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2007年3月22日 (木)

華麗なる神戸市電 下

 前記事のごとく輝かしい歴史を背負う神戸市電であるが、わたしは残念ながら最晩年にして斜陽期の神戸市電しか知らない。それでも、緑のボディで街を行き交う姿はカッコよく目に映じていた。贔屓目かもしれないが、大阪や京都の市電と比べても、軽快で洗煉されたスタイルだと思う。わたしが住んでいたのは市電の路線が及んでいない郊外であったが、休日に都心に連れて行ってもらうときには、市電を見るのが楽しみだった。
 市電廃止後も、時代を先取りする姿勢は神戸市交通局に通底していた。例えば、シルバーシートに代表される優先座席の類は、神戸市バスのオレンジシートが最初である。一方で、市バスや市営地下鉄の塗色を市電と同じ緑にしたり、地下鉄の車体番号の書体を市電のそれと同じにしたり、と伝統を守る意志をもみせている。こうした新しさと古さとが同居しているのが港町神戸そのものなのである。

 こういう神戸市電だから、いい加減なものを映してほしくないのである。

 しかるに、『華麗なる一族』中、神戸の街を模したセットの中を走る神戸市電に木村拓哉さんも乗るのだが、その電車が何とオープンデッキの木造(風)車輌である。こんな車輌が明治時代ですら神戸を走ったことはないし、ドラマは昭和30~40年台の設定のはずであるから、大いにおかしい。トロリーポールで集電しているのも時代が合わない(だいたい、このドラマは人物の髪形・服装や建物の内装なども、昭和30~40年台というより昭和戦前か大正時代の雰囲気が漂うように思う)。
 車体が緑色になっていたり、「乗降者優先」の文字が入っていたり、方向幕が「神戸駅」だったり、「2」という系統番号札が入っていたり、「1157」という車体番号が入っていたりすることから、ある程度神戸市電の資料も見て再現しようと努力したことがうかがえる。
 しかし、緑色はあんなくすんだ色でなく鮮やかな真緑だったし、方向幕はあんな屋根の上でなく幕板に付いていたし、1157号車は実在したが、1150形は当時最新型の高性能車輌でもちろんスマートな神戸市電スタイルだったから、劇中の電車とは似ても似つかぬ。2系統は「神戸駅」という方向幕は表示していなかったし、セットは栄町通を想定していると思われ、2系統はそんな所を通らない。
 文句ばっかり並べたが、これはうるさいマニアの粗探し、一般の視聴者にはそれなりの雰囲気が出ればそれでいいのだろう。それに、中途半端な再現しかできなかったことには、スタッフに同情するべき事情もあったのである。

 と言うのも、番組の彩図を見ると、これは上海にある大規模な映画用セットを用いて撮影されたようだ。このセットは、市街が路面電車も含めてつくりつけになっていて、撮影する作品に合わせて町や電車の外装を変えるだけらしい。だから、電車のデザインそのものまでいじることができなかったのかもしれない。
 いかにもやることの大味な中国らしいが、つくりつけにするのなら、もっと電車の骨格だけにして、忠実なデザインの車体を張りぼてででも被せられるようにしてくれればいいのに、とも思う。これは番組スタッフの責任ではない。この辺は撮影の時間や費用やスタッフのこだわりやいろいろなものの兼ね合いでどんな電車になるかが決まるのであろう。
 そういう意味では上海まで出かけて街の雰囲気を出そうとしたスタッフの意気込みを多とせねばならないが、例えば映画『三丁目の夕日』の都電など、CGゆえか非常に正確に再現されていたので、惜しい気がする。

 とりあえず、番組スタッフ苦心の作の神戸市電はこれ↓である。

TBS『華麗なる一族』「MAKING OF」7-5
http://www.tbs.co.jp/karei2007/repo7_5.html

 そして、実際の神戸市電の画像が多く載っている彩図がここ↓。「懐かしの写真」コーナーの「車庫内2」のページのトップがまさに1157号車のカラー写真である(というか、番組スタッフももしかしてこの写真を元にしてセットの電車に手を入れたのではないかとも思う。「神戸市電」で検索してトップに出るのがこの彩図だし)。

『懐かしの神戸市電』
http://kobe.kamomeline.jp/

 ドラマも隅々まで作り込むのはなかなか大変なことだなあと思う。目の肥えた視聴者が多いので。スタッフの皆さんご苦労さまです。

 なお、この1157号車は、神戸市電全廃後、広島電鉄に譲渡され、広島の市内電車として走った後、平成12年に二度目の引退をして廃車となった。が、同型の1156号車は現在も走っている。色は塗り替えられているが、流麗な神戸市電スタイルを今に伝える唯一の現役車輌である。全廃から三十六年を経て未だ現役車輌が見られる、というのは奇蹟的なことであり、神戸市電の底力に感嘆するとともに、広島電鉄の配慮に感謝したい。

※ 上の神戸市電の写真を見てお気づきの方もあるかもしれないが、このブログの配色は、実は神戸市電を模しているのである。わたしの思い入れがお分かりいただけよう。

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コメント

こんにちわ。お久しぶりです。華麗なる一族面白かったですね。市電の内容を見ていたのですが確か自分も緑だったなと思っていました。
流石まるよしさん。市電の映像は目からウロコでした。それにしても旧太陽神戸銀行の内部は壮絶なものだったのでしょうか。今では住友グループですから驚かされます。。この作家先生も沈まぬ太陽ですとか、色々考えさせられる作品が多いです。地道な聞き込みや情報収集で出来た作品には重みがありますね。

投稿: はっちゃん | 2007年9月15日 (土) 14時33分

 神戸銀行→太陽神戸銀行→太陽神戸三井銀行→さくら銀行→三井住友銀行 とほんとに紆余曲折がありましたね。わたしは学生時代に地元の銀行で口座を作ったので、太陽神戸以降全ての名前の通帳を持っていますよ(笑)。
 公務員・準公務員の仕事しかしていなくて、経済に揉まれる企業の世界は全く想像ができないのですが、いろんな人の思惑があって、複雑なのでしょうね。その一端を見せてくれる、面白いドラマでした。

投稿: まるよし | 2007年9月15日 (土) 20時27分

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