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2010年6月10日 (木)

再録・流行語対照(2)~ 〈形容詞二音節語幹止め〉

(1) (小テストのあった日の放課後に訪ねてきた学生が、もう採点が終わった、と聞いて) 早っ
(2) (寮生が初めて寮の自室のドアを開けて) 狭っ
(3) (コンビニで投げ売りの弁当の値段を見て) 安っ

などである。
 形容詞語幹止めは、もともとは緊急性があり、なおかつ反射的につい声がでてしまう、という類のあまり伝達機能をもたない独立語文として発話されていた。

(4) (手を机にぶつけて)痛っ
(5) (アイロンに手が触れて)熱っ

などである。表現の性格上、主に感覚的な形容詞に限られていたし、そうであれば二音節でなくても語幹止めは起こった(冷たっ・汚っ など)。

 ところが、近年の流行りはちょっと違う。(1)~(3)のように、まったく伝達の緊急性のない形容詞または場面であっても語幹止めになるのだ。そして、語幹が二音節の形容詞に限られる。従って、めでたっ・やかましっ・とんでもなっ などは聞かれない。
 形容詞は、事態に対する解釈や評価を表現する、極めて主観的な単語である。個人の感性や価値観が生で現れる。だから、
形容詞文を最後まで言い切ることは、自分をさらけ出すことでもある。しかしこういうことを近現代の日本人、特に若年層は嫌うのである。その解釈や評価が、そこにいる人たちに同意をもって迎えられるかどうか自信がなく、言い切りたくないのだ。そこで、もともと他人への伝達でなく、表出のみがその機能であった語幹止めの形態を借りるのである。この形態にすれば、周囲の人の同意を求めたんじゃないよ、あくまで自分の心の声だよ、というポーズがとれ、逃げ道になるからである。
 昔から、言い切りを避けるために
 悪~ぅ・固~ぁ など、語幹長音形とも言うべき表現が使われることはあった。これは二音節語幹に限らず、あったか~ぁ・もったいな~ぁ などもあり得る。形容詞による判断を完結させない表現という点では同じであるが、現代はこの長音さえまどろっこしく、スピードを追求するのであろう。二音節に限られるのも、このスピードの問題と考えられる。が、この後も流行が続けば、三音節以上の形容詞語幹に汎用されていく可能性もある。

(以上、平成16年記述)

 その後、予想どおり三音節以上の形容詞語幹にも拡がっている。短っ・うるさっ などが普通に聞かれるようになったし、難しい の俗簡略形 むずいむずっ になったりもする。さらに形容詞型活用の助動詞にも適用され、行きたっ なども現れている。 

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 桐島周 2016 勝木書店 定価1500円(税込)
 
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