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2006年1月 9日 (月)

どっちともとれる言葉

 多義的な表現、というのは、文学などの中では含蓄があっていいのだが、報告書や論文では、ない方がいいものである。
 日常生活のなかでそういう表現に出あうと、ちょっと嬉しくなるのだが、学生の報告書にあると困る。

 単語の意味自体に多義性がある場合。

  その女性はとてもきれいだった。

なら意味は一通りしかないのだが、これは困る。

  工場内はとてもきれいだった。

学生の校外研修報告書の下書きに多かった文である。これでは、清潔だったのか、整頓されていたのかが分からない。この二つは全く異なる次元のことである。どちらだったのかははっきりしないと、報告書としては失格である。
 わたしも引率者として校外研修での工場見学には同行していた。たしかに清潔でもあり整頓もされていたのであるが、それならそれで、

  工場内は清潔が保たれており、しかも整頓されていた。

とでも書くべきである。
 次は、構文が多義的である場合。

  幹線道路のバスや路面電車などに代表される都市交通

これは、が何と何とを並列しているのか、五通りの可能性がある。 
  (1) バス路面電車
  (2) バス路面電車など
  (3) 幹線道路のバス路面電車
  (4) 幹線道路のバス路面電車など
  (5) 幹線道路のバス路面電車などに代表される都市交通
   
注・バス路面電車などに代表される都市交通も純文法的には可だがいくらなんでも。

 こういう表現が、研究者の論文にさえよく見られる。筆者には自明のことであり、概念の相関からいくつかは否定されるにしても、都市交通のカテゴリーのなかにどこまでが入るのか、読者には判然としない。これは読み手意識をはたらかせて書くべきところである。
 ちなみに、テクニカルライティングの授業で、これと全く同じ構文の表現を予断なく読ませ、どの解釈をしたか、と挙手させると、見事にクラスが五つに分かれた。(1)と(5)が若干他より多かったが。

  いかにも男らしい山田が好きな田中

 は十六通りの意味に解釈できるが、これは係り受け・構文・言葉の意味の問題が全部複合している。

 ところで、学生に シュール という言葉の意味を問われて、「超現実的」と直訳を答えたところ、「めちゃくちゃリアルってことか」と実際とは正反対の意味で納得されそうになり、慌てて制止した。なるほど無理もないなあ、と思ったものである。

※ このカテゴリーの記事のように、まるよしの楽しい日本語の話を満載した本、ぜひお手に取ってお読みくださいね。

 『まるごと とれたて 日本語談義 -ラジオ番組『高専ライブ』で語ることばの話-』
 桐島周 2016 勝木書店 定価1500円(税込)
 
ISBN: 978-4-906485-09-3 
 (桐島周は、まるよしのペンネームです)

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