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2009年8月 7日 (金)

今季の22時台ドラマ

 なぜか、観ずにいられぬ連続ドラマが集中するクールというのがある。そういうドラマが全くない時期も少なくないのだが、今季はそれが三つもあって困っている。しかもそれが22時台の放映である。23時就寝のわたしにとって、仕事その他にラストスパートをかけるべき時間帯にこれらが放映される。もので、今月に入ってから、作業が捗らないので困るのである。

 せめてブログのネタにして元を取らせていただくことにしよう。三つのドラマを順番に寸評していく。放送曜日順に書いていこう。

1.『恋して悪魔 ~ヴァンパイア☆ボーイ』(フジテレビ系火曜22時~)
 人によっては、何でそんなガキの学芸会みたいなドラマを? と訝しむかもしれないが、こういう、人類より高等な種によって人類の存在を問い返す、というのは、わたしが学生時代から書き継いできた長編小説のテーマでもあるので、それを他の虚構がどう処理しているのか、興味がある。またそれだけに、わたしの批評も厳しい。
 吸血鬼は人間の血を吸って生きているのだが、これが分からない。人間より高等なら、人肉を食わねばならないはずだが、それだとグロすぎてドラマにならないのだろうか。血だけでは体がもたないと思うのだが。血と一緒に精気か何かも吸い取っているのかもしれないが、そういう説明は今のところなされていない。
 吸血鬼は人間に対する意識としては、下等動物として見下している、というのが基本なのだが、吸血鬼である中山優馬が、
「人間なんて嫌いだ」
と言うのに対し、後見役の先輩吸血鬼である近藤真彦が、
「人間が豚のことを嫌いだとか言うか?」
と宥めたりする。しかし、それは無茶な論理だ。人間は、豚を食べるために豚の社会に潜入するわけではない。豚の人格もとへ豚格にはノータッチでいられるのだ。人間とともに交じり合いつつ、人間を餌にする、そして自分も人間と見た目は同じ、というところをどう受容していくのか。わたしの小説でも、そこの処理に苦労したわけであるが、このドラマはどうも曖昧だ。今後解明されるのだろうか。
 吸血鬼の習性や行動については、例えば、太陽・十字架・ニンニクの三大弱点など、伝統的なものを踏襲してはいる。が、吸血鬼に血を吸われた人間は、(このドラマでは)どうなるのか。これがよく分からない。パターンとしては、三とおりだろう。
  (1)失血して死ぬ
  (2)吸血鬼になる
  (3)吸血鬼になるが、他の人間を吸血鬼にする力はない
 どれなのか、明確な説明がない。また、「牙が生えた後、次の満月までに運命の女の血を吸わないと、死ぬ」という新設定が二回めの放送で急に出てきた。それを聞いた中山優馬は戦いていたから、そう頻繁にあることではないのだろうが、どうも設定が不徹底である。
 それと、現在までのところ、登場した吸血鬼は全て男性(?)だ。そして、専ら女性(人間の)の血を吸っている。そして、中山は人間の女性である加藤ローサに恋しそうな雲行きである。食欲と性欲とがオーバーラップすることは、わたしも認めるけれど、では人間の男性は血を吸われるおそれはないのか。いや、それ以前に、吸血鬼に女性はいないのか。だとしたら、吸血鬼の生殖はどのようなものなのか。
 また、吸血鬼は周囲の人間に正体を知られては困るはずだが、そのわりに中山は積極的に隠そうともしていない(人間社会から浮きすぎである)。もっとも、吸血鬼は人心を操る超能力をもっている、という設定らしく、それなら気にしなくていいはずだが、これもシステムがどうも分からない。
 それと、吸血鬼の食生活も。血が主食ではあっても、まだ血が吸えない中山はプルーンジュースを飲んでいる。それしか腹を満たす手段がないからだ。と思いきや、今週の放送では、ご飯やおむすび、焼魚に玉子焼きまでばくばく食べていた。どないやねん。
 吸血鬼は永遠の命を得られるらしいが、では近藤は何歳なのか。なぜ「少年」と「大人」とが存在するのか。
 わたしの小説では以上のような点を、かなり厳密に設定している。そうしないと、世界観の基本が形成できないからだ。人間の男は、特殊な例外を除き、雌豚に恋したりしない。
 中山は、次第に人間と交流を深めていくのだろうが、吸血鬼の世界が無感情で合理的な世界、というわけでもなさそうだ(近藤真彦は表情豊かだ)。恋を知り心を開くことが、人間と触れ合うことでしかできない、というわけでもないだろう。とすれば、いったい中山は何に躓いているのだろう。そこがよく分からないのである。
 さらに、吸血鬼らのふるまいや言葉遣いが、ルックスに比べてあまり神秘的でないのも不満だ。近藤の言葉はがらっぱちだし、中山も人間を見下しているわりに、「ありえない」とか「~し」といったベタな人間の流行り言葉をしゃべっている。そこは笑うところなのか。
 中山が、人間になりたい、とか言いはじめるのだろうか(エンディングテーマの背景で、中山は被っているフードを脱いで光に向かって駆けだす。そういう展開の暗示と解釈できる)。そういう安易な展開にはならないでほしいが、そんな方向性がある。そのために中山が近藤を何らかのかたちで殺す、ということになるなら、それはそれでいいが。
 そのへん、どう収拾していくのか、目を離せない。来週の予告では、中山が、加藤の死んだ(はずの)恋人が吸血鬼に化身した姿であることが示唆されていた。そうであるならば、かずかずの謎や不自然さも、かなりの部分が氷解する。中山がとり憑かれていた異形の世界を振り切って人間に戻る、というなら物語としても完結するし、これまでの中山の「死」に関する発言も頷ける。
 ただ、このドラマの予告はあてにならない。先週の放送の最後の(今週分の)予告で、中山と加藤が愛を囁きあっていた場面は、実は演劇の台本を読みあっていただけだし、加藤が中山の正体を見抜いた場面は、中山の見た悪夢の内容だった。あの予告は反則だろう。

