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2010年3月19日 (金)

ディショ挙行 上

 まるよしくらぶの「エディション」とは、要するに皆で遠出することである。いつも福井で活動? しているくらぶがよその土地で展開する、という意味で「まるよしくらぶ○○エディション」と称しはじめたのが、いつか「エディション」が旅行を指すように、語意の変質が起きた。和訳すると、「向上喧諤旅行」である。くらぶ生の成長と、時間に縛られない議論を求めてのイベントだからである。

 以前の記事にも記したように、これまでに東京(本州)・北海道(道央)・兵庫・三重・愛知・北海道(道東)の各都道県(主たる宿泊地による)を歴訪してきた。その頃は、前身掲示板に参加者全員でリレー紀行を書いたりしていた。
 当初構想では、年三回程度の実施で、十八年かけて全都道府県(北海道は道東・道北・道央・道南に分け、東京は小笠原を、沖縄は先島諸島をそれぞれ分けて考えていた)を制覇することになっていたが、くらぶ生の散らばり具合により、次第に実施が困難になった。もっとも、移住先(支社・支部・支店開設先)はそれで進駐と考えると、香川・京都・大阪・茨城・岐阜・千葉・新潟も押さえたことにはなるのかもしれない。
 ただ、今回久しぶりに「エディション」と銘打ったイベントを挙行し、その名目では初の千葉県進出となった。

 先日実施したこのディショ(←何と同じ配色かお分かりになっただろうか。でぃしょ、と唱えてみたとき、語呂の類似に気づいたので、しおりのタイトルもこの色で印刷した)をレポートしよう。

 学生たちの長期休業の時期に合わせて実施するのが通例のエディションだから、大体は「青春18きっぷ」を利用して普通列車を乗り継いで行く、というのが行程の基本であった。しかし、今回はメンバーも以前のエディションとすっかり入れ替わっているので、不慣れなこともあり、わたしもスムーズに引率する自信がない。何よりも、生まれてこのかた電車にほとんど乗ったことがない、という者までおり、極度の不安を抱えている。
 当初、「「青春18きっぷ」なら2300円で千葉まで行ける」と吹いていたわたしだが、いざ計画を立てる段になって、荷物を抱えて数回に及ぶ乗換をうまくこなせるか、という心配ばかりが頭にたちこめた。
 それで、誘惑に負け、わたしの都合で往路は高速バスを使うこととした。バス代と「青春18きっぷ」との差額はわたしが負担した。
 しかし、実際の展開は予想と全く異なるものになる。まるよしくらぶに関しては、わたしの予想が外れることが多い。
 

 早朝の福井駅東口に、青いリュックを背負って遠足にでも行くかのようないでたちの少年が不安げにあたりを見回している。これが、背恰好といい髪形といい、星野鉄郎にそっくりだ、とわたしがかねがね思っているくらぶ生だ。初めての遠出に気も漫ろで、既にバスが着車しているのにわたしがなかなか来ないので、きょろきょろそわそわしているのだ。わたしを見とめると、一転して破顔する。
 彼は、こんな早起きは久しぶりだ、と言う。昼夜逆転、というならまだ分かりやすいが、280度くらいずれた生活をしているのである。そういうところを矯正するためにも、このスケジュールはよかった。全く家事をしないで家電製品の使い方が全く分からない非文化的な生活をしている人なのである。
 定刻に発車したバスが鯖江インターに着くと、世間で言うのとは意味が異なるが、浪人生活中であるくらぶ生が立っていた。事情は一言で語れない。海外旅行にでも行くような大きくて丈夫そうなトランクを足許に置いている。服は黒っぽく、恰幅もよく、動作はきびきびしているので、トランクが黄色でなかったら、出征兵士かと思ったところだ。
 武生インターでは、うって換わって服装も体格も軽やかなくらぶ生(乙男)である。性行が不真面目なわけではないし、エナメルバッグなど携えたスポーツマンなのだが、くらぶのなかでは軽さを担当することになる。鍔のある帽子など被って洒落ている。
 これで地元からの参加者が揃った。バスは待ってくれない、としつこく念を押したとは言え、まるよしくらぶで待ち合わせがかように正しい結果に終わることは、前例がない。最初の関門は突破した。

 
 バスは途中三回休憩する。二回めの浜名湖サービスエリアでは、昼食を仕入れる客のためにやや長めの十五分程度とられている。非文化少年はトイレに駆け込む。浪人と乙男は、連れ立って店に入り、パンやお菓子を一緒に買う。非文化少年がトイレから出てくると、もうあまり時間がなく、コンビニでおにぎりなどてっとり早く買うしかなくなる。わたしはせっかく来たのだから目先の変わったもの、と思い、牛まんを買う。
 こうした行動は、この先の傾向を暗示していた。

