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2007年2月11日 (日)

匙加減の微妙さ

 カフェを利用するのが好きだ。というより、「喫茶店」が減り、カフェが増える傾向にあるので、自然そういう店でお茶することが多くなるのである。チェーン店もあれば単発のおしゃれな店もあり、楽しい。パン屋併設のカフェコーナーが意外と美味しいコーヒーを出していたりすることもある。行きつけの店は何軒かある。
 そういう所でも、言葉遣いというのが気になるわけで、チェーンのカフェのマニュアルトークから、個人の店の素朴なもてなしまで、さまざまだ。

 そういうなかで、今回は掲示に注目した。二つのチェーンで掲示の言葉遣いが対照的だったのである。

 Aチェーンの店では、食器返却口にこんな掲示がある。

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 これはやっぱり違和感がある。
 まず、使用 するのはお客さんだから、をつけて丁寧に言うのはいいが、使用済み となると微妙なところ。まあそれはいいとして、やはり おさげください が決定的におかしいだろう。どう考えても、下げる という動詞自体に謙譲のニュアンスが含まれるからである。店員が おさげします と言うのはいいが、おさげください では謙譲と尊敬が干渉してしまい、現代語としては誤った用法である。客が自分で食器を返すのだから、動詞は 返す・返却する だろう。

 かと思うと、Bチェーンではこんな掲示だ。

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 これはまた過剰な敬語のように思う。ご使用になられた は二重尊敬でやはり現代語としてはおかしいし、お返しくださいますようお願いいたします も、間違いとは言わないがずいぶん敬語が不必要にひしめいている。そこまで敬うなら自分で下げろよ、と言いたくなるほどだ。カフェというのはカジュアルな雰囲気が一つの売りであろうから、ここまでしなくてもいいのではないか。

 結局、召し上がった後の食器類は、こちらにお返しください くらいが妥当なところではないかと思うが、いかがか。まあ、この掲示を見つけた時点で返却口の場所は分かっているだろう、というつっこみはおいておいてほしい。

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5.2.0 街のことば」カテゴリの記事

コメント

客に食器を下げさせつつも言葉の上では敬っておこう・というのが難しいところなんでしょうね。関連して,某ドーナツチェーンでは食器を下げると「恐れ入ります」と言われますが,私は何か変な感じがします。じゃ,どう言えば?と尋ねられても良い案はないんですが。
ついでに尊敬語。先日発表された新しい尊敬語の分類で,謙譲語が2つに分類されました。あれがテストに出されたら私には解けそうもありません。

投稿: Hyaru | 2007年2月11日 (日) 22時37分

 客が食器を返すような店は、ほっといてくれる気やすさが一つの売りなんだから、そんなに丁寧にしなくてもいいよ、と思いますね。学校の食堂なら、食器を返すとおばちゃんが「ありがとうございましたー」、こちらは「ごちそうさまー」、となりますが、まあそんなところが自然じゃないかと思います。
 敬語の新分類については、これまでの日本語学の研究の経緯からすると、ああいう分類になるのは分かるんですが、何分にもネーミングが研究者の発想のままです。もう一工夫しないと、小中学生には理解できません。これは記事を改めていずれ。

投稿: まるよし | 2007年2月11日 (日) 22時51分

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