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2005年10月12日 (水)

『鉄道愛』

 『鉄道愛』というタイトルを見ると、かの映画化・ドラマ化されたベストセラーの二番煎じなんじゃないのか、と冷笑する方もあろうが、全く違う。タイトルだけは狙ってるのかも知れんが。とにかく面白く読みごたえがある。 

 鉄道で芽生えた愛、鉄道を舞台に展開する愛、鉄道に対する愛、何でもいいのである。鉄道に絡めて書かれた文学を集めた本である。

 小説及び紀行の散文作品は国木田独歩の昔からの作品が十二篇並べられている。自然主義系、浪漫主義系にこだわることなく、集められているから、文学史を辿るにもいいかもしれない。
 志賀直哉はきれいな文章を書くな、と改めて思わされる。白樺派はもちろん自然主義系ではないのだが、表現法から見ると、初期作品の文章は事態描写がほとんどで、まさにリアリズムに満ちているのである。中期から後期には変化がみられるのだが、事態描写に全てを語らせる文体にここまでこだわって成功している作家はあまりいないのではないか。「軽便鉄道」「灰色の月」と二篇も収録されているが、いずれも練られた描写だ。
 内田百■(ヒャッケンね。表示不能)・阿川弘之・宮脇俊三の三大鉄道紀行作家の作品も一篇ずつ並んでいる(二代めのみ存命)。宮脇のは、売れなかったもののご当人が最も魂を込めた、そしてファンに評価の高い『時刻表昭和史』の中でも珠玉の章とされる「米坂線109列車」が採られている(宮脇は昭和20年8月15日正午を旅の途上米坂線今泉駅前で迎えたのだ)。
 「鉄道詩集」と銘打ち、二十一篇の詩もある。宮沢賢治が汽車好きだったのは分かるところ。竹中郁の「車内偶成」、北川冬彦の「ラッシュ・アワア」など、今となってはなんということもないが、当時としては鉄道という新時代の乗物に見いだした新線な感覚だったのだろう。早く書いた者勝ちである。

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鉄道愛(日本篇)

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