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2006年10月26日 (木)

学生による旅行情報検索の奇想天外

 勤務校では、3年生の11月に工場見学旅行という行事を催す。これはある意味で五年間の高専(本科)生活で最大のイベントと言えよう。月曜から土曜のまる一週間にわたる旅行というだけでも他の校種にはあまり見られないものだが、さらに特異なのは、これが木曜日の昼に旅先で解散し、あとは「自主研修旅行」と称して各自で帰って来い、となっていることだ。谷底に子を突き落とす獅子にも似ているが、帰って来ない者がいると大変なので、周到に計画を立てさせる。これもデザインマインドを鍛える教育と言えよう。

 今回わたしが副担任としてこれの引率にあたり、わたしも人並みよりは多少旅慣れていることもあり、学生の旅行計画の相談にのったりしているが、本当に帰って来ない奴がいるのではないか、と危惧されるような心もとなさだ。何にしろ、旅行など自分で計画を立てて行ったことのない学生が大半で、一人で県外に出たことのない者、電車の切符を自分で買ったことがない者も珍しくない。遠出といえば親のクルマに便乗するのだろう。そういう者が頭の中の日本地図を頼りに計画するから、大変なのだ。今回の解散地は博多駅である。

 わたしに質問してくる者にしても、質問のし方が下手だ。何を訊いていいのかが分からないのだろう。わたしも意地悪く答える。

学生「博多から大阪まで一番安く行ける方法を教えてください」
わたし「歩けばただですね。あとはヒッチハイク」

 こういう質問は、条件をつけてくれないと答えようがない。予算はいくらぐらいか。いつからいつまでの間に移動したいのか、などである。
 特に今の学生は、夜行を活用するという発想に乏しい。旅行業者も勧めないのかもしれないが。宿代と時間を大幅に節約できるという意味で、使わない手はないと思うのだが、そこには眼が向かないのだ。十年前に引率した時は、わたしを含めて博多駅のホームが寝台特急「あかつき」を待つ高専生でいっぱいだったのだが(学生は指定席車、わたしはB個室に乗った)。もちろん夜行バスも安くて便利だ。

学生「神戸で見に行ける観光地を教えてください」
わたし「どうゆう類の観光地に行きたいんや」
学生「何でもいいです。先生のおすすめで」
わたし「じゃあ、湊川神社参詣、須磨の古戦場と史跡めぐり、ワイン城で神戸ビーフのフルコース…、」
学生「そういうんじゃなくて、もっとおしゃれなスポットとか、安くておいしい食べ物屋とか」
わたし「ほんなら最初からそういう条件を言え!」

 単に観光地を並べさせるなら、わたしに訊かなくてもガイドブックを見ればいいのだ。ウェブで「神戸 観光地」とキーワードを入れて検索してるようなもので、これでは求める情報は出てこない。

 あるいは、自分で立てた計画のチェックをわたしに依頼する学生もいる。もとよりラフスケジュールだが、これが凄まじい計画である。

一日め 博多 12:30 → 13:00 久留米(久留米ラーメンを食べる) 14:00 → 14:30 博多 …

わたし「博多から久留米まで三十分で行けるの?」
学生「多分そんなもんでしょう」
わたし「JRで行くの? 西鉄で行くの?」
学生「西鉄ってのもあるんですか?」
わたし「まず時刻表で調べなさい」

…→ 21:00 下関(ふぐ・泊)

わたし「ふぐって何?」
学生「晩ご飯にふぐを食べるんです」
わたし「ふぐを? それも夜九時からご飯て」
学生「だめですか」
わたし「九時じゃ、飲み屋しか開いてないぞ」
学生「飲み屋にふぐはないんですか」
わたし「あるけど、そういう店でふぐ食べたらいくらかかるか知ってる?」

学生「はあ」

二日め 下関 9:00 → 10:00 広島(お好み焼) 11:00 → 12:00 尾道(尾道ラーメン)13:00 → 14:00 神戸 … 

わたし「あのね、このどこからどこへ移動するのも一時間、という根拠は何?」
学生「国内だったらだいたい一時間くらいで行けるって聞きましたけど」
 航空路線の所要時間か何かの話と混同している。
わたし「日本は君たちが考えてるよりもう少し広い。リニアかどこでもドアでもないと無理だろう」
 却下して帰らせる。

別の学生。
「博多から原爆ドームまでどれくらいかかりますか?」
「博多と原爆ドームというポイントの大きさがつり合ってない」
「原爆ドーム行のバスか何かで移動できるのかなと思って」
「博多駅から原爆ドーム行はないと思うぞ」


さらに別の学生。
「福岡で原爆ドームは見ときたいんです」
「いや、福岡にはないから」

「え? あ、広島か」

さらに別の学生。
「長崎の原爆ドームって博多駅から近いですか」
「日本全体からみたら近いと言えんこともないけど、長崎駅まで特急で二時間かかるぞ。それと長崎は原爆の記念館はあると思うけど、ドームはないぞ」
「え、長崎って福岡の市内じゃないんですか」
「違います」
「あの、ラーメンが美味しい所だと思ってましたけど」
「それは長浜。まあ、長崎もラーメンは美味しいけどね」
「じゃあ、北九州に原爆ドームありましたっけ」

 いったい日本に何発原爆が落ちたのだ。

 以前のクラスでは、荷物を数人でコインロッカーに入れたが一人友達とはぐれ、コインロッカーの場所も分からず、手ぶらで夜行に乗って福井まで帰って来た奴もいる。荷物は友達によって先に福井まで戻っていた。あるいは、家に帰り着いたとき、所持金が4円だった奴も。
 今回はどんなハプニングが起きるか。ハプニングは話で聞けば面白いが、当事者はけっこう大変だから、無事に旅行が終わってほしいものだ。

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コメント

朝から大笑いさせていただきました。
旅行は生活の総合力が試されますね。しかし,福井はすぐ車に頼る風潮が強すぎるようで,その意味では子供たちは不幸かも知れません。私も自分の子供に対しては,なるべく頭を使って移動するよう,事あるごとに仕向けてますが,なかなかです。

投稿: Hyaru | 2006年10月27日 (金) 08時43分

 福井では、公共交通を使いこなすのに頭を使いますね。
 九州から帰ってくる旅行となると、交通機関にも使う切符にも、無限の選択肢があって、センスが問われます。でも、学生たちは億劫なのか、けっこうまっすぐ帰ってくる者が多いようです。

投稿: まるよし | 2006年10月27日 (金) 23時09分

> 無限の選択肢があって

旅行好きというか,乗り物好きにはわくわくしますね。
九州はひところ仕事で通い詰めていました。印象に残ってる経路は夜行バスです。鉄道と違い橋を渡るので,海峡の存在を実感しました。なお大阪行きでなく京都行きだと空いてるし安上がりです。誰か採用するでしょうか。

投稿: Hyaru | 2006年10月28日 (土) 00時47分

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