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2018年4月30日

砂浜を走る路線バス「北陸道グラン昼特急3号」

 3月半ばのダイヤ改正で、西日本JRバスの高速バス「北陸道昼特急」の土曜休日一往復が、和倉(わくら)温泉発着となった。
 この延長便の注目点は、途中千里浜(ちりはま)なぎさドライブウェイを経由するところである。能登方面の観光バスが立ち寄る定番ではあるが、路線バスがここを経由するのは珍しく、現在唯一の路線となる。
 わたしにとっても、高校の修学旅行で、もちろん貸切バスでだが通った所なので、懐かしくもう一度乗ってみたい。連休中の土曜日、早速乗ってみた。

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 和倉温泉へ延長されるのは、「北陸道グラン昼特急3号」である。グランという名前がついているのは、夜行用のグランドリームというちょっと高級感ある車輌の間合いで運転されるからで、よくある運用だ。
 乗り場は、JR大阪駅の北側に隣接する高速バスターミナルとなる。ここは方面別に乗り場が分かれているのではなく、その都度案内表示を見てブースに行くことになる。横一列に乗り場が並んでいるので、探すのに苦労はない。「北陸道グラン昼特急3号」は、先頭の1番のりばからの発車だった。

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 グランドリームは、各席がカーテンで仕切られていて、プライバシーが保てるようになっているのだが、それだけに車内を見わたしにくい。ディスプレイは最前部と中程二カ所に付いているが、それでも見にくい。

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 大阪駅で乗り込んだのは、座席の四割程度の客だ。バスターミナルの案内表示では「満席」ランプが点いていたが。
 連休中のことだから、名神に入るまでの一般道路も込んでいる。千里(せんり)ニュータウンでは乗車はなかった。
 名神に入っても、天王山(てんのうざん)のあたりでかなり渋滞した。四車線に増設したり新名神ができたりしても、やはりネックなのだろうか。
 そして、京都南インターで高速を下り、京都市内を走って京都駅に着く。大阪駅から二時間近くもかかっている。鉄道のようにすっとは走れない。それゆえにか、京都駅での乗車はかなり多かった。実質は京都の人のための路線なのかもしれない。京都からだと、「サンダーバード」の自由席に着席できないかもしれないので、安価で座席指定の高速バスが好まれるのか。
 高速に戻って京都深草(ふかくさ)に停車すると、座席はほぼ埋まった。

 その後もあまり流れはスムーズでなく、四十五分遅れで最初の休憩地である多賀(たが)サービスエリアに到着した。名神を通る高速バスの定番休憩地なので、勝手は知っている。 

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 米原(まいはら)ジャンクションから北陸自動車道に入ると、俄然流れがよくなった。
 福井県の南条(なんじよう)サービスエリアに二度めの休憩である。多賀から一時間ほどしか走っておらず、両休憩地が近すぎる気はするが、路線図を見ると、他に適当な休憩のとりかたもないようである。
 自分の地元である福井県で高速バスの休憩を体験するのも、面白い。隣には、名古屋から来た名鉄バスの金沢行が停まっている。乗り間違わないようにしないと。

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 北陸道に入って飛ばしたおかげで、南条サービスエリア発車は三十分遅れになった。
 その後も順調に進み、福井北インターでは降車客なしと確認して本線上を直行した。尼御前(あまごぜん)、北陸小松(こまつ)、松任(まつとう)海浜公園でそれぞれ数人ずつが降りたが、いずれも高速道路上またはパーキングエリア内のバス停なので、時間のロスは少ない。
 金沢市内もそれほど込んでいなかったため、金沢駅前ロータリーには十六分遅れで入った、と見えたが、降車場所を間違ったようで、運転手交替の引継ぎに手間取り、着車の順番待ちをしたせいで、結局二十分遅れでの到着である。

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 大阪から和倉温泉までは八時間以上もかかる。東京~大阪間に相当する所要時間だから、営業所に近いここで運転手交替となるのである。
 それはいいが、わたし以外の客は全員金沢駅前で降りてしまった。代わって老夫婦が乗り込んできたが、その場で運転手に案内されて乗った飛び込み客のようで、お好きな席にどうぞ、と言われて前の方を取っていた。
 金沢駅でも乗車を扱うのは、金沢市内観光を終えた後和倉温泉に入ったり、高山(たかやま)方面から乗り継いだりすることを想定しているのだろう。ここが最後の乗車地だから、結局三人の客を乗せて臨時延長区間を運行することになる。鉄道でも、定期列車の臨時延長というと、こんな感じになることが多い。

 ディスプレイには「気多(けた)大社」が表示された。これが最後の休憩地なのだが、ここは能登一の宮として名高い神社であるし、和倉温泉への順路から多少外れて立ち寄ることになるから、休憩というより下車観光地ということだろう。この便は、金沢駅までは高速バスだが、その先は定期観光バスのような性格になる。
 続いてディスプレイには能登半島の観光案内ビデオが流れはじめた。

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 バスは金沢から内灘(うちなだ)の市街を抜けると、のと里山海道に入る。海岸段丘を越えて一気に海沿いに出る所はいい演出で、高校の修学旅行の際も、これ以上ない好天だったこともあり、紺碧の日本海に大歓声が上がったのを覚えている。神戸の高校生にとって海など珍しくないのだが、水平線が一直線に伸びる光景は、瀬戸内海では見られない。
 今日はあの時の蒼さには遠く及ばないが、それでも海の眺めにほっとさせられる。ここからはしばらく砂浜と海に沿って走る。

