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2007年1月12日 (金)

大物歌手になるには

 十数年前に『逸見のその時何が』という番組があった。司会の逸見政孝さん・パネラーの上岡龍太郎さんが、ゲストを招いてその人の人生を語り合うトーク番組であった。レギュラー二人の顔ぶれから分かるように、知的なユーモアが散りばめられたトークで、わたしの大好きな番組であった。

 その番組の中で、上岡龍太郎さんは、レコード大賞を受賞するような大物歌手の名前には共通した特徴がある、という珍説を開陳していた。上岡さんが引退した今、この説が語られることも少ないと思うので、紹介しておこう。大物歌手を目指す向きは、この条件に合う芸名やグループ名をつけるとよろしい。

 といっても、さほど複雑な条件ではない。姓、名、もしくはグループ名がイ段音で終わるというものである。
 番組でもパネルで紹介していたが、ここでも、歴代のレコード大賞受賞歌手の名を列挙して検証してみよう。番組の時よりも十数名データが増えている。この条件に合致する名前を赤字で示す(以下、歌手名などは敬称略)。

昭和34年 水原
昭和35年 松尾和子/和田弘とマヒナスターズ
昭和36年 フランク
永井
昭和37年 幸夫・吉永小百合
昭和38年 梓みちよ
昭和39年 青山和子
昭和40年 美空ひばり
昭和41年 幸夫
昭和42年 ジャッキー吉川とブルー・コメッツ
昭和43年 ジュン
昭和44年 佐良直美
昭和45年 菅原洋一
昭和46年 尾崎紀世彦
昭和47年 ちあきなおみ
昭和48年 五木ひろし
昭和49年 森進一
昭和50年 布施明
昭和51年 都はるみ
昭和52年 沢田研二
昭和53年 ピンク・レディー
昭和54年 ジュディ・オング
昭和55年 八代亜紀
昭和56年 寺尾聰
昭和57年 細川たかし
昭和58年 細川たかし
昭和59年 五木ひろし
昭和60年 中森明菜
昭和61年 中森明菜
昭和62年 近藤真彦
昭和63年 光GENJI
昭和64/平成元年 Wink
平成2年 堀内孝雄 / B.B.クイーンズ
平成3年 北島三郎  / KAN
平成4年 大月みやこ / 米米CLUB 
平成5年 香西かおり
平成6年 Mr.Children 
平成7年 trf
平成8年 安室奈美恵
平成9年 安室奈美恵
平成10年 globe
平成11年 GLAY
平成12年 サザンオールスターズ
平成13年 浜崎あゆみ
平成14年 浜崎あゆみ
平成15年 浜崎あゆみ
平成16年 Mr.Children
平成17年 倖田來未
平成18年 氷川きよし

 なかなかの高率であてはまっている。延べ51組中32組(約62.7%)が赤字になっている。
 上岡さんは、あてはまっていない名前も、どこかイ段終わりに縁があるのだ、とこじつけていた。曰く、グループの場合、マヒナスターズはリーダーが和田ブルー・コメッツジャッキー吉川である。 寺尾聰はお父さんが宇野重吉布施明は別れた嫁はんがオリビア=ハッシー。曰く、受賞歌手以外でも、一世を風靡したような大物歌手は、必ずイ段終わりの名前である、矢沢永吉長渕剛山口百恵松任谷由実、などなど。曰く、北島三郎がそのキャリアと実績に関わらずなかなか大賞を取れなかったのは、名前が悪い。
 こういう強引な論理展開が上岡さんの魅力で、わたしも大笑いしたものである。その伝で他のあてはまらない歌手もあてはめていくと、近藤真彦は愛称がマッチMr.Childlenはリードボーカルが桜井和寿である。Winkは辛うじてメンバーの一人が鈴木早智子サザンオールスターズはリーダーの桑田佳祐、その妻の原由子ともにあてはまらないが、何とその他のメンバーが全員イ段終わりの名である(松田関口和之・野沢秀行大森隆志大森は当時のメンバーで、現在は脱退)。

 さて、ことばの観点から人の命名について冷静に考えると、特に日本人の下の名に関しては、動詞の連用形・形容詞の終止形に由来するものがよく使われ、落ち着きがいい、ということがあるので、イ段終わりの名前が元来多いはずなのである。だから、この法則が大物歌手だけにあてはまるのかどうか、そもそも日本人の名前の中でイ段終わりが占める割合と比較しないと、この説の当否は分からない。わたしが今受け持っている7クラス284名の学生のうち、イ段終わりの名前なのは、数えてみると153名(約53.9%)である。先の数値との差が有意であるのかどうか。
 しかし、野暮なことは言わないでおこう。この説の面白さは捨てがたいからである。

 ところで、この説が同番組で出されたのはなぜかというと、この番組が改編期を機にリニューアルすることになり、新たな番組名をどうするか、という話になったわけである。上岡さんは、この新番組が大物番組になるためには、イ段音で終わる名前にしなければならない、として、『知ってたつもり』という番組名を提案したが、当然却下される。
 その後、上岡説が採り入れられた結果かどうかは知らないが、番組名は『逸見・上岡の迫ってGABURI!』に決定した。しかしながら、その直後に逸見さんはがん闘病のための休業に入り、そのまま死去したため、この番組は幻と終わった。期待していたので、残念きわまりない。

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 桐島周 2016 勝木書店 定価1500円(税込)
 
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コメント

ということは、伊藤咲子はあてはまらなくて、美咲ならOKですか?

投稿: 美咲 | 2007年1月12日 (金) 21時25分

 ああ…(苦笑) 内容が内容だけにその名前だけは出すのを避けたんですが…。サッコさんごめんなさいね。サッコさんの歌は賞と関係なく最高です! 
 まあ、これは上岡さん一流の洒落ってことで、そんなふうにいろいろな名前をあてはめてみるのもおもしろいと思います。

投稿: まるよし | 2007年1月12日 (金) 21時36分

ということは、美咲さんも、まるよしさんもですね? あっでもハンドルネームや芸名でもOKって事ですかね? でしたら私も本名の苗字もあてはまりますが 笑

投稿: かなみ | 2007年1月12日 (金) 22時05分

●かなみさん
 そういうことになります。だからといって、わたしは大物でもなんでもないんですが…。

投稿: まるよし | 2007年1月12日 (金) 22時53分

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