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2018年3月29日

ホビートレイン・「伊予灘ものがたり」から徳島に戻る

 中村(なかむら)に泊まった翌朝は、予土(よど)線に向かう。 土佐から伊予に道程が移ることになる。

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 中村からは土佐くろしお鉄道の普通列車で窪川(くぼかわ)に向かう。前日乗ったのとはまた異なるラッピング車輌で、なかなか楽しい。

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 海に近い所を走るので、沿線で目につくのは、真新しい津波タワーの数々だ。背の高い建物も少ないなか、津波タワーがランドマークのようになっている。太平洋に近い地域は、七年前の津波被害はひとごとではないのだ。
 それにしても、のどかな田園地帯に無骨な大建造物の威容は唐突な感じがする。非常時だけに使うのはもったいないように思うが、他のことにも活用する途はないのだろうか。
 盆踊りの櫓には大きすぎるのだが、これを使ったイベントなど、いろいろ考えられそうだ。普段から定期的に出入りしておいた方が、いざというときにも抵抗なく昇れようし、傷んで補修が必要な箇所なども、多くの眼で見いだすことができる。
 それとも、既に地元では活用法が考えられているのだろうか。

 ループ線がある関係で、左側に位置する宇和島(うわじま)から通じているはずの予土線が右手から合流し、窪川に着く。すぐ予土線のホームに移る。
 宇和島行として停まっていたのは、鉄道ホビートレインと呼ばれる車輌である。外装は東海道新幹線の0系を模しており、内部がプラレールで飾りたてられているのだ。 

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 車内には0系初期の転換クロスシートが四席だけ設けられていて、プラレールの展示棚もある。今のプラレールは、実に車種が豊富になったのだな、と感心して眺めた。

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 この転換クロスシートはこの列車の進行方向とは逆向きに固定されていて、宇和島から窪川に向かう際には前面展望が提供されることになる。それ以外の座席はロングシートだ。
 わたしは、大きな展示棚の脇のロングシートに腰を下ろした。高知方面からの特急が着くと、一気に乗換え客があり、座席がほぼ埋まった。

 江川崎までは、四万十川に沿って走る。沿って、といっても、比較的新しく開通した区間なので、蛇行にそれほど忠実ではなく、トンネルの連続ではあるが、プラレール越しに覗くゆったりした清流は、なかなかのどかで、異質の物が共存する視界が立体的だ。

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 ワンマン運転なので、運転席後ろには駅名と対照させる運賃表が設けられている。上半分は予土線の駅名だが、下半分には洒落のつもりだろう、東海道新幹線の駅名が記されているのが、また可笑しい。
 東海道新幹線が整理券方式のワンマンだったらまさにシュールだが、どうせ洒落なら、実際にこれら各駅からの運賃を表示すればいいのに、と思った。宇和島経由か窪川経由かで違ってくるから表示できないのかもしれないが、実際にこれを見て運賃を払う客もいないだろう。

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 江川崎(えかわさき)では反対列車との交換のため、二十一分も停まる。恰好のトイレおよび撮影タイムということになる。
 わたしは正直なところ、このような改装はあまり好みではなく、今日も狙って乗ったのではなく、乗ろうと思った列車にたまたまこの車輌が充当されていただけである。が、実際目の前にすれば、もの珍しいので、写真に撮る。0系タイプの流線型の反対側は、ラッピングだけで雰囲気を出している。
 入って来た反対方向、窪川行列車は、「海洋堂ホビートレイン」という姉妹車輌で、こちらは各種フィギュアで飾られているそうだ。

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 四国最果ての路線となると、こういう装飾で目立たないと、なかなか乗りに来てもらえないのだろうし、工夫の必要はよく理解できる。
 ただ、宇和島に近づくにつれて客が増え、坐れない客が通路に立ち並んだ。プラレール展示の分、座席数は減っている。定期列車にせめて増結なら分かるのだが、これ一輌で運用するのはちょっと無理ではないか、という気もする。かといって、二輌連結にするほどの乗客数でもないのも想像はつく。
 時刻表を見ると、ホビートレインは、朝ラッシュにも運用されている。乗客から苦情など出ていないのか、と思う。どんな車輌でも、路線が廃止されるよりはいいのかもしれない。

 鉄道ホビートレインは、宇和島に着いて、ひとしきり被写体になった後は、折返し近永(ちかなが)行となるまで一時間弱の小休止となる。駅の発車案内にも、車種が注記されている。
 わたしは、予讃線の特急「宇和海(うわかい)16号」に乗換えて、八幡浜(やわたはま)に向かう。「宇和海」もまた、JR四国が導入したディーゼルカーだが、この列車は「アンパンマン列車」の編成が使われている。このあたりの鉄道は、どうもこのようにタイアップした装飾車輌での集客が得意なようだ。
 デッキには自転車の固定設備がある。特急には珍しく、自転車持込みサービスをしているのである。

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 時間に余裕があるので、八幡浜で途中下車、港近くの観光ゾーンに行ってみることにした。駅から港までは2キロ近くあるので、歩くのはしんどいな、と思い、スマホのナビアプリで調べてみたが、適当な便がないようであった。
 しかたなく歩いていると、虚しくバスに追い抜かれた。この地域に細かい路線網を張るのは宇和島バスで、わたしのナビアプリも宇和島バスだけを検索していた。抜いて行ったのは、伊予鉄南予バスの伊方(いがた)行であった。両社のエリアが接する所なのだ。八幡浜駅のバス停の位置が少々ずれているために、ナビで出なかったらしい。自分の足でバス停を探し、自分の目で時刻表を見る、ということをせずに横着すると、こういうことになる。
 市内では、同じ位置に両社のバス停が並んでいるのに名前が違ったりして、外来者を惑わすが、残念ながら各地でよく見られる現象だ。

