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2007年7月10日 (火)

最終定理

 この頃、学歴を低く詐称して採用された公務員、という話がよく伝えられる。
 これが発覚したときの対応が、自治体によってさまざまで、厳しい所は即懲戒免職にしている。これに対し、先頃の大阪市は停職一カ月という処分で、やや甘いのではないか、という批判の声もあったようである。

 たいへん難しいことではある。大阪市長が記者会見で、就職難の時代でついやってしまったのだろう、というやや同情的なコメントをしていた。だから軽い処分で済ませた、ということなのである。
 そもそも高卒以下限定の採用枠というのは、学歴が比較的低い人の雇用機会を公の責任として確保しよう、という意図で設けられている。そこへ大卒が割り込めば、本来確保しようとした対象の誰かが不採用になっているわけで、その人の立場を考えれば、懲戒免職にして改めて本来の対象の中から補充する、というのは筋の通った処置である。就職難の時代だからこそ、そういう雇用機会はより強く確保する必要があったはずだ。
 ただ、現に何年もその仕事をしている人の生首を切ることは、生活を脅かすことにもつながり、抵抗があるのも事実である。退職金もなしに放り出すのも冷たい。これはやはり、処分としては停職にしておいて、期限を切って自主退職を促す、というのが妥当なところではないか。停職の後のことは、大阪市も明言していないようだが。

 なお大阪市長は、このことで市民に迷惑をかけて申し訳ない、と陳謝していたが、謝る必要があるのか、と思う。悪いのは学歴詐称した職員であって、大阪市はむしろ被害者だろう。採用時にチェックする、といっても、大学を出ていることをチェックするのは簡単だが、大学を出ていないことのチェックは至難である。やろうと思えばほとんど身上調査のようなことになってしまい、人権の問題が出てくる。市の責任を問うのは酷である。
 職員の上司として頭を下げた、というのであればまあ分かるが、それでも組織としての不祥事ではなく個人の問題なのだから、どうなのかと思う。

 こういう事態が発生する背景には、賃金などの体系がいびつになっていることがあるのではないか。要するに、大卒者が民間で就職するよりも、高卒以下限定の官職に就く方が、待遇がよい、という逆転が普通になってしまっているのではないか。
 わたしも、正確な資料を有するわけではないので、はっきりしたことは言えないが、大阪市のごみ収集車に乗っている人や、市バスの運転士さんの年収を仄聞し、同じ公務員なのに大阪は景気がよろしいなあ、といたく羨ましい気がしたものだ。どこまで本当の話なのかは知らないが。
 もちろん、誰かがやらねばならない仕事なのだから、相応の報酬は支払われるべきではある。が、社会全体での体系を考えた待遇にしたり、景気や就職状況に合わせて採用枠をこまめに増減したりするくらいが、市側にとれる対策だろう。あとは応募者のモラルにまつしかない。

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