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2009年8月22日 (土)

気分屋ケンちゃん

 『ケンちゃんの主題歌コレクション』(2006 ウルトラ・ヴァイヴ)というCDを見つけて、迷わず買った。
 ケンちゃんシリーズは、子供の頃にずっと観ていた。主演の宮脇康之(当時)さんは、実年齢がわたしの二つ上、ドラマの設定年齢が一つ上だったと記憶しているので、ちょうどハマる世代であり、宮脇さんは憧れのおにいさん的な存在だったのである。「宮脇」という名字が特に好きなわけではない。

 CDを聴いていると、いろいろ思うことがある。

 全ての歌に聞き覚えがあるわけではない。聴いてはいたはずだが、記憶に残っているのは一部である。

 「ケンちゃんトコちゃんGo!Go!Go!」(宇野ゆう子/少年少女合唱団みずうみ 詞:風間しげみ 曲:三沢郷)は、『ケンちゃんトコちゃん』の主題歌だが、

今日も学校 幼稚園

という歌いだしがわたしには印象的だ。

ケンちゃんトコちゃん ゴーゴー

というラストのコーラスで、今日はどんな話が始まるのか、わくわくした感じが蘇る。提供のバックに流れる「♪ライオーン、ライオンー、ラーイオーーーン」というコーラスとともに。
 宇野ゆう子さんは、現在も流れている『サザエさん』の主題歌も歌っている人である。そして、単に歌手が同じという以上に、ケンちゃんシリーズの主題歌には、『サザエさん』の主題歌や挿入歌に通じるテイストがある。

 次の年の『すし屋のケンちゃん』になると、わたしは積極的に観なくなった。理由は単純で、子供の頃のわたしは寿司が嫌いだったからである。
 ご飯全体に甘ったるい味がついているというのを、口が受け付けなかった。子供のくせに甘い味があまり好きではなかったのだ。母が作ってくれる京風だし巻きは好きだったが、寿司に乗っている玉子焼きは嫌いだった。普通の子供が好むちらしずしもだめだった。伊達巻きや桜でんぶが許せなかったので。
 そういうわけだから、歌も全く覚えていない。

 その次の年、『ケーキ屋ケンちゃん』はまた観だしたのだから現金である。生クリームなら食べたのである。
 こうしてケンちゃんシリーズは毎年家の商売が換わっていくのが恒例になった。脇役のマンガさん(年により役名が換わっていく)などにも面白さを感じた。「~だもんね」「そりゃもう」などという独特の口調が味を出していた。マンガさん他を演じていたのは進士晴久さん、龍角散のCMで「日記には書いておこう」とやっていた人である。
 そして、この主題歌「ケーキ屋ケンちゃん」(宮脇康之 詞:多地映一 曲:井上かつお)で、初めて(リードボーカルとして)宮脇さん自身が歌うのである。のんびりしたテンポにかわいらしさを残した声で歌っている。

 その翌年は『おもちゃ屋ケンちゃん』である。これの主題歌「おもちゃ屋ケンちゃん」(宮脇康之 詞:多地映一 曲:高田弘)が、宮脇さん声変わり前最後にして最高の歌唱だと思う。
 曲としてもよくできている。いわば「ケンちゃんサウンド」がこの曲で確立している。アップテンポの楽しげな伴奏がつく。この時代のアイドル歌謡とも共通する曲調だ。

おいでよ ぼくんち おもちゃがいっぱい
つみ木に 怪獣 お人形さんと
みんな みんな うちのだよ

という歌いだしを歌える人は、わたしの世代には多いと思う。ケンちゃんが積み木を崩して登場し「オッス!」と叫ぶオープニングを思い出す人もいるだろう。これが、後半になると、

だけどちょっぴり つまらないよ
だってぼくのじゃ ないんだもの

という歌詞がくるのも、何だか急にリアルに引き戻されるものの、正直で好感がもてた。観ている子供達が、おもちゃ屋の子は店のおもちゃを自由にできる、と勘違いしないように、念を押したのだろうか。
 今聴いても、この年齢としては結構上手な歌だと思う。
 この頃、提供社であるライオンの歯磨き粉のCMにも出演していた。「♪歯みがきしてる子手を挙げて」というCMソングも宮脇さん自身が歌っていて、上手だなあ、と思った覚えがある。その後、宮脇さんは受験研究社の学習参考書のCM(馬のマークの参考書)にも出演していたが、そっちは歌はなかったと思う。歯みがきの歌も、宮脇さんが声変わりすると、女性のプロ歌手の歌にさし変わってしまった。

