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2006年4月 7日 (金)

入院を祝して

  卒業生の中には、ちょうどこのタイミングで大学院に進学する者もいる。入院おめでとう(ちょっと早いか?)。

 わたしも、院に入った時は、先輩からそのような言葉で歓迎された。大学院の合格発表は教育実習の最中だったので、担当クラスの生徒にも報告した。
「先生は大学院に行くんやで」
「大学院? 何それ。先生何か悪いことでもしたん?」
「悪いこと? そんなんしてないよ」
「でも、大学院って犯罪犯した子とか行くとこちゃうん?」
「それは少年院!」

 しかし、大学院と少年院、ぜんぜん違うものにおなじ「院」の名が付いているのは面白い。
 「院」という字が表すニュアンスは、「俗世間を離れたステージである内面的活動に専念する環境」といったところだろうか。
 俗の世界を抜けた人(あるいは天皇)が世を見守りつつ神事や仏事にあたる(寺院・修道院その他)。リタイアした人がゆったり余生を送る(養老院)。療養して健康を回復する(病院)。枢密院や人事院なども、俗を脱したうえで政治や人事を考える、というのが本来の機能なのだろう。さらに、人生を終えた人には「院」の字を含む諡を奉じて黄泉の国へ送り出す。
 大学院というのも、本来は世間の流れや利害をとらわれることなく学問を極めていくための場所なのだろう。大学院が産官学とやらの連携にからめとられるのも自己矛盾しているわけで、孤高の研究を貫くべきだと思うし(こういうことを言うと、「今時何を言っておるか。そうしないと生き残れないのだ」という無思慮な説教が飛んでくるのだが)、そのためにもモラトリアムの駆け込み寺であってはならない。

 わたしの周囲にも、高専の卒業生で大学院に行こうという人は多くいるわけだが、その大学院選びに、わたしはあんまり有益なアドバイスをし得ない。わたしにとって、大学院はそもそも「選ぶ」ものではなかったからである。大学院に進学する、と決めて、さあどこの大学院に行こうか、という順序ではなかった。そこの研究室で勉強したい、そのためには大学院に入るのが穏当、というのが思考手順であった。大学院を第一希望、第二希望と序列づける発想は全くなかった。仮にその大学院に合格しなかったとしたら、進学はあきらめるか、研究生か何かでもぐり込むか、だっただろう。
 時代の違いか、学問領域の違いか、その両方かは分からないが、行く先も定めずに、でも大学院に行きたい、という考えようが、理屈では分かっても、実感として理解できない。
 
 「大学院」という名称は、したがって、場所や施設を指すのではなく、精神的な概念、世界観の名称なのではないか、と思う。。「大学」とは異なるのだ。物理的には大学の中にしか大学院はないのだし。金沢に行って、「北陸先端大行」というバス路線があるのを見て、それはいいのだが、終点の一つ手前の停留所が「大学院口」という名前なのは、違和感極まった。そういう意味では、大学に入るのが「入学」とすれば、大学院に入るのは、別の用語をもって充てるべきだろう。「入院」はあんまりだとしても、「開修」とか「進壇」とか。終わりの方は「卒業」と「修了」と用語が異なるのだし。少年院は入院・退院なのだろうか。

 大学院生の方は是非、自分が必要だと思う、自分しかできない研究をしてください。そして、研究に身を投じる意欲と使命感に燃え、学問を愛する人にこそ大学院を志望してほしい(理工系はこの感覚が麻痺して単なるキャリアとしてしか捉えない傾向があるからなあ)。まあ、今更わたしが言ったところで世の中の趨勢は変えられるはずもないが。
 とにかく真の自由が大学院にはある(かも)。自由には不安と責任がつきものだが、それにうち克って、楽しい研究をしてくださいね。今から具体的な研究計画がなくてもいいです。入院時点でそんなものができている院生も珍しいし、できていたら、面白い研究にはならないと思う。しがない新米院生が考えつくような研究テーマは、必ず先人も考えついていて、既にその二歩先まで明らかにされているものです。そのさらに先を思いつくには、まず教養を深め専門の知見を確かなものにしなければなりません。

 大学院で研究しようとしている皆さんのご健闘を祈ります。

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