 帰りは無事宇和島バスに乗れたが、車内に停留所名変更のお知らせがあるのが目についた。統廃合、閉店、操業停止、閉鎖などが透けてみえ、地方の厳しさに溜め息を喚起されるような掲示である。

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 気をとり直し、駅の改札を入る。発車案内が電光式でなく、看板を吊り下げる昔ながらの方式なのが、風情がある。もっとも、マグネットで張り付けるようになっていて、多少は労力が軽減されている。

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 そして、わたしの乗る列車「伊予灘(いよなだ)ものがたり 道後(どうご)編」が入って来た。各地に多くなった、古い車輌に目を見張るばかりのリニューアルを施した観光臨時列車である。そのなかにあり、この列車は普通列車ながら全席グリーン指定席扱いとなっていて、期待できる。
 ホームにはわざわざマットが敷かれて、ホテルに入っていくような感じになっている。わたしは、海側の窓に面したカウンター席を予約してある。

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 16時08分に八幡浜駅を出発した。驚かされるのは、この列車に対する沿線の見送りがかなり盛大で大がかりなことだ。
 八幡浜駅の駅員さんも笑顔で大きく手を振ってくれ、駅を出てすぐの所の民家では、犬が出てきて見送ってくれている。そして、線路から見えるガソリンスタンドでも大きな旗を振ってくれている。一応鉄道のライバルであるクルマ関連の施設が鉄道の応援とは、面映い。

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 さらに、山側はるかに見える大洲(おおず)城からは、実に大勢の人が幟旗を振ってくれているのが見える。これは、城のスタッフのみならず、訪れた観光客にも協力してもらっているとかである。

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 このほか、とても書ききれないほど、各地であの手この手の歓迎パフォーマンスがあった。こちらも、お召し列車で移動する皇族のように、見送るを見逃さないように、忙しく手を振り返す。なんの変哲もない民家の前に、普段着の家族が出てきて手を振っている様などは、何よりも微笑ましい。

 この列車では、食事を予約することもできる。この便は夕方なのでアフタヌーンティーである。しかし、車内でメニューを見て注文できる品もあるとのことだったので、わたしは予約していない。
 ロールケーキのセットをとったが、美味しいし盛付けもお洒落であった。おつまみをとって呑んでいる人もいる。

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 伊予灘に面した下灘(しもなだ)駅で、十分ほど停車、ホームに出て海を眺めることもできる。ほとんどの客がホームに降りたので、その間に車内を撮る。
 おもてなしの拠点であるサービスカウンターも、今は無人である。客室内の様子を改めて見てみると、これはもうカフェそのものだ。デッキには、車内の席番と停車駅が表示されている。 

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 無人駅なので、駅の構内と外側の境界も曖昧で、皆が思い思いに付近を散策している。駅前には、明らかにこの列車の客をあてこんだ売店も出ている。

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 列車がメロディホーンを鳴らすと、発車時刻である。客が皆ぞろぞろ車内に戻り、「お連れ様はお戻りでしょうか。お確かめください」というアナウンスが入るが、その時にはもう列車は動きはじめていた。
 松山市内に入ると、さすがに見送りなどはなくなり、海も見えなくなるが、行き違い待ちで停車した市坪(いちつぼ)駅のそばにある松山中央公園の壮大なスポーツ施設群に感心する。坊ちゃんスタジアムなる野球場を中心に、プール・武道場・陸上競技場などがひしめいている。
 鄭重なお別れアナウンスを名残惜しく聞いて、松山に終着する。

 この日は松山に泊まったが、最近、伊予鉄道の市内電車のうち本町(ほんまち)線の起点電停の名称が変わった。ちょっとややこしい変わり方だったので、キロ数も変わる可能性があり、よく分からないまま、宿に入る前に乗りなおしておく。これで完乗タイトルは安泰のはずだ。

 翌朝、市内中心部の宿から、JR松山駅前に向かう。
 こういうときでも、趣味人としては、素直になれない。せっかく朝ラッシュ時に乗るのだから、この時間にしか走らないレアな便を選ぼうとするのだ。
 宿最寄りの大街道(おおかいどう)電停から松山駅方面に行く電車は5系統だが、この5系統は通常JR松山駅前で終点になる。ところが、ラッシュ時に限り数本だけ、JR松山駅前を超えた先にある古町(こまち)が終点になる便がある。古町には車庫があるので、入庫する運用だろう。どうせならそれに乗りたい。

 頻繁運転のうえ、ラッシュ時は乗り降りも多くて電車は遅れぎみ、どれが何分発か判然としないが、それらしい電車がやってきた。が、方向幕は普通に「JR松山駅前」としか書かれていないので、がっかりする。それでも、時間の関係もあって乗るしかない。

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 懐かしい釣懸モーターの響きや、大手町(おおてまち)踏切での鉄道線との平面交差で車輪がレールを叩く音など、聴覚的な愉しみが多い電車だ。
 JR松山駅前で降りて、電車をふり返ると、いつの間にか方向幕が系統番号なしの「古町」に替わっている。慌てて画像に収めた。通常はここで折返す5系統だが、この電車はこの先に進む1系統の停車位置で降車を扱っている。
 そして古町に向けて発車して行ったが、この先は単線である。先に発車した1系統と続行運転となっている。

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 松山からは最新型電車による特急「いしづち」で高松に向かい、讃岐うどんを賞味してから、特急「うずしお」で徳島へ。これで四国をざっと一周したことになる。

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 徳島からは、今度は昼間の高速バスで四国を離脱する。神戸まで二時間というのも、昔の感覚からするとすこぶる速い。

(平成30年3月乗車)

 

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