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2007年6月25日 (月)

苛立つポスター

 この頃は駅に行ったり電車に乗ったりするたびに、苛々させられるのである。

 第57回社会を明るくする運動のポスターが近頃どこにでも貼ってある。これは法務省が主宰している運動らしいが、このポスターを見ると、どうも気になって見入ってしまい、乗り遅れたり降り遅れたりしそうになってよろしくない。 何が苛立つといって、正体が分からないのだ。

 左半分に「おかえり。」と大書されたポスターを目にした方も多かろう。その下には「更生への道のりには、/あなたの温かい支えが必要です」云々という文言があり、犯罪や非行から立ち直ろうとする人を受け入れる社会にしよう、という意図であることは分かる。保護司や更生協力施設のPRである。分からないのは、右側に映っているモデル? なのだ。
 この人がまた、男なのか女なのか、大人なのか子供なのか、さっぱり分からないのである。胸から上しか映っておらず、服はシャツブラウスか何かであり、性別や年齢の判定には役立たない。髪形も男女いずれでもあり得るようなものである。顔だちはよく整っている部類に入ると思うが、そこには男の精悍さも女のたおやかさもなく、単に図形としての美しさである。髭は生やしていないが、男性でも髭が薄い人は剃ってしまえば毛根もみえなくなる。さすがに五十歳や六十歳には見えないが、男子中学生と言われればそう見えるし、三十歳台の女性と言われればそう見えてくる。
 だからこそまじまじと見入ってしまい、いくら見つめてもこの人の正体が分からないので苛立ったまま離れることになるのである。元来がこういう顔なのか、処理した結果なのか。いずれにせよ、ここまでの仕上がりというのは、恐らく意図して属性を特定させない顔をここに配したということなのだろう。服の色が白ということも含め、無垢な心で新たな一歩を、ということが表現されているらしい。
 ただ、この人は、まっさらに生まれ変わって更生しようとしている立場なのだろうか。それとも、犯罪や非行の道に走った人を色眼鏡でなく見つめようとする立場なのだろうか。あるいはその両方か。これも分からない。

 こうやってわたしの気にかかり、こうやって語るということ自体がポスターの術中に嵌まっているということなのであろう。法務省の彩図(以前は「法務ページ」というなかなかにベタなタイトルだったが、現在は変わっているようだ)内にある「社会を明るくする運動」のページを見れば、このポスターも表示されている。

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コメント

見てみると、シャツが右前なので女性物ですね。
僕は始めてみたとき、山田花子さんに見えました・・・
よくよく調べてみると 太田莉菜さんというモデルさんらしいです。
http://www.okazaki-models.co.jp/linaohta/
参考までに・・・

投稿: かわやん | 2007年6月25日 (月) 23時40分

 なるほど。観察が鋭い。ボタンを見ればよかったのか。山田花子さんも見た目は中性的ですからね。モデル事務所の彩図の写真ではちゃんと女性に見えますから、ポスターはやはり演出されているのですね。

投稿: まるよし | 2007年6月26日 (火) 06時06分

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