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2007年9月26日 (水)

書籍紹介~ 『渋滞学』 

 「渋滞学」という学問領域があるわけではないのだろうが、学者というのは学問領域を自ら作ってやる、というくらいの気概で研究するものである。それを成し遂げているとも言える本が『渋滞学』(西成活裕。2006 新潮選書)である。
 道路の渋滞のことはもちろんだが、世の中のいろんな事象を、「渋滞」という概念を窓口にして分析している。単なる交通に関する本ではないから、ますます面白い。

 何にしろ、最初の章はいきなり流体力学の理論から始まるのである。素人相手の解説だから、そんなに難しくは書かれていないし、数式なども最小限に抑えているので、わたしでも一応理解はできる。ニュートン粒子と非ニュートン粒子の解説をして、人やクルマをその粒子として扱い考察するのが、面白い観点である。
 道路の渋滞そのものについても、そのメカニズムが詳しく解説されている。どのような条件があると「自然渋滞」が起きるのか、信号機のある交叉点とラウンドアバウト(欧州によくある一方通行ロータリーを配した信号機のない交叉)とは、それぞれどのような条件の時に有利なのか、など、大変分かりやすい解説である。
 人の渋滞ともいうべき雑踏のありようをも、渋滞学は解析する。明石で起きた歩道橋事故などを例にして、クルマの渋滞と同様の理論に加え、情報処理や心理学からのアプローチをも考え合わせ、雑踏について考察する。さまざまな実験やその結果も図とともに示されているので、これも興味を惹く。
 さらに話は、パケット通信の「詰まり」や電車やエレベーターのダンゴ運転、体内の血流の乱れと健康の関係、などなど、あらゆる事象に拡がっていき、全てここまでに考察した「渋滞」の概念から解き明かしていく。病原菌の渋滞、森林火災の渋滞など、「好ましい渋滞」さえあり、それをいかに起こすか、という考察もある。
 で、結局最終章で話はどこへ行くかというと、ネットワークがさらにつながり合うトポロジーである。これはまさにインターネットの姿だが、これと道路の渋滞とは、同じ理論で同列の考察ができることを紹介する。そして、複雑な事象を解明する一般的な方法論としての、コンピュータの利点と弱点、さらにその武器としての数学の大切さ、など、学問の何たるかということにまで言及して終わる。
 高校生ウルトラクイズに出場した経験がさりげなく書かれていたりして、面白い著者であるが、著者紹介によると、元々は航空宇宙工学が専門の人で、機械システム工学科や情報数理学科といった部署で教えた経験もあり、「常に理学部と工学部の橋渡しをしたいと考えている」とあり、そういうポリシーに基づいて書かれているので、なかなか高専のような学校の関係者にも興味深く読める本であろう。
 (下の画像は、楽天ブックスの同書のページにリンクします。購入もできます)

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