 その次の『ケンにいちゃん』からは弟のケンジが登場するが、次第に実質的な主役、つまりわんぱく盛りではらはらさせるような冒険をするのは、ケンジくんに移っていく。そういうこともあって、わたしにとっては幼い内容になり、だんだん観なくなっていった。次の『おそば屋ケンちゃん』も同様である。だから、主題歌も印象にない。
 CDで聴くと、「おそば屋ケンちゃん」(宮脇康之/コロムビアゆりかご会 詞:多地映一 曲:牧野由多可)の宮脇さんの歌唱は、声変わり途上の不安定な歌である。おそらく、声変わり前の声を前提に編曲された曲を、オクターブ下げて歌っているのだと思うが、中途半端である。

 次の『フルーツケンちゃん』の主題歌「フルーツ・ケンちゃん」(宮脇康之/SPSシンガーズ 詞:有馬三恵子 曲:鈴木邦彦)になると、変声期も抜けかけて、きちんとした歌になっている。わたしも何かの拍子に観てみた時、オープニングのこの歌が、いかにもケンちゃんらしくて、歌だけは覚えている。
 伴奏も明白に「おもちゃ屋ケンちゃん」の延長線上にあり、前奏・間奏には全く同じフレーズもみられる。もちろんキーもきちんと合っており、最後の印象的な、

何かいいこと 起こりそうだよ

の部分は六度音程で上がるメロディもしっかり力強く辿れており、お兄ちゃんの貫祿をみせている。
 そして、このドラマが宮脇さん最後の出演作となって、次作からはケンジくん役だった岡浩也さんが二代目ケンちゃんとなる。わたしは全く観なくなった。

 その後も宮脇さんは学園もののドラマなどで活躍するが、だんだんとテレビで姿を見る機会が減っていった。
 宮脇さんの自伝本『ケンちゃんの101回信じてよかった』も読んだが、ケンちゃんシリーズ降板後の宮脇さんは人生の苦渋をなめまくったようだ。
 読んでいて歯がゆかったのは、宮脇さんがさまざまな仕事にとり組もうとしながら、すぐにリタイアしてしまうことである。まさかドラマで一年ごとに商売替えする癖がついたのではなかろうが。
 芸能関係の職歴だけみても、宮脇さんは、ジャニーズ事務所と吉本興業に、それぞれ一時期所属している。いずれも芸能界に君臨する強力な事務所で、入りたいと思ってもなかなか入れない、寄るに不足ない大樹だろう。そこに在籍したということは、いろいろなチャンスに恵まれていたはずなのに、どちらも途中で投げ出してしまう。そうなったやむなき事情もあることが書かれてはいるが、両事務所からスターの座についた人は、そういうことも堪えたのではないか。ケンちゃんシリーズで主役を張ったプライドが邪魔をするのか。そういえば、その当時、吉本新喜劇に出演する宮脇さんを見たことがある。
 本では、あれだけ貢献した自分に対するその後の放送局などの扱いに不満を述べているが、芸能界は過去の栄光だけでは生きていけない、今何ができるか、でしか評価しない世界なのではないだろうか。だから、それもいたしかたないと思う。
 今やすっかり「あの人は今」の類の番組専門(まあ常連ではあるが)になった宮脇さん(現芸名は宮脇健)である。今の宮脇さんに、客が見たくなるような「芸」がないのだから、声がなかなかかからないのは当然だろう。昔の芸能界の内幕や愚痴を語る、というのもひとつの芸だろうが、その需要は限られている。アイドルでも歌でも芝居でもお笑いでも、地道に修業を積んでいれば、第一線で活躍する宮脇さんを今でも見られたかもしれず、残念である。
 ただ、テレビの世界がまだ十分に文化として成り立っていなかったためもあろう、子役を増長させる周囲の構造があった、そしてギョーカイ側が、子役として貢献したタレントを責任をもって育てていく、という姿勢に欠けていたことも、本から窺い知れる。それがひいては宮脇さん一家の離散を招いたことも、気の毒である。何にしろ宮脇さんがケンちゃんシリーズで稼ぎだしたとされるギャラの総計は、当時のレートで考えれば、一生遊んで暮らそうと思えば暮らせる額なのである。しかし、それは周囲の大人の不見識によって、霧消してしまう。
 宮脇さんはテレビ未成熟時代の犠牲者なのかもしれない。二代めケンちゃんの岡さんは、宮脇さんを先人として教訓にしたのかどうか、いち早く芸能界から身を引き、現在は医師として活躍しているそうである。

 わたしの憧れのおにいさんで、真似をしたくて半ズボンや鍔の短いおしゃれな帽子を買ってもらったりした、思い出のケンちゃん。幸せに生きていってほしい。
 そんな思いを新たにしたCDだった。

 (下の画像は、『楽天市場』の同CDページにリンクします。購入もできます)
 

   

 (文章中青字で引用した歌詞は、同CDの歌詞カードによる)

 バイバーイ。また見てねー。

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