 珍しくほぼ定刻にバスは新宿駅新南口に到着した。三十分やそこら遅れてもいいようにスケジュールを考えてあるが、ゆとりを持つことができる。
 ここからはホテルに入るが、わたしのポイントを利用して泊まるので、選択の余地はなく、電車に何本か乗らないといけない場所にある。電車に慣れていないのは、非文化少年である。緊張する。が、案じることはなかった。彼は、思想的には独立独歩のくせに、実際に道を歩く時にはひとの後ろをついて行くのが得意だからだ。引率者がいればなんとかなるようだ。これなら電車乗継ぎでもよかったかもしれない。
 新宿駅の中央快速線ホームに降りようとすると、非文化少年が階段を下りながら、
「なんでここのホームって分かったんですか」
 と訊く。案内表示を見ているからに決まっているのでそのように答えるが、そんなことも新鮮なのだ。福井では駅に入って三歩で電車に乗れるのだから、無理もない。いや、その電車すら彼はほとんど乗ったことがない。
 東京駅で腹の立つくらい長い距離を歩いて乗り換えた後、ホテルの最寄り駅に着く。駅前のロータリーの一角にホテル送迎バスの乗降場がある。
「なんでここが乗場って分かったんですか」
 わたしがこのホテルに何度も泊まっているからだ。確かにこれは分かりやすく表示はされていないから、初めてだと分からないだろう。

 ホテルの部屋は彼ら三人が一部屋、わたしは独りで一部屋である。どちらも同じツインルームだが、わたしはシングルユース、彼らの部屋にはエキストラベッドが入っている。ポイントを提供しているのだから、これくらいは許してもらう。

 一憩の後、西船橋に出かけ、夕食とする。
 メニューに鯨料理というジャンルがあるので、それをいくつか頼んだが、出てきたのは鯨ユッケだけで、他の赤身料理は入荷が遅れているのでできない、と言う。
「シーシェパードのせいですかね」
 違うと思う。いろんな人が歩いている首都圏で、あまり大きな声でこの種のギャグ(本人はギャグと思っていない)を言うのは避けるべきだが、非文化少年はなかなか抑制がきかない。
 鯨を頼もうと思ったのは、非文化少年が魚なら刺身でも食べられるのに、肉類は受け付けない、と普段から言っていたからである。肉が食べられないのは何かと損なので、それなら鯨を橋渡しに、と思ったのである。
 ところが伏兵もいて、乙男は、肉は好きなのに、生魚がだめだと言う。意図していなかったが、こっちも橋渡しになった。
 二人ともユッケをつまむが、非文化少年は、肉の味だ、と言い、乙男は、生魚だ、と言い、結局気に入らなかったようである。もっとも非文化少年も、ハンバーグやスパゲッティナポリタンのような給食的アレンジなら肉も厭わない、と言うし、乙男も、寿司は食べるのだから、勝手なものである。今度改めて、火を通した鯨を試す必要がある。
 そうしているうち、くらぶ千葉支社長が到着し、合流した。この人が来ると、非文化少年との相乗効果ないし化学反応で、話題は一気に時事・社会的様相を見せはじめ、浪人と特に乙男の口数が減っていく。減るというより、非文化少年に対するつっこみで精一杯、自分の話をさせてもらえないのだ。彼の話題は、自由電子のように、どこにどう跳ぶか予測がつかない。
 実社会でもまれて逞しくなった支社長は、貫祿が感じられたが、感性は以前と変わっていないようで安心だ。

 密度の濃い夕食時間を終え、支社長とは西船橋駅で別れて、わたしたちはホテルに戻る。乙男だけは早い就寝だったようだが、あとの二人は未明まで眠れなかったということだ。

 
 二日めの朝は、前夜の指示どおり8時きっかりに朝食に向かう。身支度をして一緒に駅まで出れば、いよいよ単独行動となる自由時間である。
 浪人は、美術館や博物館を巡りたい、という渋い計画を立てて来ていた。乙男には明確な予定はなく、こちらに移り住んでいる友達と落ち合って出たとこ勝負のようだ。そして問題の非文化少年は、まる一日秋葉原に身を沈めるつもりらしい。が、そこへの行き方がよく分からない。
「昨日見た黄緑色の電車が山手線やから、とにかくそれに乗れ。願わくば内回りに乗ってほしいけど、間違ってもいつかは秋葉原に着く」
 とわたしは指示したが結局、まず上野の美術館に向かう浪人が、秋葉原まで非文化少年を連行することに話がまとまる。

 そういう感じで始まった一日、19時までにホテルに帰還するよう言い含めたのだが、その結果はたいへんまるよしくらぶ的なものになった。

下 につづく

Chiritaitoru

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