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2010年8月28日 (土)

阿久・三木コンビ もう一つの「ひまわり」と「ワルツ」 

 サッコさんのファンをやっていると、ひまわりという花はひたすら明るさと元気のよさを示すイメージシンボルであるかのように考えてしまいがちである。
 しかし、ひまわりという花は決してそんな陽気だけをあらわすのではない。

 『週刊文春』の小林信彦氏の連載記事で紹介されていた、「ひまわりの円舞曲」という曲の話を読んで、その思いを新たにした。
 円舞曲 ワルツ と訓ませるので、まるでサッコさんの代表曲を二つ合体させたようなタイトルなのだが、内容は両曲と全く異なる。が、この曲は作詞が阿久悠先生、作曲が三木たかし先生、つまりサッコさんのヒット曲の多くを提供してくださった名コンビの手になる。
 これは興味をそそられるので、さっそくCDを取り寄せてみた。

 ひまわりが開放的にして勢いのある花であることは、疑いない。それは夏の太陽とイメージが重なるので、歌詞においては季語のごとく夏を思わせるアイテムとして使われる。そして、積極的でアグレッシブな感じを演出する。
 最近では遊助さんのヒット曲「ひまわり」(作詞・遊助)がその典型である。前川清さんの「ひまわり」(作詞・福山雅治)も同じ類であろう。
 

 ひまわりの花のみならず、まっすぐに上を目指す茎の伸び方にも着目した曲もある。さだまさしさんの「ひまわり」は、わたしの愛唱歌の一つだ。

鳥よあの人に 出会ったら伝えてよ
ひまわりの様に 私は生きていると
背すじを伸ばして 憧れだけをみつめ
一日を力の限り 明るく生きてる

 (「ひまわり」 作詞・さだまさし)

 自分の道をしっかり見すえた率直な生き方のシンボルとして使われているのである。これは、長渕剛さんの「ひまわり」(作詞・長渕剛)も同系統と思われる。

 
 しかし、ひまわりの明るさ・まっすぐさに、その裏にあるであろうペーソスを読み取る向きもある。
 ひまわりという花が美しいかどうかは、人によって感じ方が分かれる。あそこまで過剰にぎらついた前向きさに、ちょっと辟易してしまったり、そこに狂気を見いだすことさえできるのである。
 ドラマの主題歌としてヒットした山田晃士さんの「ひまわり」をみてみる。

ひまわりが揺れている
清らかに Oh
このまま眠らせてくれないか
ひまわりが揺れている
清らかに Oh
何も奪わずに抱いてくれ

(「ひまわり」 作詞・ 山田晃士)

 あの暑苦しいひまわりがなぜ 清らか なのか、というのは歌詞全篇を見ていただかないと分からないのだが、この曲は、ひまわりが現実や常識・世俗から跳躍する媒介として使われているのである。
 そういう跳躍は、うまくいけば昇華によって特段に高いステージに上がることもできるのだが、ひとつ間違えば狂奔になりかねない。翳のない生き方は同時に深みもなく危ういものであるが、ひまわりの日なただけを志向する性質とまっ黄色の花びらは、そのような精神のねじれと病みを象徴し得る。

 
 さて、問題の「ひまわりの円舞曲」(唄・菅原洋一)である。

約束の日が来ても
帰らないひとを
ただひとり想うには
ここで夢を見る

こんな夏だった
暑い午後だった
ひまわりは泣かない
別れのワルツを躍っても
ラララ…… ここで夢を見る

(「ひまわりの円舞曲」 作詞・阿久悠)

 この曲を小林氏は、終戦の日をモチーフにしたものではないか、と解釈する。そう言われるとそれに合っているような詞である。あのやりきれない戦争が終わった当日、大きな脱力ととまどいをもって見上げる明るすぎる真夏の太陽と、それを象徴するひまわりは、まさに狂気であったろう。
 ただ曲を聴いてみると、菅原さんのものだけに、ちょっとシャンソン風の歌詞の詰め方になっていて、メロディの最初と最後だけはかすかに「乙女のワルツ」の面影を感じるものの、全く別物である。日本の終戦を感じさせる要素はない。
 歌詞の着想の段階で、終戦の日に関する心象は過ったかもしれないが、この曲自体がそれをモチーフにしているとは、わたしには思えなかった。小林氏の世代がそう聴かせるのではないだろうか。
 むしろ、相手と別れた日にひまわりが咲いていた、ということではないかと思う。そして、それを思い起こしている今もまた真夏なのだ。別れの慟哭や大切な人を失った諦観と対照される、不必要なまでに明るいひまわりの、逆説的な哀しさに対するニヒリズムが歌われている。

 こういうのは大人の愛のひまわりと言えるのかもしれない。サッコファンにも一聴をお勧めする。
 なお、「ひまわり娘」は作詞は阿久先生だが、作曲は三木先生ではなくシュキ=レヴィさんである。念のため。 

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