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2006年12月14日 (木)

バイオニック・ジェミー

 『地上最強の美女バイオニック・ジェミー』(原題『The Bionic Woman』)という米国のTVシリーズをご存じであろうか。わたしが中学生くらいの頃に、日本でも放送された。
 主人公は、ジェミー=ソマーズという二十歳台後半くらいの女性。ジェミーはスカイダイビング中の事故に遭い、命に関わる重傷を負うが、体の組織の一部、右耳・右腕と両脚の中身を機械に置き換える手術を受け、サイボーグ(このドラマでは「バイオニック」と称する)として蘇生する。それらの部分は超人的な能力を発揮することになる。彼女はその能力を活かし、OSIという、CIAを思わせるスパイ組織に所属して極秘の潜入捜査などに従事する。表向きの職業は教師である。教師をしながらよくそんな副業をする暇があるものだが、そこらの環境は裏で整えられていたのかもしれない。
 ジェミーを演じたのは、リンゼイ=ワーグナーさんという女優である。可愛らしさと知的なムードを兼ね備えた人で、わたしの好みにもあったこともあり、楽しみに観ていた。また、日本語版でジェミーの声を吹き替えていたのは、今も名脇役として活躍する女優の田島令子さんである。この声がまたよかった。

 このドラマの魅力は、こういう奇想天外な設定でありながら、ジェミーがとても人間臭い感情の持ち主であり、自分の能力に関して、ときにヒステリックなほどに悩んだりすることである。単なるヒーローものにはなっていないのだ。ちょっと『鉄腕アトム』に通じるところもあるが、アトムは純粋なロボットであるのに対し、ジェミーの脳自体は人間そのものであるところに、リアリティーがある。
 マッドサイエンティストが開発した人間そっくりのロボットが、いつの間にか人間とすり変わって、組織を侵食していく、という事件が起こった回があった。この時は、同じくバイオニック手術を受けた男性とペアを組んだジェミーが、ロボットと対決する。
 あるいは、別の科学者が人類を滅亡させるようにプログラムしていた巨大コンピュータの内部にジェミーが潜入し、その暴走を阻止しようとする、という回もあった。
 もちろんどちらもジェミー側が勝つわけである。その勝ち方が両方同じで、バイオニックは人間であるが故に、人の心の作用によって理論上の計算を超越した能力を発揮することで、ロボットやコンピュータを振り切る、というものである。人間と機械とがうまく融合し補いあうことで、最大の効果を発揮するべきだ、という主張がみてとれた。機械に頼りすぎる社会へのアフォリズムが込められていたのである。そういう回がわたしは特に好きだった。
 コメディータッチの大活劇仕立ての回もあり、それはそれで痛快だった。また、いろんな世界に潜入させる展開は、リンゼイ=ワーグナーのコスプレ的な要素も狙われていたのだろう。しかし、根底に流れるのは機械文明批判であり、それを敢えて体内に機械を宿す女性の眼を通じて描くところが新鮮であった。

 後番組の『地上最強の美女たちチャーリーズ・エンジェル』の方が人気が出て有名になったことが、わたしには不満である。あれこそ悪趣味な倒錯した活劇に過ぎないと思うが、そういう分かりやすさが受けるらしい。『バイオニック・ジェミー』のやや説教臭いところが嫌われるのかもしれない。かくして、『バイオニック・ジェミー』はDVDすら出ていない。時々無性にジェミーに会いたくなるのだが、何とかならないのだろうか(2010年6月追記:その後DVD化が実現しました。こちらの記事参照)

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7.2.5.0  TVドラマ」カテゴリの記事

コメント

>『バイオニック・ジェミー』という米国のTVシリーズをご存じであろうか.
私も大好きでした。田島令子さんとリンゼイさんがベストマッチングでしたね。
愛車がDATSUN(日産)のフェアレディ-Zでした。
ロボットがすり替わった人物を見抜くのに、絨毯の沈み具合に気付いた(ロボットは重い)。
今でも印象的に、記憶に残っています。ロボットにはない、感、の世界ですね。
最後に、上司に向かって「・・・よね、ボス」と言っていた記憶があります(粋だと感じた)。
小生も、もう一度、見てみたいです。

取り急ぎ、。

投稿: Namaz-Coordinator | 2006年12月15日 (金) 10時53分

> ロボットがすり替わった人物を見抜くのに、
> 絨毯の沈み具合に気付いた。

 ゴールドマン局長のロボットですね。万年筆を踏ませてみたら粉々に、というシーンが思い浮かびます。それに気づかないとは、案外鈍感なロボットだな、と思いました。

投稿: まるよし | 2006年12月15日 (金) 21時47分

やっほ!まるよしサン♪
私もバイオニックジェミー、大好きです。(なぜか600万ドルの男はあまり好きではなかったのですが)どれくらいファンだったかというと田島令子さんが歌う挿入歌シングルを今でも後生大事に持ってるくらい(笑  高校時代バイリンガル放送を視聴できる友人宅ではじめてリンゼーの声を聞いた時にあまりの低い声にかなりのショックを受けた覚えもあります。女の子にジェミィは人間じゃなくロボットレディだとか言われて傷つくシーンが印象として残っています。愛犬マックスもバイオニックでしたよね。うーん、懐かしいです。  海外ドラマつながりということでシャナンドハーティ主演の「チャームド」も大好きです!

投稿: KAZUKO | 2006年12月17日 (日) 00時14分

●KAZUKOさん
 けっこう遅い時間の放送だったと思うんですが、オープニングの「イカワ ゴクヒジョーホー サイコーキミツ…」というナレーションが始まると、もうわくわくしてテレビにかじりついたものです。

> どれくらいファンだったかというと田島令子さんが
> 歌う挿入歌シングルを今でも後生大事に持ってる
> くらい

 あの歌がレコードになっていることも知りませんでした。それは筋金入りです。

> はじめてリンゼーの声を聞いた時にあまりの低い
> 声にかなりのショックを受けた覚えもあります。

 日本語版でも、宇宙人の少女に歌を歌ってあげる場面でリンゼイの肉声が聞けたと思います。アフレコとは音質が異なるとはいえ、田島さんの声とはちょっと違うイメージでしたね。

投稿: まるよし | 2006年12月17日 (日) 11時23分

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