« いまさら有馬エクスプレス | トップページ | 不思議な共同運行 »

2008年12月 7日 (日)

授業への要望

※ 昨年10月から半年間の休止期間が明けて以来、休止期間に書いていた個人日記からの移植記事と、書き下ろし記事とを交互に公開してきましたが、移植記事は本記事が最後となります。従って明日以降は、連続して新しく書き下ろした記事のみ公開していきます。

 昨年度分の授業アンケートの結果がやっと返ってきた。従来よりも点数が悪くなっている。病気のためにわたしのパワーが落ちていることもあるのだろうが、やはりパソコン入力になったことも影響していると思われる。
 従来は、担当教員本人が授業の中でアンケートをとっていたが、今回からはデータの電子化のため、総合情報処理センターに学生を集めて全教科を一括入力するようになったのである。担当教員本人を前にして記入するのとそうでないのとでは、厳しさが違ってくるのではないか。
 コメントを見ると、どうも気になる要望が増える傾向にある。管理職(それも質のあまり高くない)に言われるのならまだ分かるのだが、学生からこんな要望が出るのは、よく分からない。

 「もっと早く授業に来てほしい」「チャイムと同時に授業を始めてほしい」という世知辛い要望がある。最近ぽつぽつと書かれるようになった(もしかしたら、早く始めてその分早く終われ、ということなのだろうか…笑)。

 チャイムと同時に授業を始める教員がいることはわたしも知っている。が、わたしはそんなことをする気は一切ない。理由は以下のとおりである。

  1.  まあほんとうはわたしが理由を言う必要もないのだ。チャイムが鳴ってから教師が定位置を出て、教室に向かう。教壇に立つまでに数分間のタイムラグはある。これが校種を問わずわが国の標準であろう。わたしの経験からいって、中学校・高校、そしてもっと時間にシビアであろう塾や予備校でも全てそうであった。チャイムと同時に授業を始める方が例外なのであり、そのようにする教師こそが、学生に納得されるような理由を述べるべきだ。
  2.  なぜ大半の教師が前項のようにするか、そしてそれが容認されるか、というと、チャイムが鳴ってから教師が来るまでの数分間にも、存在意義ないし教育的意義があるからである。会議でも会合でも何でもそうだが、最も目上の人は、全員が席に着いて準備が整った頃に、おもむろに入室し、直ちに会を始めるものだ。こういうマナーも学習して、社会に出ることに備えてもらわないといけない。その意味では、教師が教壇に立っているいないに関わらず、チャイムと同時に授業は始まっているのである。よく教師の決まり文句としてギャグ的に言われる「家に帰るまでが修学旅行です」というのがあるが、それと同じである。
  3.  前項と絡むが、教師が教壇に立って教科内容を話していないと「授業」ではない、という浅薄な考え方がよくある。全く愚かである。教科内容だけを教えるために授業しているのではない。もしそうであれば、授業中の休憩も雑談も学習者の態度を注意する文言も、全て無駄な時間ということになり、止めねばならない。そんなことはナンセンスだ。
  4.  果ては、教師が授業時間をはしょることは、授業料を損していることになる、という馬鹿げたとらえ方。これがまた蔓延している。これは所属校だけのようだが、そういうことを言いたい者は、国立大学の授業料から割り算して、授業1分分の授業料単価がいくらになるか、算出してみるとよい。自分がいかにセコい人間かがよく分かるだろう。なお、その値は、純粋に授業時間だけの値だ。試験の問題作り・採点・補習・追試・個別指導・担任業務・学校運営業務・クラブ指導などに教員が費やす時間とそれによって学生が受けるサービスの分、あるいは、図書館や情報端末を無料で利用でき、怪我や病気の手当てを無料で受けられる権利、などは計算に入っていないのだ。そういうことを考えていくと、単価はどんどん下がっていく。わたしは、本校は有形無形に関わらず、数分分の授業料など吹き飛んでしまうほど多くのものを学生に提供している、という自負をもっている。
  5.  これも、所属校特有の事情だが、90分や100分の授業に対して10分とか、50分の授業に対して5分とかいう休憩時間があまりに短い。これを長くすると、放課が遅くなるから、止むを得ないのだが、それならせめてその休憩時間をフルに学生が自由に使える時間にしてやらないと、学生がもたないし、結局学習効率が悪くなる。チャイムと同時に授業を始めてしまうと、それができない。わたしは学生をつぶしたくないのだ。
  6.  演習・実習系の授業は、学生によって課題をこなすのにかかる時間が異なる。だから、まあ大体中ほどの学生がちょうどこなせる程度の課題を出すわけだが、どのみち早い学生は時間をもてあまし、遅い学生は家に持ちかえってし上げることになる。逆に言えば、授業時間が前後しても、状況に大きな変化はなく、そういう授業でこそ調整がきくわけである。そして、わたしの授業は作文の演習が中心なので、まさにそういう授業である。
  7.  学生の状況・その日の環境などを見て、臨機応変に授業の開始・終了時刻を含めた授業のありようを調整するのが、生身の人間のやる授業というものであり、通信教育やe−ラーニングとは違うところだ。経験的に最適の方法をとっているのである。

