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2009年7月13日 (月)

波 平 、鉄道模型に魅せられる

 昨日放送の『サザエさん』の三本め、「波 平 ゆめ列車」は、わが国の鉄道趣味史にとって画期的な作品であった。
 恐らく、『サザエさん』の作品中、鉄道模型がメインで描かれたのは初めてであろう。

 他の作品ならともかく、『サザエさん』なのだから、これは大変意味深いことである。

 マスオ は、会社帰りの電車の中で、同じ車輌に 波 平 が乗っているのを見つけ、声をかけようとする。しかし、波 平 はあさひが丘の手前の途中駅でホームに降りてしまう。気分でも悪いのかと心配になり、慌てて マスオ も降り 波 平 を追いかける。マスオ の姿を見た 波 平 は、ちょっとバツの悪そうな顔をするが、マスオ を立ち寄り先に誘う。
 波 平 が向かったのは、一軒の模型店であった。そして、その店には鉄道模型の巨大なジオラマがあったのである。それをウィンドウから観て、鉄道模型に憧れた少年時代を思い出し、目を細める 波 平 であった。この間から二~三回来ていると言う。マスオ も、自分も同じく子供の頃鉄道模型が欲しくて母親にねだったが、そんな高価なものはとても買えない、と叱られたのを思い出す。
 帰り道、
マスオ波 平 に、思い切って買ってはどうか、と進言する。自分のへそくりで援助する、とまで言って。波 平 はいい歳をして模型なんて恥ずかしい、と言うが、マスオ は、カツオ にかこつけて買えばいい、と。

 『サザエさん』は、国民的アニメとなってしまったこともあり、イメージの維持に相当気を遣っている。時代とともに登場する新たなアイテムや価値観も、相当に定着するまでは、軽々しく劇中に登場しない。
 逆に言えば、『サザエさん』に登場したものは、良識に基づく日本の文化として認定された、とも考えられる。
 ここで、波 平 が鉄道模型に惹かれた、ということは、中高年男性の鉄道趣味が社会的に認知された、との判断が制作側にあるのではなかろうか。NHKなどでも鉄道趣味を正面からとりあげた番組が増えていたり、鉄ちゃんであることを公言するタレントも続々出てきている、といった背景があると考えられる。

 帰宅した 波 平 カツオ に、鉄道模型に興味はあるか、と訊くが、カツオ は、そんな金があるなら、本物の電車に乗って旅行する方がいい、と彼らしく現実的な答え。
 それを聞いて、マスオ タラオ を件の模型店に連れて行くことにするが、行く途中で イクラ を連れた ノリスケ に出くわし、一緒に行くはめになる。ジオラマを観ながら マスオ タラオ に、こんな模型が欲しいか、と訊くと、タラオ は喜んで、欲しい、と答える。が、事情を知らぬ ノリスケ は、こんな物を買うなどと言い出せば、波 平 が雷を落とすだろう、と心配し、タラオ にこのことは内緒にするように言い含めてしまう。

 このあたり、認知されてきたとはいえ、やはり大の男が夢中になるものとして、鉄道模型に抵抗をおぼえる価値観も一方に根強くある、という世相も反映されている。

 子供をダシにする作戦は失敗したが、カツオ タラオ の話、さらに、波 平 がジオラマを観ているところをたまたま目撃した の話などを総合し、は、波 平 の気持ちを察する。そして、波 平 に、鉄道模型を買うよう勧める。

 ところで、波 平 はそもそも鉄道好きであったのだろうか。全回観ているわけではないが、そういう設定が過去に積極的に描かれた記憶はない(描かれれば、ある程度話題になるであろう)。
 原作漫画には、酔った 波 平 がビール瓶や卓袱台を使って地下鉄の擬音をやって見せるネタ、廃止が近い路面電車(恐らく都電と思われるが、磯野家が世田谷方面にあるらしいことから、旧・東急玉川線の可能性もある)に「さよなら乗車」し、子供のように窓の方に顔を向けてシートに膝をついてみたり、車掌さんと肩を組んで記念写真を撮ったりするネタが見受けられる。
 が、それがただちに「鉄」である、ということにはならない。前者は 波 平 の酔いっぷり(比較的良好なケース)の描写であるし、後者は磯野家の「血」である、話題になっているものにはすぐ首を突っ込む、という性格の現れである。それに両エピソードがアニメに採られているかどうかは、わたしは知らない。

 いずれにせよ、やはり 波 平 らが鉄道模型に関心をもつ、というのは、ちょっと唐突に感じる。屋根裏部屋かどこかにレイアウトを張りめぐらして、鉄道模型の操作に没頭する、というマニアっぽい姿には、違和感がある。
 だから、買ってほしいような、買ってほしくないような、不思議な思いでストーリーを追っていたが、心配は無用であった。このエピソードは、過去に『サザエさん』に斬新なものが登場した数々の機会と同様の結末を迎えるのである。

 勇んで模型店に出かけた 波 平 マスオ だったが、模型店はシャッターが下り、「閉店しました」の貼紙が。がっかりする 波平 だが、他にも店はあるのだから、と に言われ、気長に探すことにする。

 そして眠りにつこうとする 波 平 の脳裏に浮かぶ、夢のジオラマを色とりどりの列車が走り回る光景、そしてそれを笑顔で見下ろす坊主頭にランニング姿の 波 平 マスオ、というラストシーンでエピソードは終わった。
 童心をふと覗かせた男のロマン、というところに落着させて、オタク的な方向に走ることを回避したわけである。

 『サザエさん』は続きものではないから、波 平 が、気長に探す、と言ったからといって、今後鉄道模型に関するエピソードが再登場する、という保証はないし、どちらかと言えば、もう登場させない、という宣言である可能性の方が高いけれど、希望は捨てまい。
 『サザエさん』の設定は、長年の放送の間に、微妙に変わっていっている。昨日の放送でも、これとは別のエピソードで、カツオ が一生独身を通す、と宣言すると、家族らが、それでは 花沢 が傷つくことになる、と口々に心配していた。そして カツオ もそれを否定しない。いつの間にか、カツオ の許嫁は 花沢 に確定しているのである。
 社会と鉄道趣味の動向によっては、波 平 が鉄ちゃんという設定も、いつか甦らないとも限らない。今度は マスオ タラオ を連れて鉄カフェに出かけたりするかもしれない。今後に期待しよう。

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