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2009年8月31日 (月)

看板つっこみ(15)~ 強引なお願い

 誰かに何かを頼みたいとか、訴えたいとかいう時に、その内容があからさまに言いにくいものである場合、命令や依頼の文ではなく、別の文型、主に事態描写によって、婉曲に意図を伝える、という方法がとられるのは普通である。
 女の子の、

もう足が痛くて歩けないわ。

などはその最たるものだが、掲示にもそういう表現法が進出している。次のような例である。 

 トイレを汚さないように使ってほしい、という管理者の願いを利用者に伝えるために、以前はストレートに、

トイレを汚さないようにしましょう

とか、

公共の施設です。清潔に使ってください

といった、ストレートな要求表現が使われることが多かったが、こういう表現よりも、婉曲に深層心理に訴えた方が効果がある、ということで、下の写真のような表現が多くなってきたのは、読者もご存じであろう。

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  このように下手に出た方が実際丁寧に使ってもらえるのであろう。従前の表現は、高所からの要求なので、説教くさく感じられ、ひねくれた人ほどつい反撥したくなるが、これならみんながきれいに使っているんだな、という集団心理も刺戟され、汚しにくくなる。うまく考えた表現である。
 これがさらに丁寧になると、下のようになる。

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ホテルや百貨店などでは、こういう表現が増えてきた。
 事態描写と謝意の表現によってお願いする、というのは、まさに日本語らしい含蓄のある表現法である。本来の表現意図をそっとオブラートで包んで覆い隠し、相手の自主性を促しているところが日本語の粋であるが、外国人だってこのくらいの洒落は解するだろう。

 それだけに、某所のトイレで見たこの掲示には笑ってしまった。

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 こらこら。タイトルで裏の意図をばらしたらあかんでしょう(笑)。この文言が有効だということだけどこかで聞いてきて真似したんだろうなあ。文自体ただの事態描写で、全然「お願い」になってないわけだしねえ。

 そう思っていると、某所にはまだ上手があった。

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 礼を言ったかと思えば、仕事まで手伝わすんかい! これならストレートに命令された方がまだ気持ちがいいと思えるから、不思議なものである。  

 

※ このカテゴリーの記事のように、まるよしの楽しい日本語の話を満載した本、ぜひお手に取ってお読みくださいね。

 『まるごと とれたて 日本語談義 -ラジオ番組『高専ライブ』で語ることばの話-』
 桐島周 2016 勝木書店 定価1500円(税込)
 
ISBN: 978-4-906485-09-3 
 (桐島周は、まるよしのペンネームです)

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  http://www.katsuki-books.jp/ (書籍検索から)
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