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2011年1月30日 (日)

新流行語対照(9)~ 「~(時点)ぶり」

 では、流行語対照の新作を公開する。いくつ続くかはまだ分からない。回数は旧シリーズからの追番である。 

 出世魚の名前でも可愛いこぶるアイドルでもチーズでもない ~ぶり の使い方が、このごろおかしい。 そう、「前に同じことがあった時からの期間」を表す ~ぶり のことである。

(1) 東京では、二十三日ぶりに最高気温が30度を下回りました。(テレビの天気予報)

 といった用法で、これは正しい。この 二十三日 は、当然日付ではなく期間のことである。が、そうでない用法が頻繁に聞かれるようになった。 

(2) 昨年ぶりにブログを更新しました。

 という類である。「前に同じことがあったときからの期間」ではなく、「前に同じことがあった時点」に意味が変質している。これが、ここ二三年非常に増えてきた。最初は、アホな誤用をしてるな、と思って、むずかゆく感じながらも笑っていたが、笑いごとでは済まないほどに増えているのである。
 ところが、(2)を規範的な表現にすると…、と書きかけて、なかなか迷った。強いて書けば(3)か(4)になるだろう。

(3) ブログを更新しました。昨年以来です。
(4) 昨年以来○カ月ぶりにブログを更新しました。

 そう。以来 が正しい語句ということになるのだが、以来 を使って(2)を簡潔な一文として表すのは、なかなか難しいのである。ぶり だと、格助詞 を介してわりあいスムーズに連用修飾できるのだが、以来 になると、後ろにつながりにくい。以来 自身が漢語であることから、文全体がちょっと固い感じになってしまうこともあり、(2)のような気やすさがでない。
 どうも、このあたりにこの ぶり の蔓延の原因がありそうである。では、以来 の柔らかい用法はないのか、というと、(5)があった。

(5) みなさーん、夢でお会いして以来ですねー。(お笑い芸人オードリーのツカミから)

 (5)の 以来 は、ぶり に置換え不能である。こういう「前に同じことがあった時点」が動詞文的になっている構文であれば、以来 も抵抗なく使われることが分かる。これを ぶり を用いて言い換えると、(6)になる。

(6) みなさーん、夢でお会いした時ぶりですねー。

 やはりちょっと不自然である。ぶり は時点を固定してやらないと使えないわけで、これが みなさーん と喧嘩する。ぶり の方が 以来 よりもより時点を特定するニュアンスが強いのかもしれない。

 なるほど、ぶり以来 とはうまいこと使い分けができているのだな、と感心してしまったが、これはその対照だけをみればうまくいっているだけであって、ぶり に二とおりの紛らわしい意味が共存してしまうという問題は未解決なので、やはり容認はしにくい。
 一日ぶり であれば、ついたちぶり と読むか いちにちぶり と読むかでどちらの意味かが判別できるが、二日ぶり になるともうだめである。

 わたしの懸念をよそに、ぶり の新(誤)用法は増殖しつづけている。

(7) どうも。こないだぶりです。(くらぶ生のわたしへの挨拶)

 というのが初めて面と向かって言われた文例であった。これなどは、お久しぶりです 暫くぶりです という挨拶のバリエーションという感覚なのかもしれない。
 そして、ついにテレビの天気予報でも、

(8) 東京で雨が降るのはいつぶりかと言いますと、… (Fテレビ朝のワイドショーでのA予報士の発言)

が聞かれた。
 今後も微妙に二つの ぶり が併存していくのであろうか。

  その後の展開・補足記事 

※ このカテゴリーの記事のように、まるよしの楽しい日本語の話を満載した本、ぜひお手に取ってお読みくださいね。

 『まるごと とれたて 日本語談義 -ラジオ番組『高専ライブ』で語ることばの話-』
 桐島周 2016 勝木書店 定価1500円(税込)
 
ISBN: 978-4-906485-09-3 
 (桐島周は、まるよしのペンネームです)

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 Amazon・楽天などでは購入できません。

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コメント

初めてコメントさせていただきます。非常に興味深い内容でした。
実はこの「ぶり」の新種?についてコラムを書こうと情報を探していて、「まるよし講読」様のブログに行き着いた次第です。
もしよろしければ、もう少し詳しくお話をうかがえないかと思うのですがいかがでしょうか。私のアドレスあてにご連絡をいただければ、こちらの立場、コラムの趣旨などについて説明させていただきます。
未知の読者の突然のコメントで戸惑われていることかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

投稿: ひろきち | 2011年2月20日 (日) 17時21分

 ひろきちさん、いらっしゃいませ。

 メールにてご連絡さしあげました。

投稿: まるよし | 2011年2月24日 (木) 06時37分

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