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2006年2月12日 (日)

そもそもなぜ女性天皇論

 紅白出場と皇位継承 で強引な論理展開をしたが、何だか今回の女帝論、わたしにはよく分からない。なぜ今、こういう論議が出るのか。そして、秋篠宮紀子妃殿下のご懐妊によってなぜそれがトーンダウンするのか。

 皇室というのは、二千年、史料に裏付けられている範囲だけでも千数百年脈々と続いているものであり、「男系」という本筋はいかなることがあっても貫かれてきた。「男子」という原則も、ピンチヒッター的例外を除いて変わらずにきた。いかに跡目争いが激化しようとも、日本という国がいかなる動乱に陥ろうとも、関係なくこれだけは守られたのである。
 確かに、皇室の政治上の位置づけは、時代と共に微妙な変化を繰り返してきた。しかしそれはインターフェースの問題であって、皇室自体のありようの本質は少しも揺るがなかったのである。

 皇位は男系男子が継承する、適当な男系男子がいないときのみやむを得ず男系女子が継承し、なるべく早く男系男子に戻す。
 これが、皇室典範などができるよりはるか以前からあった不文律なのである。そしてそれが皇室というものが日本国の精神的象徴・支柱となり得てきた根拠なのだ。皇室典範などは、そういう不文律たる慣例を下々が小賢しく明文化しただけであって、それは法治国家という体裁をとるようになった以上明文化する必要があったのは分かるけれど、だからこそ皇室典範の改正によって皇位継承のあり方を根本から変え、皇室の存立根拠を失わせる、というのは本末転倒も甚だしいのだ。

 今回の皇室典範改正は、「皇位の安定した継承」を目的として標榜しているようである。「皇位の安定した継承」は、何百年何千年の未来を見とおして発想せねばならない壮大なテーマである。
 それを、「(たった)四十年間男性皇族が生まれていない」というような近視眼的な発想で論じはじめるのが、いかにも対症療法的でおかしいのである。ましてそれが「紀子妃殿下がご懐妊」という事態によって揺るぐのはいよいよもっておかしい。本当に「皇位の安定した継承」を真剣に考えるなら、現在の皇室の状況とは別に、議論を進めるべきだ。

 皇族に男子がいなくても、男系の血を引いた男子はいる。「皇族の身分を離れて何十年も経つ家の男子を天皇に据えても、国民感情に合わない」という意見もある。しかし、どこまでが皇族、と決めたのも、ここからは皇族を止めてもらう、と決めたのも、下々の事情による線引きであって、皇位継承の本質とは関係ない。
 純粋な民間から皇室に嫁いだ何人もの妃を、われわれは自然に皇族として受け入れ、遇しているではないか。旧宮家は、そうした方々よりは皇室に縁が濃いのである。

 三笠宮寛仁殿下が、皇室典範改正に関してご意見をお述べになったことに対しては、なぜか女系・女性天皇容認論者の方が批判的なようである。これは不可解だ。民間が男女共同参画社会であるから、と皇族にも「男女平等」を適用しようというのが趣旨ではなかったのか。それなのに皇族に国民なみの「言論の自由」は認めないというのだろうのか。しかも、政治に口を出しているならタブーかもしれないが、皇族が皇族自身のあり方を言っているだけなのである。この問題を政治カードに勝手に利用しているのは下々であって、その発言が政治的影響力を持ってしまったとしても、皇族自身の責任ではない。
 有識者会議の議長はロボット工学者だそうだが、答申にあたって「国家観や歴史観は考えなかった」とコメントしているそうだ。皇室に関して、国家観や歴史観を抜いて、何を考え得るのか。どこが有識なのか、理解に苦しむ。

 しかし、今回秋篠宮ご夫妻が出産に向けての努力をされたのは、言葉で述べられないご意志を体を張って表現され、改正論を牽制しようとなさったのではないか。もしそうだとしたら、ほんとうに悲壮なご決意であることだ。襟を正したくなるような凄味を感じる。

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コメント

うむむ、ためになるお話です。
ケン坊は天皇なんて男でも女でもいいんじゃね?
なんて現代の若者的非政治関心者の考えを抱いておりましたが、ココに至って目からうろこです。
女性天皇はあくまでピンチヒッターであるべきだし、天皇が政治について自分の意見を述べてもいいじゃないか。

と、思わされてしまいました。
でもきっとそれらしい女性天皇論を聞いたなら、簡単に流されそう…。
自分の考えを持っているまるよしさんはかっこよかですたい。

投稿: ケン坊 | 2006年2月12日 (日) 23時17分

●ケン坊さん
 簡単に流されていただいて、ありがとうございます。自分の考えなどと言われると面映いですな。多分このへんが女系天皇反対論の平均的なとこじゃないかと思うことを述べたに過ぎませんので…

 ケン坊さんのコメントのなかで、ちょっと誤解を招いてはいけないので補足すると。

> 女性天皇はあくまでピンチヒッターであるべきだし、天皇が
> 政治について自分の意見を述べてもいいじゃないか。

この前段はそのとおりですが、後段はわたしの論旨とは違います。
 天皇は、政治に関する発言をするべきではありません。天皇は公的な立場の人であり、その発言は自ずと影響力をもちます。その天皇が政治について発言すると、天皇が統治権をもたない象徴的存在であることが崩れてしまうからです。
 記事でわたしが述べたのは、「天皇も一般国民と同じ人権を有するべきだ」という、女系天皇容認論者が前提する架空の論理に仮に従うとすれば、三笠宮殿下の発言を封じようとするのは自己矛盾してるだろう? という指摘であります。
 しかし、皇族は一般国民と異なり、戸籍もなく選挙権も与えられていません。一般国民に保証される基本的人権とは別の次元で権利と義務を論じなければならない立場です。
 一方で、憲法には「天皇」という項目が立てられていますから、天皇といえども、憲法には従わねばなりません。それで、象徴であって統治権をもたない、と憲法で定められている天皇にとって、政治的発言はタブーであることは理に適っている、と言えるのです。皇族もこれに準じるでしょう。

投稿: まるよし | 2006年2月13日 (月) 00時11分

はぅ、勘違いのご指摘ありがとうございます。

難しいことを(自分にとってですが)読んだからといって難しいことが言えるわけじゃないんですね、精進いたすます。

投稿: ケン坊 | 2006年2月13日 (月) 00時41分

>一般国民に保証される基本的人権とは別の次元で権利と義務を論じなければならない立場

そうそう男女同権の観点から云々いってる人たちはこのことがわかってないんですよね.我々の次元で考えていいものではない.

気になるのは,報道等で「女性・女系天皇」という風に,女性天皇と女系天皇を並列して表現している点です.両者には点と地ほどの差があるのに.

投稿: 真面目な軟派師 | 2006年2月13日 (月) 13時31分

●真面目な軟派師さん
> 気になるのは,報道等で「女性・女系天皇」
> という風に,女性天皇と女系天皇を並列して
> 表現している点です.

 そうですね。ま、わたしも今回の論議までは両者の違いがよく分かってなかったですが(笑)。
 まあ、女系天皇をどう受け止めるかは、形ないものの価値をどこまで認める感受性があるかどうかにかかってますね。

投稿: まるよし | 2006年2月14日 (火) 07時16分

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