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 が、最初に見た感銘は大きくても、ずっと同じような海と砂浜が続くので、飽きて眠気が訪れる。現金なものである。もうすぐなぎさドライブウェイに入るはずなのにこんなことではいけない。

 と思ったが、なんだか揺れ方が今までと変わったな、と目を開けると、もうバスは砂浜の上を走っている。なぎさドライブウェイに下りる旨のアナウンスもあったはずだが、気づかずに寝ていたのである。慌てて居住まいを正して車窓に目をやった。幸い海側、左側の席が取れている。

 クルマが走れる砂浜は、世界でも数えるほどしかないのだという。砂の肌理がよほど細かくないと成立しないのだ。
 ところどころで砂浜を横切って小さな川が海に注いでいる。表面を洗う程度の川なのだが、それなりの段差はあるので、注意を促す看板が立っている。

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 修学旅行の貸切バスは、水の中に突っ込んでは急ハンドルを切って、窓まで波しぶきを上げるサービスを幾度となくやってくれたものだが、路線バスとなると、さすがにそこまで軽妙な運転はしない。それでも、海に手が届きそうな場所をバスで通ることなど滅多にないから、見応えある車窓である。
 単に車窓を撮っただけでは、走るバスの中から写したことが信じてもらえないので、窓枠を写し込んで撮っておく。

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 反対方向へとすれ違っていくクルマは反対側の窓になるので見えないが、ときどき波打ち際にクルマを停めて海を眺めたり砂で遊んだりしている人がいるのが見える。

 なぎさドライブウェイを十分ほど走ったところで、途中ではあるが、バスは右折してのと里山海道に戻っていく。

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 ほどなく、左手にレストハウスが見える。修学旅行では、ここで昼食か何かをとったはずである。いろいろと思い出して懐かしい。
 一旦のと里山海道を下りてしばらく行くと、猫(ねこ)の目(め)交叉点に出る。変わった名前だが、海側から見ると交叉点の両側に建つ古い民家が猫の両目に見えることに、由来するらしい。
 修学旅行のときは、バスガイドが、ここが能登半島北岸と南岸との分かれ道になる、帰りもここに戻ってくるから覚えておいてほしい、と教えてくれた。往時は交叉点近くに「キャッツアイ」という喫茶店があり、それを目印にと言われたが、今は見当たらない。

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 猫の目交叉点からほどなく、気多大社の駐車場に入った。
 十五分ほど停車するので、わたしもお参りに行った。能登の国にもなにかとお邪魔している。

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 高速のサービスエリアと違って、クルマもまばらで、危険も少ない。ゆっくり乗ってきたグランドリームの姿を写真に収めることができる。 

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 席に戻って老夫婦の帰りを待っていると、運転手が気多大社のパンフレットや無料ご祈祷券が入った封筒を渡してくれた。なぜ降りる前にくれないのか不可解だが、再訪してほしい、ということだろうか。
 老夫婦はお守りでも買っていたのか、案内された発車時刻より三分ほど遅れてようやく戻って来た。各休憩地に入る前は、この車輌はカーテンでプライバシーを保っているので、休憩から戻ったかどうかの人数チェックができない、案内した時刻になれば発車する、乗り遅れた場合の補償はしない、とくり返し放送していた。そうは言っても、三人しかいない客のうち二人が戻ってこない状況で発車してしまうほど無碍にはできないのだろう。荷物も座席に置かれたままである。

 ともかく、ここから猫の目交叉点に戻り、再びのと里山海道で能登半島をほぼ横断し、和倉温泉街に入った。降車場所は四カ所あり、便利のいい所で降車ボタンを押せばよい。
 老夫婦は和歌崎海望(わかさきかいぼう)・あえの風(かぜ)前で降りた。「海望」と「あえの風」は旅館の名前である。旅館の駐車場に回り込んでの停車であった。
 わたしは、始発地から終点まで乗り通したいマニアの性で、最終降車地である弁天崎(べんてんざき)源泉公園加賀屋(かがや)前まで行って下車することにしている。
 彩図の案内地図によると、同停留所は公園内にあるように読めたのだが、バスは加賀屋の正面玄関前に入ってドアを開けた。バスの前にはわたし一人のために、番頭に率いられた仲居五人ほどが待ち構え、わたしに一斉に「いらっしゃいませ!」と言う。番頭がわたしの荷物を取ろうとした。
 加賀屋は一度職場の団体で泊まったこともあるが、泊まる前から名前を知っていたほどで、和倉温泉を代表する一流旅館だ。部屋に備えられた浴衣の帯がすこぶる幅広く、同僚のなかには、手拭いと間違って風呂に持って行こうとする人もいたほどだ。浴衣帯の幅と旅館の格ないし宿泊費はだいたい比例する。
 申し訳ないが、泊まり客ではない、と手まねで辞退して謝り、わたしはそそくさと加賀屋を後にした。到着地でのバスの写真は撮れなかった。

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 これで目的は果たしたので、帰りは路線バスで和倉温泉駅に出て列車で帰ろうと思う。
 終点一つ手前の下車地であった総湯美湾荘(びわんそう)・松乃碧(まつのみどり)前まで歩いて戻る。ちゃんとJRバス仕様のポールが立っている。
 その向かい側が各社路線バスの「和倉温泉」の停留所になっていた。七尾方面のほか、富山県氷見(ひみ)に直通する路線もあった。わたしは、能登島から来る能登島バスに乗って駅に向かった。

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(平成30年4月乗車)

 
 

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