2.『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ系水曜22時~)
 院内学級という、あまりこれまで注目されてこなかった教育現場に着目したのはよい。わたしも、先日入院した時、院内学級の部屋を覗いて、ぜひ授業を参観したい、と思ったが、わたしの入院は週末の三日間で終わってしまったので、叶わなかった。
 ここに中学部の担任として着任した大泉洋は、基本的な知識も技術もなく、大声と勢いだけで乗り切っていこうとする、かなりウザいキャラ。しかし、その強引さが人の心の壁を崩し、なぜか丸く収まってしまう、というよくある構図である。何にしても、大泉は病気の子供たちに体の負担をかけすぎである(笑)。
 この大泉の前に立ちはだかるキツい感じの女性が、小学部担任の先輩教師・小林聡美と、医師・香椎由宇である。特に香椎のツンケンぶりは、小児科医としては問題ではないか。院長の上川隆也は味方だが、これがまたいま一つ貫祿がない。上川にせよ香椎にせよ、あんまり診てほしい医者ではない。
 生徒役には、神木隆之介・須賀健太という二大名子役を配していて、安心して演技を見られる。ここは救いである。この二人はオープニングテーマの背景にも登場するから、生徒たちの中でも別格扱いである。また、毎回オープニングに入るまえだまえだの漫才もよい。絡みこそないものの、ひっそりと、尾美としのりと小林聡美の『同級生』コンビが共演しているのもまたよい。
 今後、小林や香椎の心を開いていく展開があるのだろうし、もしかすると生徒の誰かの死に直面したりするのかもしれない。が、どうなった時が課題解決になるのか、いま一つ見えない。大泉の方法論(というほどでもないが)で現実の問題解決は望めないし、コメディーに徹するには場所の設定が重いし、どのへんを狙ったドラマなのだろうか。 

3.『任侠ヘルパー』(フジテレビ系木曜22時~)
 これは、まず手放しに愉しんでいる。「任侠」と「(介護)ヘルパー」という異質のものを無理やり結びつけてストーリーをなす、という星新一ショートショートのような発想。わたしにとっては、どちらも未知の世界なので、新鮮である。
 草彅剛の復帰(というほど長い休みでもなかったが)第一作ということだが、闇の世界に生きていた者が、いい人になっていく、という内容は、まるであの事件まるごとこのドラマのプロモーションではなかったのか、と疑いたくなるほど、話ができすぎている。まさかそんなことはないだろうが、あの事件が、草彅のイメージチェンジに追い風になったことは確かだ。
 草彅の極道仲間である黒木メイサや、介護施設のあまり経営能力に長けていない人のよいオーナー・大杉漣、介護をビジネスとしてしか見ない実業家の夏川結衣、それぞれのキャラは遺憾なく表現されている。特に夏川の嫌味ったらしさは、十分に視聴者を苛立たせる。これを草彅がどう手なづけていくのか、見ものである。
 今後、(今は対立的な関係にあるものの)草彅に惹かれていきそうな人物として、この夏川の他、黒木もいるし、元々のヘルパーである仲里依沙もある。そして忘れてはならないのが、草彅に尋常ならぬ惚れ込みようである加藤清史郎(夏川の息子)。このなかの誰とどのように心を通わせていくことになるのか。登場人物たちの背負う過去も、少しずつ語られはじめている。草彅は任侠の世界に戻るのか。楽しみである。
 また、第一回は池内淳子、第二回は津川雅彦といった大物が、入所者役でゲスト出演するのも、華を添えている。今週は倍賞三津子が草彅の母親役で出ていた。
 このドラマは音楽がよい。感動場面でもう力ずくで感動させるような音楽が入る(笑)。

 こんな具合であるので、もう夜はほとんど何もできないのだ。どうなることか。
 この三つのドラマに共通しているのは、主人公(ら)が、突然彼らにとっては突拍子もない異界に旅をさせられる、という、一般的な物語構造に則った設定である、ということ。だから細かなところに穴や不徹底があっても、全体が崩れないのである。これはストーリーの王道として、手堅いとも言えるし、安易とも言える。いずれにしても安心して観られることにはなる。『恋して悪魔…』の場合は複雑で、吸血鬼の世界、人間の世界、いずれが中山にとっての「異界」なのかが分からなくなってくる可能性があるが。
 この物語構造でいくと、結末は、ひと回り成長して本来の世界に戻る、あるいは、異界の側に根を下ろす、のどちらかしかないわけだが、わたしは前者を期待している。

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