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2009年6月16日 (火)

『ナッちゃん』テレビ登場と再版

 以前の記事でも紹介したものづくり漫画『ナッちゃん』(たなかじゅん・作)が、今週のNHK『マンガノゲンバ』でとりあげられた。
 単行本が入手困難になっているほどの人気漫画で、わたしも一読してファンになったのだが、それがテレビに登場するとは嬉しいことだ。

 番組では、たなかじゅんさん本人が登場し、実家を訪ねていた。紀伊田辺市のたなかさんの実家が、まさに鉄工所なのである。
 現在は弟さんが切り盛りしているが、先代(たなかさんのお父さん)は、いつも楽しげに仕事をする人だったという。そして病気で若くして亡くなった。まさにナッちゃんのお父さんそのままだ。作中に出てくる機械や依頼の内容なども、実際に実家の鉄工所に持ち込まれたりしたものを結構使っているとかである。リアルなはずである。

 また、アニメ化やドラマ化はされていない作品だが、番組では恒例どおり、コマを大写しにして声優さんが科白を読み上げる、という、擬似アニメ化がなされ、初めて声を出すナッちゃんに出会え、楽しかった。
 とり上げられていたのは、鋳物製の歯車の歯が三本ほど欠けてしまい、機械が動かせなくなった工場の場面である。
 修理に出すにしても、新品を取り寄せるにしても、何日もかかってしまう。小さな下請け工場なので、予備の機械や部品などはない。鋳物だから溶接によってくっつけるわけにもいかない。無理に動かせば、他の部分に力がかかって、すぐに機械が壊れてしまう。機械が動かなければ、親会社から請け負った仕事が納期までに間に合わず、会社存亡の危機。
 困っている工場長に泣きつかれたナッちゃんが、いとも簡単に盲点を衝くような方法で、その場ですぐに歯車を直してしまう…。
 こういう、まさに『ナッちゃん』的な展開がたまらないのだ。

 たなかさんの制作風景で、紹介された三つの点は、どれも驚かされた。他の漫画家が同様のことをするのかどうかわたしは知らないが、恐らく珍しいから紹介されるのだろう。
 一つは、作中に登場する機械について、たなかさんが(劇中ナッちゃんがよくやっているように)紙で実際に模型を作り、動くかどうかを確かめている、という点である。机上の設計だけで書くと、うるさい読者から、そんな機械じゃ実際に動かないぞ、というクレームがつきかねないから、ちゃんと試してみるのだそうだ。たなかさんもナッちゃんも、その作業がとても楽しそうなのである。
 二つめは、複雑な構造の機械を描くのに、パソコンで画を加工して組み合わせたりしていること。漫画は全て手描き、と思い込んでいたわたしが古いのだろうが、さすが理系漫画家である。そして、そういう裏付けがあるからこそ、内容に説得力があり、工学の専門家も、わたしのような素人も、楽しめるのであろう。わたしは、「テーパー」などという言葉はこの漫画で覚えたのである。
 そして三つめ、たなかさんはコマを一つずつしあげるのでなく、一つの回を通して、人物の口なら口ばかりをまず描いて(清書して)いく。次に目ばかりを清書していく…、という、まるでプログラムでもされているような合理的な手順で絵を仕上げている、という点である。こんなのは、漫画関係者の間では、邪道、という人もいるのかもしれない。が、こうするほうが絵にブレがなくていい仕上がりになる、とたなかさんが語っていた。このへんにも「理系」らしさがでている。
 このようなことを踏まえて『ナッちゃん』を再読すれば、また面白いかもしれない。

 たなかさんは、学生時代に漫画家デビューしたが、ヒット作に恵まれない時期が続いたという。自分が楽しんで描ける題材でないと読者も楽しめないのだ、ということに気づいて思いついたのが、この鉄工所漫画だという。
 楽しんで描いたかいあってか、『ナッちゃん』は、連載が十年も続く人気作となり、大学の工学部などでテキストとして使われるまでになった。それは、内容が理論的にも正しい、ということの証左である。
 21巻で完結し、現在は続編の『ナッちゃん 東京編』が連載中である。そして、前作の単行本が未だ需要が高い、ということで、再版が決まったそうである。諸物価の高騰で、初版時と同じ値段で売り出すことは難しく、カラーのページを白黒にするなど、できるだけ経費を切り詰めたうえで、値上げ幅を最小限に抑えることとしたようだ。再版はほどなくなされる。

 とりあえず、東京編の購入ページを紹介しておく。

※平成21年7月15日付記
 たなかさんのブログによると、7月24日以降前作の再版本が入手可能となる、とのことです。
 

 (下の画像は、『楽天ブックス』の同書ページへのリンクです。購入もできます)  

 

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