荷(いなり)に14時35分に着き、しばらく停車する。わたしはここで降りた(下の写真は、稲荷で時間待ちをする池田線。ここから清水谷経由で越前武生へ戻る)

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 稲荷付近にもいろいろ観る所があるが、わたしは少し散策した後、「まちの駅 こってコテいけだ」に向かった。
 道の駅との違いはよく分からないが、池田産のものを使った土産物を売っていたり、レストランがあったりする。周囲にも店や施設が多く、観光の新たな中心になっているようだ。わたしも買物や食事を愉しんだあと、庭に出た。片隅に、肩身狭そうにバス停のポールが立っている。

 そこにやってきたのは、「春夏秋遊バス」の16時10分発越前武生行である。これは、池田町や越前市東部の今立(いまだて)地区(旧・今立町)の観光地への公共交通の便が悪いのを補うため、冬季を除いて土曜・休日に運転されるようになったものである。越前武生と冠荘(かんむりそう)(池田町)との間を一日2往復する。途中停車するのは観光スポットのみである。冠荘は、冠山にある宿泊施設の名だが、近くにはTPA(ツリーピクニックアドベンチャー)という、自然をじかに感じて遊ぶことのできる大規模な施設があるのだ。
 あくまで路線バス扱いなので、フリー乗車券で乗ることができる。特別な塗装を施した専用車輌まで用意していて、力の入れようが分かる。
 が、こってコテいけだにやって来た午後の帰り便に、乗客は乗っていなかった。アドベンチャーしようというほどの人は、路線バスには乗らないのだろうか(下の写真左はこってコテいけだ停留所のポール。右は春夏秋遊バスの専用車輌)

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 春夏秋遊バスは、池田線の清水谷経由とも魚見経由とも異なる、その中程にある国道417号を通る。普段は路線バスの運行がない道路なので、なかなか乗りがいがある。
 今立地区に入って、越前和紙の里に停まると、お年寄りが数人乗り込んできた。が、車内で彼らの雑談を聞いていると、十七分後にここを始発するはずの、南越(なんえつ)線バスを待っていた客で、たまたま来たから春夏秋遊バスに乗っただけの地元の人であった。
 地元のそば製造の会社の施設である越前そばの里にも停まるが、人はたくさんいるものの、乗降はない。その次の武生楽市は、国道8号沿いに大規模な店舗が軒を連ねる市内随一の商業ゾーンである。ここでは若い男性一人が乗った。

 春夏秋遊バスは、JR武生駅前にも寄ってから、16時55分、越前武生で終着となる。わたしの今日のバス旅も、これで終わりとなる。まだ乗ろうと思えば乗れる路線もあるが、さすがに疲れたし、日も傾きはじめた(下の写真左は、越前武生到着前の料金表示。1が冠荘、2がこってコテいけだ、3が越前和紙の里、4が越前そばの里、5が武生楽市、6がJR武生駅前からの運賃。リーフレットなどにも運賃の記載がないので、参考に。右は越前武生に終着した春夏秋遊バス)

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 休日のバスは、かなり減便されているのだが、それでも客は疎らで、路線バスの厳しく淋しい現状を見せつけられるような旅であった。
 それはともかく、計算してみると、通常運賃では5030円分にのぼる行程を1000円で乗れ、普段行かないような所もいろいろ訪れ、愉しい一日となった。機会があれば、今回乗らなかった路線、殊に嶺南の路線などもそぞろ乗りしてみたいものだ(下の写真は、使い終えたフリーきっぷ)

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