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2006年2月21日 (火)

偽物だと思う理由

 えへ~え、私が例のメールを偽物だと疑っていることは、お分かりになったと思いますぅ。
 そもそもあんな極秘メールをわざわざプリントアウトする人も珍しいと思われますぅ。それにこんな大事な指示のメールの本文なのに、曖昧で両義的な構文にするというのも、不自然ですぅ。
 それよりも、私がこのメールを偽造もしくは偽装だと判断した決め手が何かお分かりですかぁ?
 メールを分析するにも「頭」をつかわなければいけませんそして、ホリエモンも頭のとてもいい方ですぅ。銀行に駆け込んだけれどもタッチの差で窓口が閉まってしまった。そんな悔しい経験、あなたにも、おありじゃありませんかぁ?
 古畑、任三郎でした…

 この記事は、『Kanegon's diary』「メールは証拠となりうるのか」に対するトラックバックとして書いたものです。

 最初は、人気ドラマの名物シーンを真似してみた。上記トラックバック先の記事につけたコメントを改良したものである。それはともかく。

 例のメールのコピーがあちこちの報道で示されたが、わたしはネットワークやパソコンのシステム的なことは全く分からないので、その方面からの分析はかねごん玉子さんにお任せするとして、わたしはテキストとしてこのコピーを見てみよう。

 ヘッダが黒塗りばかりで面白くないばかりか、何でこれだけしか出せないのか不可解である。X-sender は送り手のことなのだろうが、ホリエモンが出したメールだ、というのなら、ここに来るのは当然ホリエモンのメールアドレスか何かだろう。それがなぜ出せないのだろうか。ここがホリエモンのものでないとすれば、たとえこのメールが偽造でなかったにしても、これはホリエモンが出したメールそのものでなく、その本文を(何らかの意図をもって)コピー/貼り付けして転送したもの、ということになる。問題のメールそのものではないわけで、「一次資料」ではなくなり、価値は大きく下がる。
 何か実務的な必要があって転送したのであれば、タイトルにFw:とかなんとかが付くはずで、本文にも、これが転送であることを明示する記号なり解説の文言なりが付かなければおかしい。送信者自身が書いた文章か、他の人が書いた文章かは厳密に区別しなければ、責任の所在や処理が混乱するから、そういう習慣は実務の場では定着しているはずだ。だから、「何らかの意図をもって」コピーされたもの、と推測しえるのである。
 さらに、至急 というタイトルにセンスがなく、IT企業の社内メールとはとても思えない。こういう会社のなかでは夥しい数のメールが飛び交っている(わたしでさえ週に100通以上のメールを読むのである)。処理に急を要する用件も多いだろう。タイトルは、用件を端的に集約した文言にするのが鉄則だ。そうしないと、開きもせずに読みとばされるおそれもある。至急 という語句を入れてもよいが、肝腎の用件が分からないとタイトルの意味がない。こんなタイトルは実務のメールとしては失格である。ホリエモンほどの人がこんなタイトルを付けるのか。

 本文の文章の文体についてみよう。
 まず、…欲しいんだけど処理して心配しないで といった文末表現だが、これが何とも不自然だ。マスコミ、特にTVに積極的に登場して愛嬌を振りまく社長は何人もいるが、そういう人ほど、社内では厳格な態度をとることが多い(ドキュメンタリー番組でそういう人の密着取材をしているのを見ると、だいたいそうだ)。TVのイメージで社員になめられても困るし、広告塔を演じる時と実務に当たる時のけじめを自他ともにつけるためにも、そうなりがちだ(あるいは、TVでにこやかに語る学者に限って、指導学生には厳しい指導をする傾向があるようだ)。だから、わたしにはホリエモンがこんな文体で社内メールを書くとは思えないのだ。いかにもホリエモンのイメージを演出しようとした意図的な文体に見えてしまう。だいたいこんなオネエ言葉っぽい軟派な文末表現を、普段からホリエモンは使っていないではないか。まさか送り手の 堀江 とは「メモリーグラス」の堀江淳氏か?
 最初の文の 29日朝までに という成分は、どこに係るのだろうか。振り込むよう 手配して か。どちらともとれる両義的な表現であり、こんな文もまた実務のメールの文としては失格である。振り込むことと振り込む手配を整えることとは、実務の段取りのなかでは全く違う。こんな曖昧な指示をする社長もいないだろう。
 そして、29日朝までに といっても、27・28日は土日である。そしてこのメールは金曜の15時を過ぎて送っているのである。今から段取りを整えたとしても、どうせ振込の処理がなされるのは29日の午前中なのである。それを考えると 29日朝までに という表現がおかしい。29日朝一番で振り込めるように(手配)しておいてください 、とかになるのが自然ではないだろうか。
 そして、本文のあとに 堀江 という署名があるのもおかしい。ホリエモンならそれこそ気の利いた署名のパターンを数種類使い分けているだろうし、もし改まって名乗る必要があるのなら、本文の最初だろう。ヤバいメールだから後に証拠が残らないように署名を省略する、というなら、そもそも 堀江 とも書かないだろう。こんな馴れ馴れしい文体で送る相手なら、ヘッダを見れば誰であるか十分分かるはずなのだから。

 まるで初めてメールというものを送ってみたおっさんのような文面ではないか。
 どうも状況証拠としては、偽造もしくは偽装の疑いを禁じ得ない怪しさである。

※ このカテゴリーの記事のように、まるよしの楽しい日本語の話を満載した本、ぜひお手に取ってお読みくださいね。

 『まるごと とれたて 日本語談義 -ラジオ番組『高専ライブ』で語ることばの話-』
 桐島周 2016 勝木書店 定価1500円(税込)
 
ISBN: 978-4-906485-09-3 
 (桐島周は、まるよしのペンネームです)

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