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2011年1月20日 (木)

看板つっこみ(28)~ 主語の不一致

 小ネタにしてもいい程度の、軽い違和感なのだが、意外に文法上の深い問題を示唆しているのではないか、と思って、写真に撮ってみた。
 どこにでもありそうな、駐輪などを禁じる立て看板である。赤字の部分にほんの少しひっかかりを覚える。

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放置すると撤去することがあります。

 という文言、何が変なのかな、と考えてみると、やはりこんな短い文で読点も挟んでいないのに、放置する 撤去する という二つの動詞の主語が換わっている、という点である。
 言うまでもなく、放置する の主語は看板を見る一般住民であり、撤去する の主語は看板の書き手である警察署または土木事務所だろう。
 このように断りなく主語が換わるのは、古文ではよくあることだし、現代の会話でもままあるだろう。

ケータイを落としたなんて呆れた。

別れるって言うんなら死ぬわ。
   

 という具合である。文脈で分かるなら換わった主語を省略しても、どうにか通じるものである。それでも、上の文は、場合によっては、自己批判の言葉かもしれないし、下の文は、あなたを呪い殺してやる、という宣言かもしれない。
 普通は、特に主語が示されない場合、前の文ないし節、または文の中の主たる節の主語が適用される、と考えるのが普通だろう。
 ここらになると、文の接続とか主節と従属節の関係とかの問題が複雑に絡むので、深入りは避けるが、やはり書きことば、それも官公庁が掲出する公式の看板なら、きちんと書くほうがよいだろう。

 このほか、止めないでください 停めないで ではなくこの字を使っているのは、常用漢字音訓表に従ったのだろうが、なにか別の解釈もいろいろできて可笑しい(止める とめる とも やめる とも読めるのだ)、とか、駐車放置 とは微妙に意味が異なるのでは、とか、細かいつっこみどころもあるのだが、まあこのくらいにしよう。

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 桐島周 2016 勝木書店 定価1500円(税込)
 
ISBN: 978-4-906485-09-3 
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