 どうも、議論の観点が狭かったりずれていたりする人が多い。理工系の人というのは、即物的・数量的にしかものごとをとらえない傾向があり、本質を見逃している。何が論点かを見きわめるべきである。
 なお、念のために申し添えるが、進度や学習内容について、極めてシビアな要求をうける教科があることも知っている。そういう教科の教員がチャイムからチャイムまで授業せざるを得ない切実な事情も理解できる。だから、そういう教員を責めるつもりはない(終了時間を超えて授業する教員は責める。これは以前の記事どおりである)。そして、そういう教員がいるからこそ、わたしはせめて上記のように授業しようと思っているのだ。
 (以上、平成20年4月13日記述)

 これを下書きしてから8か月近く経ったが、事態はより深刻になっている。
 実習系の授業が少なくずっと坐学が続くような時間割の日、あるいは、週一回(火曜日)の8限まである日など、学生のお疲れぶりは大変なものである。以前の記事にも書いたように、わたしは後期から、「授業は四十五分しかしない」と公言し、そのとおりにしている。そういうわけにいかない教科もあることを知っているから、なおさらそうする。
 8限で坐学なんてとても授業にならないから、というので、できるだけこの時間は実習系や特別活動の授業にしよう、という意見の教員も多いが、時間割の都合で必ずしもそうもできない。
 わたしも火曜8限は授業が入っていて、1年生の国語だ。わたしは古文と現代文とを並行して週一時限ずつ授業することにしているので、この火曜8限は現代文(作文の作業が中心の、実質的に実習系の授業)にあてている。すると、面白いことに、学生は疲れ切っているがゆえに、思考が妙にハイになっていて、普通ならブレーキがかかってアウトプットされないようなアイデアや言葉が跳びだしてきて、授業が盛り上がったりするのである。創造的な作業をする授業は、少々学生を疲れさせた方がいいのかもしれない。
これは怪我の功名である。
 そして、さらに混乱に拍車をかけている事態が、本館の改修工事なのである。
 本館が使えないので、本館にあった教室は、他の建物に臨時移動して分散している。また、本校の校舎は、本来建物同士が主に二階の渡り廊下でつながっていて、大抵の場所には雨に濡れることなく移動できるのであるが、工事のためこれが分断されている。当然、教員は研究室から教室までの所要時間が余計にかかるようになった。五分以上かかる場合もある。これも学生にとっては不幸中の幸いで、自然と適度な休憩がとれるようになったのではないか。
 教員の立場として困るのは、雨や雪の日は傘をさして授業に出かけねばならないことだ。プリントや返却作文が濡れないよう、ドキュメントケースに入れて運ばねばならない(晴れの日でも荷物が多い日など、わたしは遠くの教室へは自転車で授業に行く)。
 さらに困るのは、試験の時である。同じ学年五クラスに同じ内容の授業をしている、という場合、定期試験は同じ問題で、同時に行う。すると、試験時間中に五クラスの教室を回り歩くことになる。
 いつもなら、同じ学年の教室は比較的固まっていたからいいのだが、現在は分散しているため、非常に厳しい。試験時間の半分以降は退室を認めているため、50分の試験の場合、試験開始二十五分後までに回らねばならない。といって、問題を配布して学生が問題をひと通り見渡すのに、十分程度はかかるだろうから、実質十五分で五教室を回ることになるのだ。その五教室が、キャンパス中に散らばっているからたまらない。しかも回るだけでなく、各教室で補足説明をしたり質問を受けたりする時間もかかる。
 例えば、三年生の場合、機械工学科は専攻科棟三階、電気工学科は電気電子棟四階、電子情報工学科は電子情報棟一階、物質工学科は物質旧棟二階、環境都市工学科は教育支援センター(保健室下)、という散らばり具合である。これを十五分で回るには、高橋尚子級の脚力を必要とする。どうすればいいのだ。

81261334 (写真右は12月初頭の本館の様子)

|

« いまさら有馬エクスプレス | トップページ | 不思議な共同運行 »

6.1  教師業」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/129332/42344577

この記事へのトラックバック一覧です: 授業への要望:

« いまさら有馬エクスプレス | トップページ | 不思議な共同運行 »