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2006年4月 9日 (日)

ワープロはいずこ

 東京で、中古OA機器の専門店を二軒回ってみた。ワープロのOASYS(専用機)を買いたいと思っていたからである。
 現在、家でも研究室でもほそぼそとOASYS専用機を使っているが、特に研究室の方が、不調である(というか、もともと不良品だったのではないかと思う)。これはスーパーディスク使用の機種で、パソコン通信やインターネットへの接続も可能な、まともに動きさえすればワープロ専用機の極致と言ってもいい高機能を具えている。しかし、芸が細かいものほどよく故障するものである。これを新しいのに替えられないか、と思った。
 もちろんワープロ専用機は数年前に各社とも製造を打ち切っているので、買うとなれば中古品になるのだ。

 ワープロ専用機の全盛時代にも、最も玄人好みとされたのがOASYSであった。やはり日本語のエキスパートにとって使いやすくできているのである。何といっても最大の特徴が、親指シフトキーボードである。日本語の入力にはこれにしくものはない。一文字一打鍵を貫いているので、日本語のリズムのとおり打ち込んでいくことができ、手書きで文字を記していくのとよく似た感覚で入力できるのだ。だから、往時ワープロ検定を受けようという人は、OASYSで親指シフト、というのが当たり前であった(それが一番スピードが出るので)。
 しかしもちろん、親指シフトは馴染みがないため、JISキーボードを望む人もいる。親指シフトの操作は知らないが、職場で統一してOASYSを購入した、といったケースだ。それで、OASYS専用機は必ず両方のキーボードの仕様のものが並行して製造された。富士通の電子機器は、学校関係に強いので、往時周囲の同僚や事務官も書類作成にOASYS専用機を使う人が多かった。が、彼らはルポや書院と比べて使いにくい、とこぼしていたものだ。それもそのはずだ。OASYSの操作は、親指シフトを使ってこそ使い勝手がいいように考えてあり、他社のワープロとはその操作体系が全く違っていたのだ。そのOASYSをJISキーボードで使うなど、使いにくさの自乗になってしまうのだ。

 わたしは学生時代に小遣いはたいてOASYS専用機を買って以来、ずっと親指シフトだから、OASYSの優秀な操作性を享受してきた。特に手先の利かないわたしにはありがたいものだった。
 わたしだけでなく、OASYS専用機と親指シフトにこだわるファンは多い。プロの文筆業の人にも愛好者は結構いるそうだ。そういう人たちは、専用機製造中止の気配を察して、5~6台買いだめしたりもしたそうだが、わたしは資金の都合がつかなかった。
 OASYSはパソコン用のワープロソフトにその名前と操作が引き継がれ、OASYSでの入力を前提としたパソコン用の日本語入力システムとして、Japanistも開発された。これも他社のワープロ専用機にはなかったことで、いかにファンの想いが熱いかが分かるし、富士通も良心的である。親指シフトキーボードもパソコン用のものの製造が続いているうえ、専用機で作った文書フロッピーもパソコンのOASYSで簡単に扱えるようにしてくれている。
 わたしの使っているパソコンも全てにOASYSが入っているし、全て親指シフトキーボードで使っている。現在この記事を打っているノートパソコンも、親指シフトキーボード仕様(もちろんFM)である。

 ただし、このパソコン用OASYSのバージョンアップも、2002年を最後に行われておらず、富士通ももうそろそろやめたいと思っているのかもしれない。そうなると、Windowsがバージョンアップしていくにしたがい、やがてOASYSが使えなくなるおそれがある。
 wordは縦書きに弱い。縦書きでルビを振ったりすると、文章の体裁がとても見られたものではなくなってしまう。その点はOASYSが大いに優れている。そこで、国語の授業のプリントや試験問題はみなOASYS文書である。
 いや、それ以前に、wordのアホでも使えるように手を回し過ぎの機能が、こちらのプライドを傷つける。禁則処理や均等割付など、こっちで気の済むように手動でやる方がよろしい。もちろんそれが一般受けして普及したという事情はよく分かるのだが。

 OASYSの文書資産が使えなくなるのは非常に困る。それで、もしWindowsがOASYSを受け付けないまでにバージョンアップした暁には、パソコンの一台をネットワークから外し、OASYSでの文書作成専従にしないといけなくなる。
 なんのことはない、それならOASYS専用機と同じことではないか。文章を入力して編集して印刷するだけだったら、一瞬で起動してフリーズもなく場所もとらないしプリンタと一体になっているOASYS専用機の方が、よほど使いやすい。

 それで、専用機を買い換えたいと思っているのである。二軒回った店では、ほんとうに久しぶりに、各社のワープロがずらりと棚に並べられているさまを見て、懐かしさに感激してしまった。以前は大きな電器店どこでも見られたのだが。話題のPSE法は、ワープロは対象外だそうで、今月以降も問題なく売れるとか。大体2~4万程度の値が付けられていた。
 しかし、売りに出されているOASYSは、ほとんどがJISキーボード仕様のものであった。店の人の話では、親指シフト仕様は人気が高く、なかなか入荷しない。何人もの順番待ちになっているとのこと。考えてみればそうだろう。親指シフトにこだわらない人こそが、さっさとパソコンとwordに移行するわけで、こういう店にワープロを叩き売るような手合いは、親指シフトやOASYSに愛着がある人ではないのだろう。ファンは意地でも親指シフトのOASYS専用機を手放さないに違いない。わたしと同様、パソコンのOASYSに一応移行していても、OASYS専用機の使いやすさを捨てがたいのだろう。
 他の機種にはあったが、わたしの求めるスーパーディスク使用の親指シフトはなかった。
  悄然と東京を後にした。機種を妥協して親指シフトを買うか、キーボードを妥協してスーパーディスクを生かすか。あるいはいっそ二台買うという選択肢もあろう。もう少し考えてみようと思う。
 ビンテージブームにのって、富士通がOASYS専用機復刻版でも作ってくれないか、と思う。 

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コメント

はじめまして。ココログ間でのトラックバックはあまり調子が良くないので、コメントにて失礼します。

親指シフトに関するブログを作っています。こちらの記事を引用させていただきましたので、よろしかったらご覧下さい。

親指シフトの良さをなるべく多くの人に知ってもらいたいと考えています。

http://thumb-shift.txt-nifty.com/contents/2006/04/re_1_c62c.html

投稿: 杉田伸樹(ぎっちょん) | 2006年4月30日 (日) 23時45分

●ぎっちょんさん

 初めまして。宿直にあたっていましたので、返信が遅くなりました。

 ブログを拝見しました。親指シフトのファンが大勢いらっしゃることに、改めて驚かされます。
 日本語の入力にはこれほど優れた物はないと思うのですが、英字入力しなければならない場面も確かにあるので、二種類の配列を指に覚えさせるのは非効率、というふうになってしまうのですね。学校での情報教育でも、プログラミングなどが入ってくると、どうしても日本語もローマ字入力で、となってしまいます。
 結局、わたしのように99パーセント日本語の文書だけを打つような者しか、親指シフトにこだわらない、ということで、やはり少数派になります。傍から見てる人は、「入力が心地よさそうですね」なんて言ってくれるのですが、自分もやってみよう、という人はなかなか出てきません。

投稿: まるよし | 2006年5月 3日 (水) 12時03分

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