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2006年8月 6日 (日)

よく分からない擬態語

 気になることばを定期的に記事にしているが、今回は擬態語を四つほど。擬態語というのは、何かのようすをことばの音に写すものであるが、何の様子に由来しているのか、よく分からないことばがあるのである。

まったり
 まずはやはりこれだろう。
 この語自体は特に最近流行しはじめたわけではないが、最近、「ゆったりした気分で過ごす様子」を表す新たな語義で使われることがWeb上でよく見られる。が、もちろん元々そんな意味はなく、味の形容をする擬態語である。
 わたしがこの擬態語を初めて実見したのはあの佐川君の本であり(わたしの世代にはそういう人が多いと思う)、人肉(生食)の味をこう表現していて、使用語彙でなかったにも関わらず、その舌触りや歯応えがなんとなく伝わってきたから不思議である。これが擬態語のいいところだ。
 最近流行の語義も、正しい用法とはいえないが、ニュアンスは分かる。ゆったり よりは湿度が高いというか、椅子や布団と体の間の粘着力が強いような気がするのである。なぜこういう語義が生まれたのか、興味をそそられるところだ。まあ何にせよ、この語義は公的な文章に使えるほど熟してはいないから、注意が必要である。

 
さくさく

 これは十年くらい前から聞くようになったが、これがまた分からない。
 いや、擬音語の 索々 とか サクサク はそのままだから分かるし、言葉をスムーズに発するとという意味の 嘖々 鑿々 も聞いたことはある。しかし、この さくさく はそれらとは違うようで、「物事を手際よく処理していく様子」を表すように思う。与えられた仕事について、さくさくっとやってしまおうぜ といった学生の発話をその頃から聞くようになったのである。
 これなども、どこかの彩図か何かで比喩的に(恐らく 嘖々鑿々 とか、あるいはスナック菓子を サクサク 音を立ててやめられないとまらないとばかり一袋一気に食べてしまう様子からの類推で)使われたのをきっかけに流行ったのではないか、と推測するが、はっきりした由来を知らない。スムーズな感じは音に出ているし、そもそも サクサク と訓む擬音語擬態語にもさまざまな意味があるのだから、そこに意味が一つ加わっても、それはそれでいいような気もする。が、やはりいずれにしても、公の場で使うところまでは熟していない。

 
がっつり

 このところよく聞くようになった語である。おそらく何かのテレビ番組か何かで使われ始めたのではないか、と推測する( まるっと のように。実際流行るようになる経過は全く知らないのだ)。
 食べる という動詞に係ることが多く、朝を控えめにして、ランチでがっつり食べるというような使われ方をする。がっぷり・がっちり・がつがつ といった既成の擬態語いくつかのイメージを重ねたもののようである。しっかり食べる と言えば用が足りるように思われ、それとどう意味が違ってくるのか、もうひとつよく分からない。
 多少品が悪くなる感じはあり、あまり好きになれない語だ。まるっと は言い得て妙で大好きなのだが。

 
しゅっ(とした)

 主に若い男性の容貌を形容する語である。彼はしゅっとした顔してる というように使われるのだが、大変な美男子というほどではないが、ちょっと見栄えがいい感じの時、それも、芸能人やモデルなどその道のプロではなく、素人の男性について使われることが多い。
 それにしても、この しゅっ は何の擬態なのであろうか。輪郭や表面が滑らかで余計な皺や吹き出物がないような感じはするが、よく分からない。
 他人の顔を正面切って誉めるというのも照れくさかったり嫉妬心が過ったりするものであるから、こういうよく分からぬ言い方で評価をぼかすのであろうか。

※ このカテゴリーの記事のように、まるよしの楽しい日本語の話を満載した本、ぜひお手に取ってお読みくださいね。

 『まるごと とれたて 日本語談義 -ラジオ番組『高専ライブ』で語ることばの話-』
 桐島周 2016 勝木書店 定価1500円(税込)
 
ISBN: 978-4-906485-09-3 
 (桐島周は、まるよしのペンネームです)

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5.6  言葉の動向」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。とりあえず私の感じたところです。
> まったり
わたしが最初に見たのは,京都の人の随筆でという記憶があります。茶道関係の人だったと思います。「まったり」「はんなり」という言葉が最近廃れてきた・といった内容。読んだのは中学のとき(1975ころ)です。
> さくさく
この用例としては,大学のころ(1980)に,マージャンのコミックスで見たのが最初です。「さくさくツモる」と,ツモる動作だけにつける言葉でした。学生のマージャンの現場では結構はやっていました。そこから派生したのでは・とも思います。なぜ「さくさく」かは考えてみると良くわかりませんね。

投稿: Hyaru | 2006年8月 7日 (月) 09時23分

 その京都の人の言う「まったり」のニュアンスを知りたいですね。「はんなり」はまさに京都っぽさが出ていますが。
 わたしは卓上遊戯には疎いので、「さくさく」のそういう用法が四半世紀も前にあったことを知りませんでした。ご教示ありがとうございます。

 

投稿: まるよし | 2006年8月 7日 (月) 19時43分

「まったり」ですが,まるよし先生書かれてるような「味の形容」の方だった記憶があります。あんこのお菓子がどうの・というような。もともとは京言葉なんでしょうか。

例の「さくさく」は,「粛々と」と大変似た意味のように思えます。あるいは,音だけ聞いてなんとなくイメージのある「さくさく」と誰かが誤用したのでは?とこれは勝手な想像です。

ところで「しゅっ(とした)」という表現は今に至っても耳にしていません。。。

投稿: Hyaru | 2006年8月 7日 (月) 23時01分

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