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2017年9月18日

京阪プレミアムカーと阪急「京とれいん」

 京阪線は、名前とおり京都と大阪とを結んでいる。が、線形の悪さからスピードで優位に立つことは難しい。しかし、スピードとは違った工夫で客を呼び込もうと、伝統的にユニークな発想をしてきた。
 古くは、戦前に当時としてはかなり画期的だった、鉄道線と軌道線の両方を走行できる車輌を開発して大阪から琵琶湖畔への直通列車を運行したりした。その後も、テレビ受像機を搭載した「テレビカー」を特急に連結したし、都市近郊鉄道としては珍しく二階建て車輌を導入したりもした。

 その京阪が、またやってくれた。一部の特急編成のうち一輌を「プレミアムカー」に改造したのである。プレミアムカーは、上級指定席車輌で、もちろん指定料金が運賃と別に必要となる。近鉄や南海には有料の車輌や列車が運行されてきたが、京阪神の都市間連絡路線としては、珍しい試みである。

 これは乗ってみないといけない、ということで、先日大阪側の終点である淀屋橋(よどやばし)駅に立った。

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 ホームには「プレミアムカー」の空席状況が表示されている。
 発車の近づいている特急は、空席が少なくなっており、見る間に満席になっていった。すると、次の特急が空席僅か、に替わっていく。指定券はWebで事前予約することもできるが、乗る間際に買う人が多いようだ。ただし、ホームに券売機はなく、窓口で買う必要がある。

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 入ってきた電車を観察しよう。

 なるほど、プレミアムカーの名に相応しく、入口扉からなかなか高級感が出されている。

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 側面の電照方向幕は、カラフルで読みやすい表示である。方向幕はこうでないといけない。

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 JRの特急のように愛称や号数は付いていないので、何時何分発の特急かを明示しているのは親切である。

 車内に入ってみる。扉では女性アテンダントが丁重に迎えてくれる。
 客室内には横三列のゆったりした間隔でリクライニングシートが並び、京阪とは思えない雰囲気になっている。

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 改造車の悲しさで、窓枠と座席が合っていないところもあったりするが、席の快適さはそれを補って余りある。肘掛けの先端にはコンセントもついていて、ケータイの充電もできる。これまた上級車輌には今や欠かせない装備と言えよう。

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 席に身を預けてしまえば、すぐに京都に着く。
 全区間(出町柳(でまちやなぎ)~淀屋橋)でも一時間に満たない所要時間なので、乗り足らない思いがするのだが、淀屋橋を出る時にはあった空席が、途中停車駅の枚方市(ひらかたし)と樟葉(くずは)でほぼ埋まったのも意外だった。なんとなく、大阪側で利用する人が多い、あるいは全区間通す利用がほとんどではないか、と予想していたのが、全く違った。もっとも、土曜日だから京都へ出かける人が多かったのかもしれない。

 終点の出町柳で折返し列車を見送る。ホームの柱にも飾りつけというか、案内が巻かれている。

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 さて、乗ってみた印象としては、乗り心地は上々、人気も好調、といったところだ。まだ登場してまもないので、珍しがって乗ってみる人が多いのかもしれないが、これをいかに定着させていくかが課題であろう。
 せっかくアテンダントが乗務しているのなら、JR東日本のグリーン車のように、簡単な車内販売などをやってもいいのではないか。
 もし、プレミアムカーが順調に推移すれば、他の鉄道会社にも刺戟を与えるだろう。JRの新快速や、阪神~山陽の直通特急などに同様の車輌が連結されれば、なかなか便利になると思う。関西ではこういう指定席車は成功しない、というジンクスというか「実績」もあるようなのだが、昔と違い、快適さに対価を支払うハードルは低くなってきているし、量より質がサービスに求められるようになっている。加えて、高齢化社会が進展して、確実な着席への指向も強くなった。
 プレミアムカーの成果に期待したい。 


 さて、元は同じ会社ながら、戦後は京阪のライバル路線となった阪急京都線である。
 阪急にはプレミアムカーのような指定席車はないが、「特別感」のある列車を走らせている。それが、土曜休日を中心に梅田(うめだ)~河原町(かわらまち)間で運転されている快速特急「京とれいん」である。

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 一世代前の特急車輌を改造して、独自のインテリアにした車輌である。
 外観も、マルーンの基本的な阪急カラーは従来どおりだが、いろいろ飾りつけがなされている。

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 六輌編成のうち四輌は、京都線特急としては通常の転換クロスシートが並んでいるが、モケットが和風の柄になっている。
 下の写真左は梅田寄り1・2号車の「蘭の花散らし」をイメージしたもの、右は河原町寄り5・6号車の「麻の葉」をイメージしたものである。

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 しかし、なんと言っても見応えがあるのは、中間3・4号車町屋風車輌の半個室席であろう。
 デッキには和紙の掛け軸がかかっていて、雰囲気を盛り上げてくれる。デッキから客室に入る部分は、格子戸である。

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 そして座席は、高めの背もたれで仕切られて個室間隔で落ち着いた旅が愉しめるものになっている。畳地の座面と背当て部分がまた、古き京の演出になっている。これもまた、三列シートのゆっくり坐れる席なのが嬉しい。

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 この町屋風車輌の座席には、座席番号が振られ、プレートが付いている。
 状況によっては指定席として運用するつもりもあるのではなかろうか。しかし、現在のところは料金不要の自由席で、通常の運賃だけで乗れる。

 車輌の外壁にも扇などのイラストが大胆に配されている。これは、実物を見ないと上品さが分かりにくいだろうが。

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 快速特急は、特急よりも停車駅が少ないのだが、定期特急の直後に発車して続行し、特急を追い越さないダイヤになっている。だから、急ぎの人は特急に乗ることになり、「京とれいん」の客はそれを狙って乗る人だけ、ということだ。だから自由席でもそれほど混雑することはない。
 わたしが乗ったのは日曜午後の河原町行だが、座席は四割が埋まる程度であった。しかし、狙って乗る人がそれだけの数いるのなら、もっと大々的に宣伝して指定席にしてもいい気がする。少なくとも町屋風車輌は、追加料金を取る価値があると思う。

 
 京阪、阪急双方の特別な車輌に乗ってみたが、コンセプトが異なりながら、どちらもまた乗ってみたいと思わせるものであった。
 これが他社や他区間にも波及することを、重ねて期待したい。 

(平成29年8・9月乗車)


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