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2010年4月12日 (月)

「ともだち讃歌」の皮肉

 童謡には不思議な歌詞がよくあって、例えば「かごめかごめ」の「夜明けの晩に」とか「うしろの正面」とかの意味不明の歌詞など興味深い。これはまあ、合田社長さんの領域である。

 しかし、こういう意図した不気味さとは別に、歌の趣旨と歌詞がいまひとつ合わないのがある。それが「ともだち讃歌」(訳詞・阪田寛夫)で、わたしはこれを小学校の時に習ったのだが、その当時から、漠然と疑問には思った。長じるにつれて、その疑問は明確になっていき、いまではつっこみの域に達した(笑)。

 この曲の趣旨は最初の一節で明らかである。

ひとりと ひとりが うでくめば
たちまち だれでも なかよしさ

 要するに、子どもはみんな分け隔てなく仲良くしようね、という歌である。それも地球規模であるから、まさに現代にも通用するテーマだ。

 「ともだち讃歌」は、アメリカ合衆国の民謡「The Battle Hymn of the Republic」(「リパブリック讃歌」)の訳歌である。「ともだち讃歌」を知らない人でも、この曲のテーマ部のメロディは必ず知っているはずで、サビもテーマ部をちょっとアレンジしただけのメロディなので、勢いで歌える。わが国でもCMソングなどによく使われているし、「ごんべさんの赤ちゃんが風邪ひいた…」とか「おたまじゃくしは蛙の子…」などの俗詞でも歌われているから、お馴染みのメロディのはずだ。

 元々の「リパブリック讃歌」は軍の行進曲として使われたらしいが、「ともだち讃歌」は平和と友愛を志向している。1〜3番に共通するサビ部の歌詞は、

そらには おひさま あしもとに ちきゅう
みんな みんな あつまれ みんなで うたえ

となっていて、地球的視点の友情の曲である。

 しかし、2番に入ると、早くも首を傾げたくなる。

ロビン・フットに トムソーヤ
みんな ぼくらの なかまだぞ
おひげを はやした おじさんも
むかしは こども

 誰でも仲間だ、という趣旨はいいのだが、三人の実例を挙げるなら、全員男性でなくてもいいではないか。一人称も「ぼくら」であるし、どうも女性が蔑ろにされているように思える。わたしは何も女権論者でもないし、形式的・表面的な男女平等などは軽蔑するほうである。しかし、現実に男の子と女の子は同じ数だけいるわけで、サンプルの抽出が偏っているのでは、と思わざるを得ない。
 小学生の頃にここまで考えていたわけではないが、なんで男の話ばかりなのか、とは何となく思っていた。

 3番に進むと、歌詞はさらに謎の密林に迷い込む。

せかいの ともだち あつまれば
なんにも おそれる ものはない
ゆくては アフリカ ポリネシア

待てーい! それは明らかに違うだろう。アフリカポリネシアに子どもはおらんのか。彼らは ともだち ではないのか。
 この点は、小学生の頃にして既におかしいと思っていた。先生に質問したような記憶もあるが、どういう答えだったかは覚えていない。

 さらに、3番の最後にサビの最後の行が何度も繰り返され、その後に「1・2」と行進のかけ声が合いの手として入る。それは各国語の数字で入ることになっている。

みんなで うたえ(イチ・ニ)
みんなで うたえ(ワン・ツー)
みんなで うたえ(アイン・ツバイ)
みんなで うたえ(ウノ・ドス)

西側諸国ばかりではないか。四カ国挙げるのなら、「アジン・ドバー」とか「イー・アル」とかを入れてほしかった。
 これはもちろん小学生の頃は思い至らなかった。高校生くらいになってからつっこみはじめた事項である。

 
 このように、あらゆる障壁を乗り越えた世界の融和を促す歌なのに、何とも差別的な歌詞になっているのが笑えるのだ。
 しかし、これは阪田寛夫氏を責めるのは酷というものだろう。いつごろの訳詞なのかは知らないが、歌詞の表現からして戦後十年から二十年くらいの間だと思う。その時代の「世界」観や「地球」観は、誰でもこんなものであったろう。わたしの子どもの頃だって、まだまだ西側先進国が世界の全て、という感覚は残っていた。子ども向け雑誌の「世界の○○」という類の特集に、ソ連や中国、ましてアフリカや東南アジアが登場することは稀であった。

 わたしの世代にとってはこの歌は懐かしく甘酸っぱい思い出の歌だ。これはこれとして、大切にとっておきたい。
 しかしながら、この歌詞が時代の限界とするならば、あまり現代の子どもには歌わせない方がいいのではないか、と思う。そして、現代に相応しい友愛の歌を新たに作ればよい。 

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